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第3話

魔王に会いに行くというのでその場から立ち上がると


『ソウ、こっち来て』

「どうした?」

『良いから来る』


リズハに手を引かれ部屋の奥に連れられる。すると何も無い壁に扉が現れ、リズハはそのまま開けた。中には沢山の衣類があり、どうやらクローゼットのようだ。


『お父様に会いに行く前にソウをお着替えさせる。綺麗な服着せる』

「え、でも」


このクローゼット、女物しかない。リズハの部屋だから当然なんだろうが。これを着せられるのか?


『ふんふふっふふーん』


リズハは鼻歌混じりに服を選んでいる。その手には案の定ピンクのドレスやオレンジのドレスがある。リズハの服装は全体的に黒の胸元パッカーンのドレスでいかにも魔族なのに、こんなドレスも着るのかと関心。


『これがいい』


リズハの手には黒のタキシード。さっきのドレスはというと、リズハが青いドレスを着ていた。

なんだ普通に男物もあるのか。


『ソウ、自分で着替える?私が着させてあげようか?』

「あ、自分で着替──」

『私が着させてあげようか?』

「自分で着替──」

『わ・た・しが着替えさせてあげようか?』


俺が拒否しようとするとリズハが目を輝かせながら半強制的に聞いてくる。これ、着替えさせろって遠回しに言ってるだけだろ。


「リズハ様に着替えさせて欲しいです」

『うん!!しょうがない。特別に私が着替えさせてあげる』


くっそー。なんの羞恥プレイだよ。女の子に着替えさせられるって。見た目は14~5才の女の子だぜ?犯罪だろ。

でも今はファストフード店の制服でこれはあんまり汚したくないんだよな。現世に帰った時に弁償させられそう。


『ソウ、バンザイ』

「へい」


リズハに言われるままに脱がされる。すると


『はいソウ、足上げて』

「待て待て待て」

『何?』


リズハがパンツまで脱がそうとする。流石にこれは違うだろ。タキシードなんだから全裸になってどうすんだよ。


「流石にパンツは...」

『ペットは私の命令には従う』

「いや、でもぉ。パンツ脱いでもタキシードを着るなら意味がないのでは?」

『...。確かにそう。パンツ脱いでもまた履くだけ。意味、無い』

「ですよねぇ」


なんとかなった。パンツ脱がされたら大変だろ。


『次はシャツ着せる。手、広げて』


そこからはリズハがテキパキとタキシードを着せてくれる。結構慣れているな。


「リズハ様は結構着替えさせるの上手ですね」

『私、小さい頃、よくお父様の着替え手伝ってた。侍女が着替えさせた方が早いけど、お父様は私と遊べない代わりにそんな些細な事には付き合ってくれた』

「魔王さんっていい人なんだね」

『お父様は人じゃ無い。けど、うん。いい人』


リズハはニッコリと笑ってそう言った。手止まっているが、既に着替え終わっている。


『ソウ、お父様に挨拶に行くよ』

「優しい魔王か。楽しみだな」

『きっと気に入る。お父様は優しい』


リズハに手を引かれクローゼットを出た。クローゼットを出ると扉が消えた。


『ソウ、首輪付ける?』

「出来ればお断りします」

『分かった。首輪は苦しそう。ソウには痛くしないって約束したから、私は守る』


リズハはそう言って、俺の手を掴んでない方の左手を広げた。その手が淡く光り、そこに二つの赤いリングが現れた。


『このリングなら痛くない。これを腕にはめて』

「これは?」

『これは契約に使う腕輪。私が主人でソウがペットとして契約してる。でも命令に強制力は無いから安心して。ただ形式上ペットってだけ』

「へい」


リズハに言われる通りにリングをはめた。別に痛くもないし、不快でもない。契約ってそんなものなのだろうか。


