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タイムシェイパーFOLS  作者: 時野 京里
第四楽章 α
92/113

隠れた演目3

「それじゃあ、今度はこっちから行かせてもうらうぜ!」

 そう言って、ガルが動く。

 一直線にオレに向かって来たと思ったら、寸前で反転しつつ能力を発動させる。

 真っ赤な火球が上と左右とで三つまとめて迫って来る。

 オレは、前方に氷の壁を形成しつつ後退する。反応は先程よりも早かったので、壁は全ての火球を受け止めきる。

 火球と共に爆散した氷の破片を新たな二枚目の氷の壁で防ぎつつ、オレは左前方から迫るガルの鉄針の斬撃を身体をひねってかわす。

 相変わらずかぎ爪の様にして持たれた三本の鉄針は、両の手に握られていて、続け様にもう片方の手の斬撃が来る。

 今度のかぎ爪は、それまでの間に形成した左手の氷の剣によって弾き飛ばす。

 ガルの連撃が続く。

 避ける、弾く、避ける、避ける、弾く、避ける、弾く、弾く――――

 止まらぬ猛攻に、オレは教室の壁際まで追い込まれる。そして、次の斬撃が来て、

「んってやっ!」

 掛け声を共に壁を蹴り、ガルの真上を飛び越えて反転。ガルの背中目掛けて氷の剣を振り下ろす。

 だがそれは案の定かわされ、壁に傷痕を残すのみ。

 舞う様にして回転しながら壁沿いを移動したガルは、続けて斬り付ける――とみせかけ、右手に握っていた三本の鉄針を投てきした。

 流石に、オレはもう学習している。鉄針が、ただ穿つ事を目的としてガルの手から離されたのでは無いという事を。

 オレがガルとの間に氷の壁を形成するのと、鉄針がはじけ飛ぶのはほぼ同時だった。

 一枚目の氷の壁は灼熱する赤い鉄の破片に穿たれ、幾つもの穴を開けられるが、オレが後退しつつ形成した氷の壁の枚数は三枚。二枚目の表面には幾つもの凹凸が作られたが、三枚目に至っては全くの無傷だ。

 そのまま後退を続け間合いを取ると、ガルは追撃の手を止めていた。

「ん? どうした? もうネタ切れか?」

 オレがそう挑発すると、

「ふんっ、ここじゃあ狭過ぎて面白みが無いな」

 そんな言葉を漏らすガル。

 それを聞いたオレは、アームを前へ出しながらゆっくりと口を開く。

「だったら、そろそろでかいの一発かましてやるよ」

「ほう、でかいのねえ。そりゃ楽しみだ」

 ガルはそう言って楽しそうに笑みを浮かべたが、オレがどう動いてもすぐ動ける様に構えていて、隙が全く見当たらない。

 ここはわざと挑発して、チャンスを作るしかないか。

「これからやる技はフリージング・プリズンっていうんだが――」

 そこで言葉を切ると、オレは笑みを形作る。

「避けなければ確実にお前は負ける事になる」

「はっ! 大した自信だな。必殺技とでも言うつもりか?」

「ああ、そうだ。もし、この技が効かなかったら、オレにはもう打つ手は無いな」

 実際にはまだ他にも手はあるのだが、大技なのは確かだ。

 とは言うものの、オレはこの技を使った事はない。方法、そしてその効果がどうなるのかは、知識としてはプロテクトを解除した時にオレの中に流れ込んできているが……。

 一発勝負のこの大技、成功すれば良いのだが――

「良いぜ良いぜ、その必殺技とやらを攻略して、オレ様の勝利を確実なものとしてやろう」

 狙い通りかかった!

 確実に当てるために挑発しているという意図を読んだ上でそう言ったのか、それともただのバカなのか。

 とにかくガルは、オレがフリージング・プリズンを発動するのを待つ体勢だ。

「オレにこの技を使わせた事、後悔するぜ」

 左腕へとアルドを集中させる。

 この技は強力なのだが、大量のアルドを必要とするのが難点だ。

 同時に、アルドを集中させるために発動に時間がかかる。だが、今は時間を気にせずにアルドを集中させる事が出来る。

 ガルに動く気配はない。どうやら、挑発に乗った振りをして油断しているところを狙う、という気では無さそうだ。

 一応警戒しながらも、問題なくアルドの集中は完了する。

「それじゃあ――――いくぜ!」

 かけ声と共に集中させたアルドを一気に解放。白銀の奔流が現れてガルへと向かう。

 ガルは受け止めようと最初は構えたが、寸前の所で横へと飛び退き奔流から逃れる。

「いい判断だな! だが!」

 凍気の流れはガルを追う様に直角に動きを変える。

「何っ!」

 流石に直角に向きが変わるとは思っていなかった様で、ガルは驚く。けれども判断は鈍っておらず、再び白銀の奔流から外れるように飛び退く。

 もちろんそれで終わりではない。

 再び流れは向きを変え、ガルへと向かって突き進む。

 そう、このフリージング・プリズンは何かに阻まれない限り、目標に向かって永遠に突き進むのだ。

「ドンッドンッドンッ!」

 続けざまに三つの爆発音。

 ガルが能力を使った音だが、そんなものでフリージング・プリズンを止める事は出来ない。全く動きは鈍らないままガルを追い続ける。

 机、棚、壁、床、それらにぶつけて動きを止めようとガルは動くが、奔流はそれらを飲み込みガルを追い続ける。そんなもので受け止められる勢いではないのだ。

 そして予想通り、ガルはオレへと向かってくる。そのまま能力を発動し続ければ自分も巻き込まれる事となり、能力を解除せざるを得なくなる。

ガルが目の前に着地。すぐに横へと飛び退く。続いて凍気の流れが迫ってきて、


――スティルシー・ステップス、発動――


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