檻の外で3
私も彼女に近づいていく。
「デール、あの人は?」
私に気が付くと、ガルデルムの顔を覗き込むようにしてそう尋ねる。
「ああ彼女は――」
「こんにちは。私はミズホ。ミズホ=イスルギよ」
笑顔で明るくそう言った。
彼女もその笑顔に答えるかの如く、満面の笑みを浮かべる。
「リシェルです。初めまして、ミズホさん!」
ぺこりと頭を下げる仕草がまた可愛らしい。これが母性をくすぐるというやつだろうか。
「ミズホはリシェルの命の恩人なんだぞ。ミズホがいなかったら今頃どうなっていたか」
ガルデルムは簡単に今の状況をリシェルに説明する。リシェルは分かっているのかいないのか、一々こくこくと頷きながら、大人しく最後まで話を聞いていた。
「そうなんだ。ミズホさん、ありがとうございました」
深々と頭を下げるリシェル。
私はちょっと恥ずかしくなり、鼻の頭をかくと、
「そんな、当たり前のことをしたまでよ。それと、ミズホでいいよ、リシェルちゃん」
と、いきなりガルデルムがプッと吹き出す。
「な、何よ!」
「お前…ミズホ、誤解してると思うから言っておくが、リシェルは十八歳だぞ」
笑いを堪えながらのガルデルムの言葉に、私は耳を疑いリシェルの顔を見る。
「デールの言う通りだよ、ミズホ!」
相変わらずの無邪気な笑顔でリシェルが答える。
「でも、本当にタイムスリップしたんだったらすごいね」
そう言うリシェルは、どう見ても年上には見えない。百歩譲っても十四、五歳にしか見えない。
と、そんなことを考えていると、
「ドカーーーーーーン!」
大音響で爆発音が周囲に響きわたり、それとほぼ同時に衝撃波が体を揺らす。どこから聞こえてきたのかといえば――校舎の方向だ。
「何だ、今のは!」
「な~に、今の?」
一瞬で緊張を高めるガルデルムと全く変わらずのリシェル。
「忘れてた! 学校に入らなくちゃいけないんだったんだ!」
ガルデルムとリシェルの登場で、その事をさっぱり忘れてしまっていた。
しかし、今の爆発音で自分が何をしようとしていたのかを思い出す。
「学校に入らなくては、とはどういうことだ? 今の爆発と、どういう関係があるのだ?」
冷静に問いかけてくるガルデルム。
そのおかげて、私の気の動転もいくらか抑えられる。
「えっと…」
何から話せば良いのか分からずに言葉を詰まらせる。
大体、自分自身でもはっきりと現状を理解していないのに、どう説明したら良いものか。
「簡単に言うと、学校の中で何か事件が起こっていて、私の知り合いもそれに巻き込まれているの。助けようと思うんだけど、校舎には結界が張られていて中に入れなくって――」
これで伝わったのかどうかは分からないが、私はもう居ても立ってもいられなくなり、言い終わると同時に校舎に向かって走り出した。
「お、おい待て」
ガルデルムが呼び止めるが、私は振り返りもせずに走り続ける。
「ちっ、リシェル行くぞ。遅れるな!」




