ブラッド4
私は自室に入るとベッドに腰を下ろした。
ここまで歩いてくる間、ずっと考えていた。トゥルース様の言葉を何度も何度も反芻しながら、今後の事を。
「『共』有者でもかまわない、か」
私はいつの間にかその言葉を口にしていた。
『共』有者、それは能力を有する者だが自分自身では自由にその力を操る事が出来ない者の事である。
それに対して、私やフェンルルの様に自身で自由に能力を操れる者の事を『個』有者と我々は呼んでいる。
組織に所属する者の中で個有者は、他の能力者を捜し出して来るという任務に就く者が大部分だ。
逆に共有者は、リシェルに代表されるように能力の研究、実験などを行う。共有者は自分では能力を使えないが、周りから力を引き出すことが可能だからだ。
そう、その「自分では能力を引き出せない」という部分と、あいつの持つ物とが私の中では繋がっていた。もし、あいつの持つ物が手に入ったならば、共有者であっても自由に能力を使えるのではないだろうか。
その考えに期待が高まると共に、あいつとの再会が待ち遠しいものとなってくる。一刻も早くあいつと戦ってみたい。そしてあいつの持つ物の力を確かめてみたい――
そんな事を考えていると、突然ピクッと体が何かに反応する。
「これは!」
私はその場に立ち上がる。体が何らかの能力に反応したに違いないのだ。
と、目の前にフッと人が現れ出る。瞬間移動能力、これを使えるのは――
「フェンルル!」
目の前に現れた、スラリと背の高い制服を身につけた人物。
その腕には、一人の少女が抱えられていた。
「よう、久しぶりだな。いや、まだ会ってから数時間しか経っていないか」
入口の扉前に突然現れたフェンルルは、見下したような目線を私に送りながらそう言った。
「あまりにも任務が早く終わってな。この演出は、ちょっとした貴様へのサプライズだ。フフッ、これでオレの昇格は間違いなしだな。貴様の失敗した任務を、こうもあっさりと終わらせたのだからな」
そこまで聞いて、私はやっとフェンルルに抱えられている人物が誰なのか気が付いた。
「ミルトか、そいつは」
私がそう呟くと、
「そうさ、一瞬で確保した。周りにいた連中に連れて行く事も一応伝えたが……貴様の名を口にした事は、問題あるまい?」
フェンルルはそう言って私を嘲笑う。
「私の名? それはガルデルムだろうな?」
「本名の方がよかったかな、コードネームよりも?」
「お前、死にたいのか?」
私は何とか感情を抑え付けながら静かにそう言葉を紡ぐ。
ブラッド=ペインという名を口にして良いのはこの世で唯一人だけ。トゥルース様だけだ。
「おお怖い怖い。生憎、今はお前の相手を長々としてる暇はなくてね。こいつを置いてこなくちゃならないんで」
フェンルルはそう言ったかと思うと、現れたときと同じように一瞬で姿を消す。
私はそれまでフェンルルのいた場所を睨みつけ、フウッと一つ溜め息をつくと再びベッドに腰を下ろす。そして、
「暇が無いんだったら、始めからここに来てるんじゃねぇよ!」
心の底からそう吐き捨てた。
だが、それで私は平静を取り戻し、重要な事実に気が付く。
「しかし、だ。面白いことを言っていたな。オレの名を口にした、か。これはチャンスだ。あいつがその事を聞きつけたら……。クククッ、クックックックッ!」
私はこみ上げてくる笑いを堪える事が出来ず大声で笑い出す。
「例の倉庫だ。あそこにあいつは必ずやって来る。クククッ、待っているぞカズヤ!」
喜びに震えだした体。戦闘への飽く事のない欲求。
私は来るべき時に向け着々と準備をしてきていたのだ。
そしてついに――




