第2話
「な、何をする!!」
俺は怒鳴った。何者かに電撃のようなものを喰らわされた。
『起きてくれないお前が悪い。リズハ悪くない』
怒った俺に語りかけてくる謎の声。僕はアイマスクの様なもので視界を遮られている。別に手足は縛られていない。脳内に響くような声。これが(こいつ脳内の直接!!)というやつか?でも声だけ聞くと可愛いな。まぁ、言えるのは常識的な事が起こっているわけではないようだな。
「えっと、リズハ...さん?ここはどこですかね?俺バイト中だったんですけど?」
バイト中に急に抜け出して戻ったら怒られるかな?てか何が起きたんだ?
『様を付ける!!』
「は?」
『リズハ様と呼ぶ』
「リズハ...様」
「何?人間」
コイツ、舐めてやがる。声だけ聞くとガキなくせに、俺を舐めやがって。なんか馬鹿らしいな。でもさっきの電撃がこいつの仕業だとすると下手に動けば危険かもしれない。それにさっきからずっとアイマスクを取ろうとしてるのに全然外れない。なんだこれ?
「この目に付いてるやつ、取れないんですけど?」
『それは取っちゃダメ』
「何ででしょう?」
『それを無理に外そうとすると目が潰れちゃう』
「はい!?」
俺は驚く。なんのマネだ?ていうかそんな事有り得ねぇだろ。でも試してみるほどの勇気は無い。
「あのう、リズハ様?どうしたら外れますか?」
『うん。それが本題』
俺は外し方を聞いた。
『その目隠しは魔法アイテムで対象者に付けさせて使用者の魔力次第で一方的に契約を結ぶ』
「待て待て」
「何?」
当たり前のように進めてるが
「魔法アイテム?魔力?それってマンガやゲームやラノベの?」
『何の事か分からないから進める』
薄々感ずいていたが、うん。どうやらここは異世界なのだな。今更驚かねえわ。なんだかまずい事態になっているみたいだがな。
『そしてその契約に応じて体の動きが制限される。お前の場合は視力だけ。勿論抵抗すれば殺す』
俺は緊張で唾を飲み込む。でも視力制限しても抵抗したら殺されるなら無意味じゃね?と思いつつも話を聞く。
『その契約内容は私のペットになる事』
「は?」
つい腑抜けた声が出る。ペット?洗脳したり奴隷にしたりではなく?どこのラノベだよ。異世界だけど。
『拒否権は無い』
「...リズハ様」
『何?ダメなの?』
俺がある事を聞こうとするとリズハが心配そうな声で聞いてきた。
「えっと、そうじゃ無くて。なんて言うか、人権とかありますかね?」
『じんけん?分からないけど痛いことはしない』
「強制労働とかは?」
『キツイ事もさせない。ペットだから』
「飯とかは?」
『人間が食べる者をお父様に用意してもらう。病気になったら大変だから』
「トイレは?」
『人間用のトイレをお父様に作って貰う。1人で出来ないなら手伝う』
うん。どうやら本当にペットだね。
「手伝っていただかなくても結構です。所でリズハ様のお父様って」
『魔王ガル・ゼファー』
「魔王!?」
マジか。魔王だと。魔王、だと。これ大丈夫なのか?殺されないんだよな?
『大丈夫。お父様は私の物には手を出さない』
「つまり、リズハ様のペットにならないと死あるのみなんですね」
『うん』
これはもうペットになるしか無いな。
「分かりました。ペットになります」
『本当?本当に、本当?』
「ええ。どうか優しくしてください」
『分かってる。絶対にイジメたりしない。待ってて今目隠し外す』
リズハは嬉しそうにそう言うと、僕の顔がリズハと思われる者に触られる。そして無事に外されてパァっと明るい景色が広がりはしないが、決して暗くはない。部屋はランタンやシャンデリアで明るくされていて、窓はステンドグラス。凄く広い部屋の中にポツンと正しく魔王の娘といった感じの美少女と俺が座っていた。背中まであるピンクの髪に、紅い目、リンゴサイズの胸に、低めの身長。
『よろしく、ええっと』
「蒼太です」
『変な名前。ソウでいい』
「安直じゃ無いっすか?」
『難しい言葉は分からない。ペットは反抗しない』
「へいへい」
『分かればいい。へへ』
リズハは嬉しそうに胸を張る。しかし命の危険があったとはいえ、なんでペットなんてなったんだとろう。
「俺は何をすればいいんでしょう?」
『ペットは私と一緒に遊んだり、私と一緒にご飯を食べたり、私と一緒に寝たりする』
「そんな事でいいんすか?」
『そんな事がいい。私全部1人でしてたから寂しかった。だからソウと一緒に暮らしたい』
「へいへい」
なんじゃこの娘。超可愛ええ。口下手だけど素直でいい娘。
『ソウ?お父様に挨拶へ行くよ』
「魔王様に?」
『そう。行くよソウ』
なんか怖いな。魔王か。どんな人なんだろう。