嘘の中の真実4
「FOLSは秘密組織だ。なので、公に隊員を募集する事は出来ない」
「はい、それは分かります」
「我々が警察と関係があるのは先程話した通りだが、警察の目的は危険から人々を守る事。FOLSの目的はその『敵』から人々を守る事。その目的には一致している所がある。つまり、警察で活躍している者の中から有能な者をFOLSに引き入れるという事だ」
「警察に入って活躍していれば、FOLSに入れるって事ですか?」
「ああ、必ずという訳ではないがね」
なるほど。この事については明らかに嘘を言ってきた。
僕が調べた情報によれば、警察の中からだけスカウトしているという事はない。一般人の中から適正のある人間を探し出し、直接FOLSへとスカウトしているはずだ。
やはり、この事については僕に知られてはならないという事だろう。
「ありがとうございます。それだけ分かれば十分です」
僕はそう言って頭を下げた。
「少しは君のためになれたのなら嬉しいよ。将来、君がFOLSに入れる事を祈っているよ」
男は、やわらかな微笑みを浮かべながらそう口にした。
「では、そろそろ時間も時間ですし失礼します」
もう一度頭を下げ、立ち上がる。
「分かっているとは思うが、今日話した事は誰にも話さないようにね。君に話したのも、特例中の特例なのだから」
「ええ、分かっています。それでは」
僕はリビングを後にし、玄関へと向かう。
「ありがとうございました。大変ためになりました」
最後に、玄関で二人に向かってそう言うとシータの家を後にした。
腕時計を見ると、もう既に九時半を過ぎていた。
「あっという間だったと思ったけど、結構時間過ぎてたんだな」
独り呟き、うーんと大きく伸びをする。緊張していた頬へ、吹き抜けていく冷たい夜風が心地よい。
今夜の話では、直接新しい事が分かったという事はない。けれども、全く無駄だったという訳ではない。
直接FOLSの隊員と話した事で、見えてきた事がある。
「シータも多分、FOLSの隊員なんだろうな」
歩きながら、考えをまとめようと僕はそう口に出していた。
「シータが持っていた物が隊員章であろうがなかろうが、発信機がついているのは本当だろう。むしろ、本物なら尚更、発信機を付ける必要があるはず」
家族なんかより、FOLS本人の方が危険な状況になるはずである。
大体、発信機を持たせる必要があるとしても、それがFOLSとの関係を示すものであっては本末転倒ではないか。
それでは、なぜシータ本人がFOLSである事は隠すのか。
「シータがFOLSだとするなら、何かの任務で転校して来たと考えて間違いない。その任務とは……」
カズヤの事と何か関係があるのだろうか。
事前にカズヤがこの世界に現れるという事が分かっていたなら、その前に現地へと来ていてもおかしくない。けれども、この二日の間、シータがカズヤについて探っていた様子はない。
まあ、カズヤの足取りを全く掴めないでいるという可能性もあるが…。そうであるなら、事前に察知出来るのではないかという前提と矛盾する。この可能性は低そうだ。
他に思い当たるとしたら、やはりスカウトだろうか。
先程の話では、スカウトについてだけは全く話に出さなかった。否、出さなかっただけではなく、嘘の情報を伝えて来た。その事に意味があるとしたら…。
「シータは誰かをスカウトするためにこの学校に転校してきた。わざわざ学校に通っていることから、対象は学校関係者…先生か、それとも生徒か…」
シータは、実際の年齢がどうかは分からないが、僕と同じ歳だと言われても違和感は無い。そして、この歳ならば学校に通うというのが自然である。
だから、自然を装うために学校に行っているという可能性も…。
「そうか、今日の午後いなかった事から、学校関係者だけとも言い切れないか……」
そうなると、スカウトの対象を予想する事は難しくなる。だが、
「どちらにしろ、対象はこの街には存在するはず。そして、スカウトされたらその人間はこの街から消える事になる」
そこで、僕ははっと気が付く。
「つまり、スカウトの事を知られると、僕に誰がスカウトされたのかを知られてしまうため、知られる訳にはいかなかった…」
可能性としては十分あり得る。秘密組織の一員となるのだ。その身元を部外者に知られる訳にはいかない。
そう、シータ=コバヤシという名前だって、本名では無いのだろう。
「ARUTOがこの周囲に現れるのを予見していたという可能性もあるが…いや、ARUTOは神出鬼没で、いくらFOLSでも事前にどこに現れるか分かっていないはずじゃあ……まあ、僕が調べた時以降に新たなシステム、新たな能力者を得て予見出来るようになったという事も有り得なくはないか」
と、考え込んでいた顔を上げるとそこはもう自宅の前。
ずっと考え込んでいたため、もう着いたの? と思ってしまう。
「ま、家に着いた事だし、これ以上考えているよりは…」
そう呟くと、玄関へと入っていく。
「ただいまー!」
とりあえず大きな声でそう言うが、親がわざわざ出て来る訳でもないのでそのまま二階の自分の部屋へ。
中に入ると机の上のコンピュータの電源を入れ、椅子に座る。
調べるべき範囲はそうとう絞られた。ならば――――
「さあて、久しぶりにFOLSに侵入してみますか」
僕はそう呟くと、胸元にある「お守り」を手に取る。
そして、続けて呟く。
「頼むよ、ゼルプスト」




