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タイムシェイパーFOLS  作者: 時野 京里
第一楽章 μ
39/113

檻の外で5

 なんとなく、ガルデルムの言いたい事は分かった。力の有る無しと、それを使いこなせるかどうかは別だという事だ。

「でも、使いこなせないんなら無理じゃないの?」

「オレが力を貸す」

 ガルデルムはしれっとそう言うと、結界に手を当てる。

「ミズホは結界に手を当て、アルドが放たれるのを抑えていれば良い。オレが外からお前のアルドを引き出す。そうしたら、一気にそれを解き放てば良いだけだ」

 さも簡単な事だと言わんばかりのガルデルム。

「どうする? やるか、やらないのか?」

「やるわ!」

 私は即座に答えた。

 やれるだけの事はやってみる。それでダメなら別の方法を探せば良いだけだ。迷っている暇など無い。

 けれども、そこで気が付く。

「でも、二人を巻き込んじゃって…」

「気にするな、リシェルを助けてくれた礼はこの位じゃあ返しきれないからな」

「うん、そーだよ」

 リシェルも傍まで寄ってくる。

「いつも通りだったら私も手伝えるんだけど…」

 申し訳なさそうにリシェルはそう言うが、

「大丈夫よ。私のアルドだけでなんとかしてみせるから」

 私は彼女の手をぎゅっと握りそう返す。

「さてと、じゃあそろそろいくぜ」

 ガルデルムの言葉に、私は両手を結界へと当てる。

 傍目からは、ただ空中に手をかざしている様にしか見えないだろうが、硬い岩に手を当てている様な確かな感触がある。

「いいか、オレが良いと言うまではアルドを抑える事だけを考えろ」

 念を押すガルデルム。

 私はコクリと頷き、両手に意識を集中させる。

 背中にガルデルムの手が当てられる感触。続いてかすかに体が熱くなったように感じる。

 徐々に光を帯び始める両手を見つめ、静かにガルデルムの言葉を待つ。

 心臓の鼓動が高鳴り、緊張感が増してくる。

 普段、耳や目などの一点に集中した時に感じる感覚が全身に広まり、何だか身体能力全てが高まっているような感じがする。

「今だ!」

 耳元での大声に一瞬びくりと体を強張らせるが、言われた通りにアルドを一気に放出する。

 同時に、目も眩まんばかりの輝きが視界を覆い尽くす――――


 何がどうなっているのか全く分からない。

 と、不意に力を込めていた手の平の感触が消え、前のめりに地面へと倒れ込む。

「きゃっ!」

 思わず声を出してしまい、集中も途切れる。

 その瞬間、両手の太陽のような輝きは消え去り、全身の力が一気に抜けていく様な感覚が。

 立ち上がってみると、私は結界の内側にいた。

「成功だな」

「やったね」

 結界を挟んで向こう側にいるはずの二人の声が聞こえる。ということは――

「ピシッ!」

 まるでガラスにひびが入るかの様に、目の前の空間、私が今まで手を当てていた所を中心として、数メートル四方に向かって亀裂が走る。

「ピシッ、ピシシシシッ!」

 一見すると、あたかも空中にひびが入っているかの様。

「パーーーンッ!」

 何かが弾けるような音と共に、終には周囲の結界が崩れ落ち、ぽっかりと大きな穴が出来上がる。その中をガルデルムとリシェルは悠々と通り抜けてくる。

 結界に広がるひび割れは留まる所を知らず、そのまま全面に広がっていってる様だ。

「想像以上の力だ。リシェルのそれを上回っているかもしれない」

 ガルデルムが小さく呟いた言葉を私は聞き逃さなかった。

 私自身、今の力がどれ程のものだったのかよく分からない。けれども、その力を引き出したガルデルムにとってははっきりと分かったのだろう。

 などと思案していると、

「おい、何をボーッとしている? 友人を助けに行かなくて良いのか?」

 とガルデルム。

「そ、そーよ! 結界を破ったんだから、早くエンを探して――」

「ダーーーーーーン!」

 大きな破砕音に、私達三人は一斉に校舎の方へと視線を向ける。

 今度のは明らかに結界内での音だ。ということは――

「あっ、あそこ! あそこから煙が!」

 リシェルが指を差したのは体育館。確かに、どす黒い煙が空を覆い隠さんばかりの勢いでもくもくと立ち上っている。

 私は走り出す。フェンスを乗り越え校庭に飛び降りると、体育館へ向かって全速力で一直線に。

「なかなか足も速いみたいだな」

 ガルデルムがいつの間にか隣に並んで走っている。

 涼しい顔で話しかけてくるが私にはそれに答えている余裕などない。走るだけで精一杯だ。

 テニスコートの脇を抜け、体育館入口の十メートル程前まで来る。と、その時、

「止まれ!」

 ガルデルムが手を前に出し、私を静止させようとする。

 思いのほかその力は強く、私は止まらざるを得ない。まったく、この人の力はどれ程のものなのか。

「一体、ハァハァ、どうしたって、ハァハァ、いうのよ」

 肩で息をしながら何とかそう口にする。

 一方のガルデルムはと全く疲れた様子はない。前髪のせいではっきりとは分からないが、視線を体育館入口に向けているように見える。

「誰か出てくる」

 ガルデルムは呟く様にそう言った。

 私は確かめるために入口へと視線を向ける。

「ど、どうしたの?」

 リシェルがやっと追いついて来て、私達の横に並ぶ。緊迫した空気を感じ取ったのか、少し控えめな声だ。

 ガタンッと入口の扉が開く。

 私はごくりと唾を飲み込み、体育館から出てくる人をじっと待つ。

 もしかしてエン? それとも……。

「ガラガラガラッ」

 扉が開かれ、中から二人の男が姿を現す。否、もう一人。背の高い方の男の背に担がれている長い髪の少女。と言っても、顔は見えないが。

 三人とも服はボロボロで赤黒い染みが所々に出来ている。

 背の低い方の男は私の良く知る人物であり、ずっと無事を祈っていた人物。

 だが、もう一人は知らない顔だ。歳は二十歳ぐらい。身長は、ガルデルムと同じ…おそらく百八十位だろう。

 そんな風に注意深く観察していた私が声を掛けるよりも先に、ガルデルムが声を上げた。

「あいつ、こんな所に――!」



 μ end.

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