FOLS2
「まず、最初に説明しておきたいのは『FOLS』の意味ね」
ベータはオレ達五人の顔をしっかりと見回すと、続きを話し出す。
「この意味を知っているのはFOLS内でも一部の者だけなのだけれども、これは『Free Overtime Leap Sight』の略で、『自由に時を越えて行き来する監視者』という意味よ」
「時を…越える?」
思わず呟きを漏らしてしまう。
「そうよ。現在過去未来を自由に行き来する」
「そんな事が出来るのか?」
オレの疑問の声に、ベータはただ一言、
「可能よ」
とだけ答え、部屋の中には静寂が訪れる。皆が驚きに言葉をなくしているのだ。
だが、それも一時の事。
「って事は、FOLSに入れば時間旅行も出来るって事!?」
エンの興奮気味の声が大きく響く。
「ええ、出来るわ。でもそうなると、まず思い浮かぶ事が何かないかしら?」
「思い浮かぶ事?」
とスズ。
「何時代に行きたいとかそういう事?」
とエン。
これにはベータはただ首を横に振るだけで応える。
何をベータが言いたいのか理解できずに黙っていると、ガルデルムがゆっくりと口を開く。
「歴史を変える事は出来るのか、という事か?」
その質問でベータは満足したのか、大きく頷く。
「そうよ。時間移動出来るという事は、その時間にないはずの異物を持ち込む事が出来るという事。その時間に本来無い物があったら、逆に有るべき物がなかったら歴史はどうなってしまうのか。分かり易い話だと、過去の自分を殺したら今の自分はどうなってしまうのかって事よ」
「ええっと、過去の自分が死んじゃったら今の自分はいないって事だから…あれ、それだと過去に行った自分もいないって事だから、自分が殺される事もなくなって…あれ、あれれ…一体どうなっちゃうの?」
スズが頭を抱えて疑問の声を上げる。
「なるほど、タイムパラドックスってやつだね」
そう言ったエンにベータが頷き返す。
「時間をさかのぼる事で過去に介入出来るとしたら、その過去と現在にどうしても回避する事の出来ない矛盾が発生してしまう。でも、実際に起こる事は何もないわ。誰かが過去や未来に行ったとしても、現在は何も変わらない。依然として世界はそのまま何も変化しない。居るべき人がいなかったり、無いはずの物が現れたり、そんな事は起こらない」
「どういう事だ? 何も変わらないのなら、変更された過去はどうなる? なかった事にでもなるというのか?」
というのはオレの問いだ。
「別の過去が出来るって事?」
続いてエンの問い。
これにベータはちっちっちと右手の人差し指を立てて振り、
「エン君おしいわねえ~。でも違うわ。別の過去が出来るのではなくて、別の世界への分岐点出来るの。それによって、今私達がいるのとは別の世界が枝分かれしていく。歴史とは、無数に枝分かれしている道筋からただ一本を選びながら進んでいった結果、その後ろに出来ていくものなのだから」
「詳しい事は分からないけれども、つまり並行世界があるって事だよね? さっきの自分を殺すって例でいうと、自分がいるこの世界の他に、自分が殺されていて存在していない世界が同時に存在していると」
ベータの小難しい説明をエンが要約し、それでやっとオレも理解する。
「そういう事ね。その辺の事は詳しく話すと長くなるし、言ったところで理解するのは難しいから今は置いとくとして、今知っていて欲しいのは、時間を自由に行き来出来るという事は、並行世界をも自由に行き来出来るって事。そして、それ故に私達FOLSはARUTOの様な異世界からの『異物』の対処に当たっているのよ」
ちょっと待て。
今こいつはさらっと言ったが、こいつの言う通りならばつまり、
「オレ達も、その並行世界の一つから来たという事か」
オレの思考を読んだかの様にガルデルムが口にする。
ベータは奴、スズ、オレと視線を巡らせた後、頷くと、
「その通り。そして、私達の技術を持ってすれば、あなた達がどの時間のどの世界から来たのか分かるし、その世界にあなた達を送り返す事も可能よ」
それに、オレは瞬時に反応していた。
「という事は、オレ達の世界から別の世界に飛ばされた人間を捜し出す事も可能か!?」
部屋中の視線がオレへと集中する。
それ程に、オレの声は興奮で大きくなっていた。
「あ、そうだった、ベータ。カズヤは、そのいなくなった人を捜していて、この世界に来てしまったらしいんだ」
とエンが説明すると、それまで驚きの目を向けていたベータの表情に、納得の色が浮かぶ。
「そういう事ね。いきなり大声を出すから何事かと思ったわ」
「で、どうなんだ!?」
悠長に話すベータに待ちきれず、再度問いかける。
「そんなに声を荒げなくてもちゃんと答えるわよ。結論から言えば可能よ」
「本当か!」
オレは思わず立ち上がっていた。




