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タイムシェイパーFOLS  作者: 時野 京里
第四楽章 α
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隠れた演目1


――シークレットプログラムε、起動パスワード、未確認――


 頭の中に機械的な声が響く。先程まで話していたアームとは違う、聞き慣れたあの声だ。

 しかし、奴の言っていた通り本当にシークレットプログラムとやらは存在する様で、起動するにはパスワードが必要なのも話に聞いた通り。

 どうやら、あの奇妙な空間での会話は幻ではなかったらしい。


――パスワードは、お前がこの世界に来て、最初に会った者の――


 結局、中途半端なところで話を切りやがって。時間が少ないと言っていたが、あの空間にいられる時間が途中で切れたという事なのか?

 問いかけるが、もうその問いに応える声は無い。

 とにかく、その最後の言葉から考えるしかない。最初に会った者の……何だ?

 この世界で最初に会ったのはエンに違いない。何しろ、この世界に来て会ったのはエンと、あのムカつく女と、目の前にいるガルとその連れの四人だけだ。

 すると、それでエンの…エンの何だ?

 パスワードとしてアームに登録されているのだから、何か一般的な事か……。

 身長? 体重? 否、どっちも知らないぞ。

 アームはオレが既に知っていると言っていた。ならば、答えはエンとの会話の中にあるはず。

 例えば…地名はどうだ? エイジアシティー、オキスズミチョウ……単語を思い浮かべても何の反応も無い。

 今までのアームの扱いから考えて、特に声に出して言う必要はないはず。パスワードが合っていれば、思い浮かべるだけで反応するはずなのだ。

 何も反応が無いという事はハズレだという事だ。

 東ココノエ高校…やはり、地名では無いのか?

 後は何がある? エンから聞いた事…そうだ、あの能力はどうだ? あの突然現れたり消えたりする能力。確か名前は――

「スティルシー・ステップス」

 オレは特に意識する事なくそう声に出していた。

 そして――

「さっきから何をぶつぶつ言ってるんだ? もう頭がいかれちまったのか?」

 そうガルの言葉が返ってきただけである。

 これもハズレという事か。

 くそっ、一体何なんだよ! エンの年齢か?

 確か十六……反応無し。

「はっ本当にいかれちまった様だな。それじゃあこれ以上いたぶってても面白くないな」

 と、ガルを無視し続けていたら勝手にいかれた事にされてしまった。

「ああ、うるさい奴だな。お前を倒す方法を考えるのに忙しいんだよ」

 そのまま無視し続けていても良かったのだが、舐められるのはしゃくだ。

「はっ、そりゃ悪かったな。てめえの足りない頭で、出ない答えを一生懸命考えているのを邪魔した様だ」

 相変わらず見下した笑みをはりつけた嫌らしい表情だ。

 パスワードさえ分かれば、その勝ち誇った表情を一変させてやれるはずだが……。

 肝心のパスワードがさっぱり分からねえ。一体何なんだよ。エンの言った事、エンの能力、エンの――

 ん? もしかして、そんな難しく考えなくても良いのか?

 否、でも、そんなものがアームにパスワードとして登録されているのか…?

 思い浮かんだのは、エンのフルネーム。そんな事はないと思いつつも、一応思い出す。

 確か……エン=スガムラ。


――パスワード認証、シークレットプログラムε、プロテクト解除――


 頭の中に声が響き、オレは呆気にとられる。

 まさかそれは無いと思ったのがパスワードだったとは。

 何故、個人名がパスワードになっていたのかは不明だが、今はそんな事を考えている余裕はない。

 カギは解除された。さあ、シークレットプログラムとやらの効果を見せてもらおうか。


――シークレットプログラムε、起動――


 左腕から全身に向かって何かが駆け抜ける。

 全身が燃える様に熱い。そう思ったのは一瞬で、次の瞬間、一転して凍り付くような冷気が体を包み込む。

 否、体だけではない。部屋中が冷気に包まれていた。

「な、貴様――何をした!?」

 一瞬にして白銀の世界へと一変した部屋の中央で、全身に霜をまとわり付かせたガルが驚嘆の声を上げた。

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