再会3
「とにかく外に出よう。シータの仲間が外にはいるはずだから」
エンがそう言って立ち上がる。
だが、シータの方はどうやら自分で立つ事も出来ない様だ。体を動かそうとしているのだが、上半身を起こすのがやっとでそれ以上は出来ないでいる。
オレはふうーっと大きく息を吐くと、
「お前、まだ動けねえんだろ? オレの背中に乗りな」
何か言ったようだが、お構い無しでシータを背中に担ぎ上げる。
見た目通りの軽い体はあっさりと背中に乗り、後はエンと並んで出口へ向かうだけだ。
「そういや、まだ名前を言ってなかったな。オレはカズヤ」
本当に別人なのか、確認するという意味での再びの自己紹介。
「えと、シータです」
返ってきたのは普通の反応。
「ほんとに違うんだな」
呆れてしまう。こいつには、ホントに今自己紹介した事になっている。
「まあまあ、良いじゃないか。シータも困ってるよ」
エンがアームをポンッと叩く。
「僕としては、そのアームってやつの方が驚きだったけどね」
アームか。オレもこいつにはずっと驚かされっぱなしなんだがな。
「ガラガラガラッ」
重い音を立てながらエンによって開けられる扉。
すると、何故かエンは扉を開けた姿のままで、動きを止めていた。
「ミズホ?」
そう呟いたエンの視線の先を追う。
そこには三つ並んだ人影があった。その中の一つは、忘れようにも忘れられない長身の男。
「ガル…デルム?」
思わずそう口にしていた。
だが、その横へと視線を動かすと、オレはそこから目が離せなくなってしまった。
「それに、その隣にいるのはもしかして――!」
オレは飛び出していた。
それ以外のものなど全く目に入らない。一直線に彼女へと駆け寄り、
「スズ!」
その名を叫んだ。
見間違えるはずがない。確かに離れたのは幼い頃。成長期を過ぎ、その姿は幼い子供のものから成熟した女性の姿へと変わっている。
それでも、記憶の底にある幼い面影はそのままで、母親を思い出させる顔立ち。絶対に間違いはない。
「お兄…ちゃん?」
抱きしめた腕の中から囁く様に声が聞こえてくる。
「ああ、そうだ」
オレは力強く頷き、答える。
「お兄ちゃん、お兄ちゃーん!」
腕の中の少女はそう大きく声に出し、ぐすぐすと泣き出す。
それを見て思い出す。幼い頃の泣き虫な妹の姿を。いつも兄のオレの後ろを付いて回っていた姿を。
「あの~、感動の再会中に邪魔して悪いんだけど――」
と、背後から申し訳なさそうにエンが声をかけてくる。
「そのままだとシータが辛そうなんだけど…というか、カズヤも首辛くない?」
はっと我に返る。
周囲の事などすっかり見えなくなっていて、背中に背負っていたシータの事すら忘れていた。
シータはオレの首に回した手で何とか落ちない様にしがみついていて、言われてみれば確かに首が苦しい。
「す、すまなかった! すっかり忘れていたというか何というか…」
オレはすぐにしゃがみ込んで、背中のシータを隣に来たエンの腕へと渡す。
そうすると、エンはシータを支えながら、ゆっくりと地面へと座らせる。
「すみません、あの、私…驚いてしまって、首を――」
「いや、首は全然大丈夫だし、悪いのは元々オレの方だ。すまん」
シータに謝られ、尚更ばつが悪く感じ、頭を下げる。
「くくくっ、まさかお前のそんな姿が見られるとは思わなかったぞ」
と、返ってきたのは別方向からの笑い。
オレはとっさにスズを後ろに庇うと、声の方を向き構える。
「ガルデルム! 何故貴様がここに!」
「何故? そんな問いの答えなど一つしかないだろう?」
「あの装置に飛ばされて来たって事か? では、何故スズも一緒にいる!?」
「やれやれ、この世界に来てもお前は相変わらずだな、カズヤ」
首を振りながら、呆れた様にガルデルムはそう口にする。
その態度がかんに障り、奴へとつかみかかろうとすると服がぐいっと後ろへと引っ張られる。
「お兄ちゃん、落ち着いて。デールは何も悪くないよ」
振り返ると上着の裾を引っ張るスズの姿が目に入る。
「どうしてこいつを庇うんだスズ? こいつはお前をさらって、オレや父さん母さんから引き離したんだぞ!」
「それは…。確かにそうだけど…デールは悪くないよ! 私が特別だったから、それで――」
「特別? スズ、こいつが何を吹き込んだのか知らないがそんな――」
「吹き込んだ、とは心外だな。オレは事実を伝えたまでだ」
オレの言葉を遮り、ガルデルムが口を挟んでくる。
「本当だよ、お兄ちゃん。私あのままお兄ちゃん達と暮らしていたら、みんなを傷つける事になってたんだよ」
「みんなを傷つける? どうしてそんな…スズの能力とかいうやつに関係があるのか?」
その質問はスズにではなくガルデルムへと向けたものだ。




