嘘の中の真実2
「えっと、エン君。君は私の仕事、FOLSについて知りたいという事なんだよね?」
僕が座ると、一呼吸置いてシータの父だという男はそう切り出した。
「は、はい! そうなんです」
僕はそう答えると、例の子供の時にFOLSに出会った話を始める。
もちろん、幼い頃の話なのだから、曖昧な部分が多々あるけれども。
「なるほど、ね」
僕が一通り話し終えると、シータの父はそう呟き、何か考えている様な表情をした。
おそらく、どの程度の事を話すべきなのか思案しているのだろう。
「本来は、一般人にFOLSの事を話す訳にはいかないのだが……君はある程度知っているみたいだね。……分かった、教えられる範囲で答えよう」
彼はそう言うと、笑顔を作り僕の言葉を待つ。
さてと、まずは無難な所から質問してみるか。
「FOLSの組織構成について教えてもらえますか?」
「ふむ、構成か」
「はい、よく聞く噂ですと、警察では手に負えない事件の時に現れるっていう事になっているんですけど、警察の一部なんですか?」
「はは、噂か。確かに警察と連携を取る場合は多くあるが、その一部という訳ではない。警察とは別の組織だよ」
返って来た答えに今のところ嘘はない。
警察は国が運営している組織であるが、FOLSは個人的に創設された組織だからだ。
「何人位で組織されているんですか?」
僕は続けて質問すると、チラリとシータの顔を見る。
彼女は特に変わった様子もなく、落ち着いて座っている。
彼女が本当にFOLSの隊員ではないのだとしたら、話に入ってくる訳はないが、横で聞いているというのもおかしな話だ。家族に対して隠している事はないという事だろうか?
否、家族に知られても良い範囲よりも、他人である僕の知って良い範囲が狭いというのは自然な事か。
「そうだな…それ程多い人数ではない、という答えで満足してもらえないかな」
そんな事を考えていると、僕の質問への答えが返ってくる。
今度の答えは明らかに曖昧なもので、それについては話せないという事をはっきりと返してきた。
それ程多い人数ではないという事自体は間違っていないが、それについてはっきり言えないのは、その人数が何か大きな意味を持っているのか、それとも…。
まあ、僕もはっきりと何人いるのかは調べる事が出来なかったし、隊員内でもその数は正確に把握出来ていないのかもしれない。
もっとも、リーダーであるのならそれは別だが。
「そうですか、分かりました」
僕はとりあえずそう返し、次の質問をする。
「あの、普段はどのような仕事をしているのですか? いつもその敵と戦っているって訳ではないですよね?」
彼は少し考え込むような仕草をし、答えはすぐには返ってこなかった。
どう答えるかじっくりと考えているという事だろうか。
FOLSの目的は唯一つ、ARUTOから世界を守る事だ。そのために普段からしておかなければならない事は戦力の増強、そして、すぐに対応出来るように対応策を準備しておく事。
答えとして返ってくるならそういう内容であるはずだ。
「まあ、敵の存在、動きをいかに早くキャッチで出来るか、常に目を光らせている…という事かな」
返って来た答えは、抽象的表現ではあったが予想した事であった。
常にARUTOへの対応策を用意しているという事だ。だが、
「それだけですか?」
僕はそう聞き返していた。
常に目を光らせているというのは当然だ。
けれども、それだけではないはずだ。
トレーニングをして自己を鍛えたり、新しい隊員を増やし、FOLSとしての力をアップさせたりとやれる事は色々ある。というか、実際はそうしているのだ。
「ああ。その敵への対応が我々の全てだからね」
僕の言わんとしている事は分からなかった様で、返事は僕の待っているものではなかった。
「否、そうじゃなくて、トレーニングして鍛えたり――」
新しい人材をスカウトしたり、と言おうとして、そこで言葉を止めた。
FOLSの隊員は、アルド、身体能力などの高い人間が選ばれ、直接スカウトされているというのも以前コンピュータに侵入した時に調べてある。
けれども、そのことを僕は言っていない。自分はもっと知っていると言ってもいいのかもしれないが、今はまだ向こう側の真意が分からない。
シータはFOLSの隊員章を持っていた。にも関わらず、それは自分のものではなく父のものだと言った。
仮にシータ自身がFOLSの隊員だとしたら、シータがFOLSだとばれるのは問題だが、その家族がFOLSだと知られる事は問題ではないという事になる。
逆に、シータが隊員ではないというのが本当だとしたら、それを何故娘に持たせるような事をしたのか。その場合でも、シータ自身に何か秘密があるのではないかと考えられる。
どちらにしろ、シータが急に転校して来た事には何か意味があると考えるのが自然だ。僕に知られてはいけない何かが。




