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タイムシェイパーFOLS  作者: 時野 京里
第四楽章 α
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眠れる力1

 三日目


「ふん、お前等こそやられる覚悟は出来ているんだろうな? さっきの様には行かないぜ」

 オレは目の前にいる二人組に向けてそう言い放った。

 その言葉に、黒髪の男が反応する。

「一撃で動けなくなった奴が良く言うな」

 嘲る様なそのセリフを聞き終わる前に、オレは行動に移っていた。

 先程までの体に重さは感じず、思う様に身体が動く。

「試してみるか!?」

 叫び声と同時に黒髪の男へと左のストレートを繰り出す。

 男は軽々とそれを避けると、一旦後ろに下がって間合いを取る。そして、顔をしかめる。

「ん? フェンリルと他の二人がいないな?」

「お前の相手はオレ一人で十分って事だ」

 オレは男の言葉にそう答える。

 作戦通り、二人を引き離すのにはどうやら成功したらしい。

「はっ! 身の程知らずが! すぐに命乞いさせてやるさ」

 相変わらず気に障る野郎だ。だが、やる前に確認しておきたい事がある。

「ところでお前、ガルデルムってもう一人の奴に呼ばれてなかったか?」

「それがどうした? オレ様が何だろうと虫けらには関係ねえだろうが」

 否定しないということは、こいつの名がガルデルムだという事なのだろう。

 しかし、こいつはオレの知っているガルデルムとは全くの別人だ。黒髪で長身だという共通点はあるが、それ以外に似ている所は全く無い。

 ガルデルムというのは、この手の怪しい奴らには人気の名前だとでもいうのか?

 どちらにしろ――

「まあ、そうだな。関係ないな」

 とりあえず、紛らわしいのでこいつの事はガルとでも呼んでおくか。

「それで、死ぬ前に言っときたい事は全てか?」

「お前の減らず口こそ、何時までもつかな!」


――攻撃プログラム発動、パターン1始動――


 頭の中に久しぶりのあの声が響く。

 オレはガルに向けて左腕を突き出す様に構えると、光弾を三発続けて撃ち込む。

 ガルはそれを避けようとはせず、弾と自身との間に近くある物を放り投げる。

 そのまま光弾は机や椅子に命中、大きな爆砕音と共にそれらの破片が部屋の中に飛び散る。

 降り注ぐ破片を振り払いながら、オレは爆心地の向こう側へと突っ込む。


――パターン3変更、始動――


 左腕に握られた剣を力任せに振り下ろす。しかし、手ごたえは無く、剣は床へと鋭い傷跡を刻みこんだだけだ。

 左から迫る気配を感じ、後方へと飛び退く。

 目の前を走り抜けていく机、それは前方にあった椅子や机を巻き込んで壁に衝突、破散する。


――防御プログラム変更、パターン1始動――


 後方から続けざまに飛んできたいくつもの光弾が、音も無くオレの直前で消えていく。

 その飛んできた方向から相手の場所を予想して、オレは右後方へと飛び込む。


――攻撃プログラム変更、パタ――


 頭の中に響く声を全て聞き終える前に、目の前へと迫った白衣の男へ光の剣を振り下ろす。

「ぐっ」

 今度は確かな手ごたえを感じ、男の右肩から赤い飛沫が弾け飛ぶ。

 返す刃を男の右脇腹へと横に一閃。

 切っ先はコートを切り裂いただけで、後方へと飛び退いたガルの体へとは至らなかった。


――防御プログラム変更、パターン2登録、始動――


 部屋の天井まで届くかという程の巨大な光の盾が前方に現れる。

 先程の光のヴェールよりも力強そうな分厚いその盾は、ガルの繰り出した渾身の回し蹴りを完全に受け止めていた。

 ガルは一瞬顔を歪めた様に見えたが、すぐさま軸足だった左足で床を蹴って宙を舞い、間合いを取って構える。


――防御プログラム解除――


 目の前の光の盾が消え去ると遮るものがなくなり、オレとガルの視線が交差する。

「まだ一発も攻撃を受けていないんだが…やはり口だけだったという事か?」

 奴を挑発する様にオレは口を開く。

「ふざけんじゃねえ、今のはただの様子見だ。これからが本番だぜ!」

「口だけはよく動くな」

 今までの動きを見ただけで分かる。奴の能力はあのガルデルムには遠く及ばない。力も技も速さも、ガルデルムの方が一枚も二枚も上なのは確かだ。

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