『ふふふ。見てお揃い』

「同じリングですね」

『そう。同じ。ふふふ』


リズハはずっとニコニコしていた。


「あの、挨拶」

『あ、忘れてた。ありがとうソウ。ご褒美』


リズハは褒美と言って俺の頭に手を置いた。


『よしよし』


俺の頭を撫でた。なんだ、落ち着くな。


『今度こそ行こう』


そう言ってリズハは俺の手を引き、クローゼットとは逆の方へ行く。また何も無い壁に扉が現れた。そのまま部屋を出た。


「フォルムポルヘイヤーリズハトトラシ」


部屋を出ると黒髪の女性が意味不明な言葉をリズハにかけていた。俺はその女性をみて驚いた。薄々分かっていたけど、その女性メイド服を着ていた。白と黒のtheメイド服だった。その女性の肌は白くて凄く美人だった。女性らしい体つきも色気がある。でもその女性は黒く細い尻尾があった。頭には悪魔の様な薄桃色の角が。


「サルクヘイヤーフロクトトラシ」


そのメイドの言葉にリズハも意味不明な言葉で返す。


「ガル・ゼファートトラシリドルヘイヤー」


メイドは納得したように、頭を下げた。全然言葉が分からなかったがな。


『あの女はリサヘラ』

「え?あ、そうですか」


急にリズハが話しかけてきたのでびっくりした。


『私のお世話係』

「侍女でしょ」

『でもリサヘラは厳しい。どっちが上か分からない』

「ははは」


確かに堅そうな人だったからな。リズハも気苦労が多そうだ。


「ところでなんで、俺は何も言われなかったんです?」

『うん?リリガル語が人間に分かるの?』

「あ、その言語リリガル語って言うんですか。いえその言語は分かりませんが、リサヘラさんに話しかけられなかったものですから。何かあったのかと」

『そういう事なら大丈夫。お父様にペットが欲しいってお願いしてから貰ったペットがソウだから。お父様の部下のリサヘラは口出し出来ない』


リズハの気まぐれでペットにされた俺はだいじょばないが害意が無いなら良いだろう。


『ちなみにソウが聞いて来ないから言うけど、ソウはリリガル語が話せないのに私の言葉を理解できるのは私が『思念疎通』っていう魔法を使ってるの』

「やっぱり脳内に直接」

『多分そう』


リズハは俺の程度の低いボケにも対応してくれる。テキトーだけど。


『ソウ、着いた。お父様の部屋』

「ここが魔王の巣」

『その言い方なんか嫌』

「ごめんなさい」


俺の悪口をリズハに注意されながらも、リズハが門を叩く。そう、魔王の部屋は扉だけでも馬鹿でかい。縦は20~30mはありそうな程でかく、もはや門なのだ。門の周りは沢山の松明やシャンデリアが明るくしている。


「フロクトトラシバルサイヤーサタナナソウ」


リズハがまた意味不明な言葉、リリガル語を言うとゴゴゴゴと音をたてて重たい門が開かれる。


『入室許可が出た。入るよソウ』

「へい」


中に入ると再び門が閉まりだす。中には長い通路があり、しばらく歩くと明るくなった。


『よく来たな。人間、ソウよ』


リズハとは違う野太い声が脳内に響く。そこには全身に黒い瘴気を漂わせ、赤黒いマントを羽織り上半身は簡素な黒い布で巻き、その間からゴツイ筋肉が見える。下半身は真っ赤なズボンを履き、筋肉で膨れ上がっている。手には沢山の宝石を付けている。顔は真っ赤に燃えるような瞳と口から飛び出た牙、頭には日本の太い角が生えており片方は折れている。かなりデカイ見たまま正しく魔王だ。ただ、その魔王ゼファーは玉座に座っておらず、机と椅子があって書斎の様だった。


『今は仕事中でな、魔王っぽくなくてすまん』


魔王ゼファーは舌を出して手を顔の前で合わせて謝る。可愛くねぇよ。

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