光の都へ1
しかし、まさかこいつと肩を並べて車に乗る日が来ようとは。
「お前、車よりも速く移動出来るんじゃなかったのかよ」
後部座席で車に揺られながら、オレは隣の男へと話しかける。
「ふっ、そうだとしても、オレはこの世界の地図など知らないし、どこに向かっているのかも知らない。こうして行くのは当然だろう?」
オレの声も奴の声も、さほど大きな声ではない。
前方で、運転席のクシイと助手席のエンが話しているのを邪魔しない様に配慮されたものだ。
「はんっ、お前が素直に従うとは思わなかったぜ」
「オレは貴様と違って、無暗に周りに敵意を振りまきはしない。少なくとも、今のオレにはこの世界の情報が必要だ」
奴の言葉からは何の感情も感じられない。オレをバカにしているのではなく、ただ事実を述べているのみと言いたげだ。
だからこそ頭にくる。こいつはいつもオレよりも上にいるかの様な――
「気に入らないな」
オレはそう口にしていた。
すると、今度は奴の顔に変化が表れる。口元がわずかに吊り上げられ、笑っているかの様な。
だが、そんな事で頭に血を上らせていたら、また同じ事の繰り返しだ。
一度話を切られた事で、冷静に考える時間も出来たのだ。今、オレが奴と話すべき事は――
「お前は、オレを追ってここに来たと言っていたな?」
「そうだ」
「ということは、お前にはあの装置の扱い方が分かったのか?」
でなければ、オレと同じこの場所に来られるはずがない。
「結論から言えば、分かってはいない」
「結論? 分からなかったのなら、同じ場所に出たってのは偶然だ、とでも言うのか?」
「偶然ではないな」
わざと焦らしているのか、奴はオレの質問にそのまま答えただけでそれ以上の事は口にしない。
「じゃあどうやってここに来たってんだ? 何か方法があったと言うのか?」
「貴様のアルドを追ってきた。オレに出来たのはそれだけだ」
「アルドを追ってきた?」
「そうだ。血の繋がりがある者には、アルドの繋がりもあるのだ。だから、貴様のアルドの痕跡をリシェルが追う事で、同じ場所へ転移出来たのだ」
「リシェルというのはスズの事か?」
先程もその呼び名を聞いていたが、一応確認のために問いかける。
「ああ、そうだったな。リシェルというのはガルデルムという名と同じ様に、我々の組織でのコードネームだ」
スズはもう自分達の仲間だとでも言う様なその説明に、思わず言い返しそうになる気持ちを抑える。今は、その事は後回しだ。
「そうか…という事は、スズが共に来たのはオレの跡を追うため、という事か」
オレを追うためにはスズが必要だった。だが、そこまでしてオレを追ってきた理由は何だ?
奴は何のつもりでここに……。
「どうした、質問はこれで終わりか?」
ガルデルムはオレの心の中を見透かしているかの様なタイミングでそう口にする。
「いや、まだ聞きたい事はある」
こいつに腹の探り合いなど通用しないだろう。いくなら直接。
「何故そこまでしてオレを追ってきた? 元々オレに協力したのは前文明の遺産を見てみたいという事だったが…自分で使ってみたかったのか? 戻れるかどうかも分からずに?」
と、オレの言葉に奴は暫く黙り込む。
いい加減何か言ったらどうだと口を開きかけた時、ガルデルムは口を開く。
「貴様はオレを買い被りすぎている様だな」
「何?」
予想外の言葉にオレは眉をひそめる。
「アルドの存在を知った今の貴様になら分かるだろう。我々が特別な存在ではないという事を」
「アルドを使える者が特別ではないという事か? でも、それはこの世界では普通の事だというだけで、オレ達の世界では――」
「違う」
ガルデルムは強い口調でオレの言葉を妨げる。
「オレ達も、アルドとその能力についてはっきりと知っているのではない、という事だ。現に、貴様のその腕の力は全く把握出来ていない」
「だから何だ?」
いい加減、遠回しな言い方を止めてさっさと言えってんだ。
「つまりだ。オレとリシェルがここに来たのも事故だという事だ」
「な、に?」
事故だって? だが、さっきはスズにオレのアルドを辿らせたと言っていたではないか。
言葉にならないオレの訴えを感じたのか、
「アルドを追って来たのは本当だよ」
と、ガルデルムは話し出す。
「だが、元々は貴様がどうなったのかを調べるためにリシェルに協力してもらっただけで、後を追おうなどとは考えていなかった。追うとしても、戻ってくる方法をまずはっきりさせておかなければならないだろう?」
「要するに、オレがどうなっているのか調べている内に、二人とも飛ばされちまったって事か」




