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タイムシェイパーFOLS  作者: 時野 京里
第四楽章 α
101/113

光の都へ3

 クシイの説明はまだ続く。

「だがそうすると、今度は眩しくなり過ぎるという問題が出てくる訳だが、今、実際に車に乗っていて眩しくはないだろう?」

 言われてみればその通り。建物全てが光っているという割には眩しくはない。普通に陽光の下にいるのと同じ様な明るさだ。

「道路の様な人が行動する場所は全て、光の量を調整するフィールドが張られている。それによって、問題なく生活出来る明るさになっている訳だ」

 何処となく得意気に聞こえるのは、理解の範疇を越えた文明に対してオレが卑屈になっているせいだろうか。

「そのフィールドの維持には、大量に得られる陽光のエネルギーを利用している。元々は日照問題から考え出された仕組みなのだが、結果としてエネルギーを生み出す事が出来る様になった画期的な街だと言えるな。まあ、これだけ巨大な建物が集まっているからこそ出来る事なのだがね」

 クシイの説明はとりあえず終わった様だが、オレにはさっぱり理解出来ない。

 こんな街はオレの経験からは規格外で、何が問題で何が利点なのか全く分からない。

 だが、ガルデルムの方は何やら納得がいった様で、

「なるほど、実に興味深い話だ」

 などと言って頷いている。

 何でこいつはこの世界に馴染めるのか…と、オレが顔をしかめているのを振り返って見ていたエンは、

「ハハハ、まあそんな気にしなくても良いよ、カズヤ。この国の人でも首都の仕組みの事をちゃんと知ってる人は少ないと思うし、とりあえず、光る街だと知っておけば大丈夫。僕だってエゾに来るのは二回目だしね。小学校の課外学習で来て以来だな」

 と、説明してくれる。

 それに補足する様にクシイが続ける。

「そうだな。政治関係の者でなければ、ここに来る事はそうあるまい」

 そうやって話している内に、車は一つの建物の前へと到着し、入口の前のロータリーへとクシイは車を止める。

「ここがFOLS本部だ」

 外に出る様にとクシイは身振りで指示すると、自分もエンジンをかけたままで外へ出る。

 外へ出て、改めてその建物を見上げる。

 巨大だった。こんな建物が建てられるのか、否、こんな建物が存在出来るのか。

 視線を下ろすと、にんまりと笑みを浮かべるエンの姿が目に入る。

「やっぱり驚くよねえ。こんな高いビルなんて、他の街では無いからね。僕も初めてエゾに来た時は驚いたんだよねえ」

 と、しみじみと語るエン。

「ああ、こんなのオレのいた所じゃ考えられなかった。本当に、驚きだな」

 そう応じると、クシイの方へと視線を移す。

 クシイは、入口前に立っていた男と何やら話をしていて、しばらくするとその男がオレ達の乗ってきた車へ、クシイはオレ達の方へと歩いてくる。

「では行こうか」

 オレ達に付いて来る様に言うと、クシイは先頭に立って入口へと向かう。

 入口の回転扉を抜け、中に入った所でオレは再び驚き、足を止めてしまう。

 五階まで吹き抜けのロビー。その床や壁は、白く淡く光っている様な不思議な石が敷き詰められていた。

「これは魔光石…凄い」

 エンの素直な感嘆の声。

「魔光石?」

 オレが問いかけると、

「アルドと反応し、光を発する特別な鉱物だ。足元を見てみると良い」

 と、クシイが答え、足元を指差す。

「ほう、それぞれの光の強さが違うな。オレとカズヤに至っては光の色も微妙に異なる」

「鋭いな」

 ガルデルムの言葉にクシイが頷く。

 確かに奴の言う通り、足元の光は、強さや色が異なっている。

 エンの足元がほとんど光っていないのに対して、クシイの足元は周りよりも明らかに明るい。そして、オレ達二人の足元は、微妙に赤みがかった色の光になっている。

「この色の違いが、オレ達が異世界から来たって事を表しているって事か?」

「そういう事になるな」

「でも、こんな弱い光で何か意味はあるのか? 防犯効果とかがあるのか?」

 オレは疑問に思った事をそのまま口にする。

 と、答えは予想外で、

「いや、これはただの装飾だ。敵意の有る無しが分かる訳でもないしな」

 というものだった。

「魔光石はとても貴重な鉱物だし見た目も綺麗だから、こういう所では良く使われるんだよ、カズヤ」

 と、エンが付け足す。

「もっとも、これだけ大量に使われているのは初めて見たけどね」

 話しながらもオレ達は歩を進め、正面にあった受付カウンターへと着く。

 すると、

「あっ! クシイさん! おかえりなさい!」

 元気な声が響く。

 受付に居たのは、おそらく二十代であろう女性が一人。

「ああ。エルピナ、連絡は既にいっていると思うのだが――」

「はい! ちゃんと聞いてありますよ! 五十六階に部屋が用意してあるそうです!」

 クシイが言い終わる前に、エルピナと呼ばれた女性ははきはきと答える。

「そうか、ありがとう」

 そう言ってクシイが歩き出そうとすると、

「あ、あの!」

 と、エルピナが呼び止める。

「ん? どうした?」

 クシイが振り向くと、エルピナは何か言おうと口を開きかけるが不自然に動きを止め、再び何か言おうとするが、また止まる。

「ん? 何だ?」

 クシイも変に思ったのか、そう問うと、

「あ! いえいえ! 何でもありません!」

 妙に焦ったような調子で、やっとエルピナは口を開く。

「えっと…そう! 弟! 弟はちゃんとやっていますか!? 今日も一緒に出られたんでしたよね! 迷惑ばっかりかけていませんか!?」

 クシイはああ、と頷くと、

「ファイは良くやってくれているよ。まだまだ至らない所もあるが、迷惑ばかりなどという事はない。しかし、君も弟思いだな。いつも弟の事を心配して」

「え! いえ、そんな事は! クシイさんに迷惑をかけてないか心配なだけですよ!」

「それでは私は行くよ」

「はい! 呼び止めてしまって、すみません! 任務中なのに! お仕事がんばって下さい!」

「ああ、君もな。では」

 二人の会話は終わり、オレ達は歩き出すクシイに続く。

 その後方からは、ハァーという大きなため息が聞こえてきた。


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