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タイムシェイパーFOLS  作者: 時野 京里
第四楽章 α
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再会1


「何だ? まだ何かあるのか?」

 窓の外には特に何も見当たらない。ズスフィールドに遮られたくすんだ空間が見えるだけだ。

「窓の外よ」

 ベータの答えはそれだけだった。

 だから何もないだろうが、と口を開くよりも先にエンが叫ぶ。

「ズスフィールドが消えていないって事か!」

「パーーーーーーン!」

 エンの叫びに被さって大きな音が起こる。ガラスが砕ける様なそんな音だ。

 とっさに音のした方へと振り向くと、砕け散った氷塊がばらばらと床へと落ちていくのが目に入る。

「あいつ、生きていたのか――!」

 エンが信じられないといった表情でそう言葉を漏らす。

 それによって、空中に一つの人影が浮いている事に気が付く。

 どうやらエンは、オレと同じ様に敵を氷漬けにした様だ。スティルシー・ステップスが使える事からも予想はしていたが、やはり氷の能力もエンに由来しているらしい。

 けれども、その本家本元が詰めを誤るとはな。

「あいつ、ARUTOの中でも別格の強さだわ」

 ベータもエンと同様の表情。否、今までARUTOと戦ってきている分、ベータの方が奴の異常さを実感している様だ。

 オレ達は立ち上がって身構える。

 影はゆっくりと、徐々に高度を下げていく。

 氷の破片が降り注ぐ音も消え、しんとした中、影は床へと足を付けた。

「まさか、まさか…私を…ここまで…とは」

 途切れ途切れに聞こえてくる声は小さく、オレ達に向かって言っているというよりは、自分自身に向けて言っている様だ。

 細かな氷の粒のもやが晴れ、相手の姿が徐々にはっきりと見えてくる。

「エン、どんな技を使ったんだ?」

 正面の影から目は逸らさず、横のエンへと問いかける。

「絶対零度の氷の中にフェンリルを閉じこめたはず、なんだけどね」

 フェンリルというのが奴の名なのか? どこかで聞いた事のある様な名だが、今はどうでも良い。

 エンが使ったのはフリージング・プリズンに間違いないだろう。そしておそらく、初めての実戦だったため、奴を氷に閉じこめたところで気が抜けてしまい、とどめを刺し忘れた、というところか。

 加えて運悪く、奴はガルと違って「例外」であったと。

「次からは、氷漬けにした後のとどめを忘れるなよ」

 エンへとそう注意し、オレは一歩前へと踏み出す。


――戦闘プログラム発動、パターンε、始動――


 オレの戦意に反応するのか、声が頭の中に響き、同時に先程のアルドが体中を巡る感覚が戻ってくる。

「カズヤ、あんたはまだ戦えるようね」

「当たり前だ。傷さえ治してくれりゃあいくらでも  」

 ベータの言葉に応えるが、

「違うわよ。あんたバカ?」

 と、苛立たしげにベータはそれを遮る。

「バカって、てめえ――」

「傷なんて問題にしてないわよ。私はアルドの話をしているの! 全く、本当に何も知らないのね」

 呆れた様子で、「はぁー」と大きく溜め息を付くベータ。

 こいつは本当に、オレを苛立たせる事しか出来ないのか?

「傷は能力を使えばすぐに治せるわ。でも、消費したアルドを回復させるには、時間が経つのを待つしかないのよ。さっきの能力で回復させる事は出来るけど、ズスフィールドで空間を遮断されているんだからそれにも限界がある。分かった? あんたさっきまでアルド不足でろくに動けなかったでしょうが」

 と、ベータは丁寧に説明をしてくれる。

 始めからそう言ってくれてりゃあオレだって理解出来たのに…これも世界が違う事からくる常識の違いってやつか?

「そういう事か。ああ、オレの方はまだ戦うのにアルドは不足してないみたいだぜ」

「みたいって、そんな他人事みたいに」

 ははは、と笑いながらエンが言葉を返す。

「僕の方は、ちょっと使いすぎた、かな」

「大丈夫、奴も弱ってるはずよ。三人で力を合わせれば楽勝よ」

 そんなやり取りを三人でしていると、

「ハハハハハハハハハ」

 狂った様な笑い声が体育館に響き渡る。

「どうした? 気でも触れたか?」

 オレは前方の男へとそう投げかける。

「どうやら今回は私の負けらしい」

 と、意外にも奴の口からは敗北宣言が放たれた。

 すかさずベータが口を開く。

「あら、見かけによらず、あきらめは早いのね」

「今、ズスフィールドに綻びを感じました。数秒で完全にズスフィールドは消え去るでしょう。そうなれば、大量のアルドを失う私にあなた達と戦う術はもう無いでしょう?」

「何?」

 オレ達は窓外へとそろって顔を向ける。

 すると、ズスフィールドによりくすんだ空に、幾つもの白い線が伸びていく。

 一瞬、それが何なのか分からなかった。そして、それがズスフィールドに走るひびだと気付いた頃には、ズスフィールドはばらばらと崩れ落ち始めていた。

「あらら、外側からズスフィールドを壊すなんて、一体誰が来たのかしら」

 そう言ったのはベータ。その声に被さる様にして、

「うぐうっ!」

 フェンリルの苦鳴が聞こえてくる。

 そちらへ視線を戻すと、さっきまで立っていたその男は床へと膝をつき、苦しそうにしてしゃがみ込んでいた。

 これが奴自身が言っていた、大量のアルドを失った結果という事か。

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