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タイムシェイパーFOLS  作者: 時野 京里
第一楽章 μ
38/113

檻の外で4

 後ろから二人が駆けてくる足音が聞こえてくる。二人が付いて来るのは別に構わないが、一体私はどうすれば良いのか。

 さっきの爆発は一体何が? あんな大きな音がしたんだから相当のものだったに違いない。

 ……あれ、少し変だ。校門の所で見た教室からの煙。あれも爆発だったと聞いたが、音は聞こえなかったともアミは言っていた。

 けれども今の爆発は、大音響を伴っていた。ということは、さっきの爆発が意味する事は――

「べちん!」

 小気味の良い音と共に頭に痛みが走る。私は衝撃に後ろへ倒れそうになるが、それを後ろから来たガルデルムが丁度良く受け止める。

「なるほど、これが結界か」

 ガルデルムが呟く。

 私はちかちかする頭を押さえながら、何とか自分の足で立つ。

 場所は校庭と林とを隔てるフェンスの一、二メートル程手前。伸ばせばフェンスに手が届きそうだが、その後少しが叶わない。

「すごい、ドームみたい」

 そう言ったのはリシェル。

 あれだけ走ったというのに、二人共全く息を切らしている様子はない。私はハァハァと肩で息をしているというのに。

 何とか話せるだけの余裕が出来たので口を開く。

「あ、あの、二人には結界が見えるの?」

 私の質問に二人は同じように頷く。

「ミズホには見えないのか? こんなに強い結界を目の前にして、見えないはずがないと思うが」

 ガルデルムは不思議そうにそう口にする。

「み、見えるわよ。ただアルドを目に集中させないとだめなの! それにしても、さっきの爆発で壊れたって訳じゃあないみたいね」

 先程のアミの話から考えると、さっきの爆発はあのフォルスとかいう人達が結界を破るために何かしたのではないか、ということになる。結界の外側の音しか聞こえないはずだからだ。

 けれども、どうやら結界は消えてはいない様だ。

「なるほどね」

 ガルデルムはしばらく結界を見つめていたかと思うとぽつりとそう呟いた。

「この結界、破れるぞ」

 私の方を見ると不敵な笑みを浮かべる。

「えっ、それはどういう――」

「ミズホ、お前次第だがな」

 私が言い終わる前に、にやりと口の端を上げてガルデルムは話し出す。

「この結界は強力なアルドによって出来ている。使用者は自分のアルドの一部を具現化し、結界としているのだ。そして、それが結界の大きなリスクともなる。結界がある間は良いが、破壊などされたら大量のアルドを失うことになり、身体的にも精神的にもかなりのダメージを被る事になるからだ」

 そこで一度、ガルデルムは言葉を切ると結界を見上げ、

「まあ、それだけの代償にもかかわらずこの結界を使っているという事は、それだけ破られない自信があるのだろうがな」

 と付け足す。

 たった数十秒見ただけでそれだけの事が分かるというのは驚きだけれども、今はそれよりも、

「結界の解説はもういいから、私次第ってのはどういう意味よ?」

 そっちの言葉の方が気になって仕方がない。

「詳しい説明がまだあるのだが……ふう、まあ良いだろう。結界を破る方法は単純だ。一点に大量のアルドを一気にぶつける。それだけだ」

 喋り足りなそうにしながらもガルデルムが口にしたのは、そんな短い答え。

「それだけ…?さっきの凄い爆発でもびくともしてないのに?」

 簡単過ぎる答えで、逆に信じられない。

「確かに爆発の様な衝撃は全く通用しないだろうな。だが、この手の結界は強力に見えるが実はそうではない。絶妙なバランスの上で成り立っているのだ。だからそのバランスさえ崩してしまえば、もうそれは砂の壁でしかない」

 ガルデルムが何故そこまで詳しい事を知っているのか。

 否、そんな事はどうでもいい。とにかく今はエンを助け出す、それが先決だ。

 けれども、

「で、まだ私次第ってのが分からないんだけど?」

 何故そこで私が出てくるのだろうか。

 話によると、大量のアルドが必要だという事になるが…。

「それはミズホがこの中で一番多くのアルドを持っているからだ」

「えっ?」

 思わず聞き返してしまう。

 今まで生きて来て、アルドが多いだなんて言われた事は無かった。なにせ、私は感覚拡大という、少ないアルドでも出来る様な事しか出来ないのだから。

「言っていないが、オレもリシェルと同様にワープしてきた時に多くのアルドを失ってしまっている。と言っても、リシェルの様に倒れてしまうほどではないがな。だから、ミズホの力は正確には分からないが、少なくとも今のオレ達よりは上だろう。だからお前しかいないんだ」

 そう説明されてもすぐには納得出来ない。

「ちょ、ちょっと待ってよ。どうして私のアルドがガルデルム達より多いって分かるの? さっきも言ったじゃない。二人は結界が見えてたのに私は集中しないと無理だって」

 その私の問いに対して、黙って私達の話を聞いていたリシェルが口を挟んでくる。

「デールの言う通りだよ。私には分かるよ! ミズホさんのアルドはいっぱい、いーっぱいあるって」

 うん、彼女に保障されても不安にしかならない。

 ガルデルムはリシェルに対して頷くと、口を開く。

「今は、結界が見える見えないは関係ない」

 と、ガルデルムが一瞬ニヤリと笑った様に見える。

「そういう事は慣れだ。アルドの多い少ないなどあまり関係ない。自分でアルドを上手く使う事が出来るかどうかだ。ミズホは自分の力の全てを制御する事が出来ていない。だから目に集めるという様に、局部的にその力を発揮させる事でやっと結界を見る事が出来るのだ」


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