光の都へ2
「そうだ。お前の様に触れた瞬間に動き出すという事はなかったが、調査している内に突然な」
結局のところ、奴にもあの装置の事は全く分からなかったという事か。
アイの手掛かりは無し。この世界に来ているという保証も無い。
「ったく、戻る方法も分からず、これからどうするかな」
オレはそう口にすると、ボスッと座席へと寄りかかる。
すると、前から声が返ってくる。
「それならたぶん、大丈夫だと思うよ」
エンが座席の間から後ろを振り返っている。
「大丈夫って何がだ?」
「これからどうするかって事だよ」
「話、聞いていたのか?」
エンはクシイと話をしていたため、こちらの会話は聞いていないと思っていたので少し驚いた。
「ううん、今までクシイさんと話していたから聞いてなかったけど、最後の言葉だけね」
流石にエンでも、二つの会話を同時に聞くのは無理だったらしい。
「そうか。で、これからどうするかが大丈夫ってどういう意味だ?」
「FOLS本部に行けば、それははっきりすると思うよ。多分、元の世界に戻る事も可能だと思う」
「本当か?」
FOLSとやらが何なのかいまいち分からないので、エンが言おうとしている事も何なのか良く分からない。
「ですよね? クシイさん」
エンは運転席の男へと問いかける。
「私からは何も言えないな」
返ってきたのは素っ気ない答え。
エンは少し顔をしかめるが、すぐに元の表情に戻ると、
「まあ、ベータが何か考えてるのは確かだよ」
何が根拠か分からないがそう言った。
「何で分かるんだ? 別にそんな話、オレは聞いていないが」
「うん、僕も直接聞いた訳じゃないけど、そうじゃなければ、部外者の僕達をFOLS本部に連れて行く様な指示はしないはずだよ。ですよね?」
再びクシイに確認する。
「そうだな。我々の本部に部外者が入る事は、通常では有り得ない。ベータには何か考えがあるはずだ」
今度はきちんとした返事が返ってきた。
「話を聞いていて疑問に思ったのだが、そのベータというのはFOLSという組織のトップか、それに近い人物なのか?」
と、ガルデルムが話しに加わってくる。
「あ、はい。ベータはFOLSで二番目の地位の人に与えられるコードネームなので」
エンが答え、それにクシイが続く。
「エン君の言う通りだが…現在、トップのアルファが不在のため、実際にFOLSを取り仕切っているのはベータとなっている」
あいつが組織のトップ? 予想外だ。
あんな傍若無人な態度で組織をまとめられるとは到底思えない。
だが、ガルデルムは納得した様で、
「なるほどね」
とだけ呟く様に口にする。
「ま、とにかく、今後の事はFOLS本部に行ってから考えても遅くはないよ」
エンが話をまとめたところで、クシイが口を開く。
「そろそろ着くぞ。と言っても、ここからではどこに居るのか分からないと思うがね」
オレ達の乗っている車は、先程からずっとオレンジのライトに照らされたトンネルの中を走っていた。
と言っても、一本の道だけでなく途中に交差点もあり、幾つもの道が交わっていて、多くの車が行き来している。地下に張り巡らされた道路網といった感じか。
これだけのものを地下に作れるというのはオレ達の世界では考えられない。改めて別世界にいるのだと実感すると共に、この世界への興味が湧き起こるのを感じる。
と、今までオレンジの明かりだけだった視界の前方に、太陽の光とおぼしき白い光が見えてくる。
徐々にその光へと近付き、そしてその陽光の元へと車が差し掛かる。
眩しさに目を細め、再びその目を開いたところでオレは言葉を失った。
窓外には巨大な柱の様な建物が連立し、それなのに、どういう仕組みなのか分からないが、その柱の影になっている所が無く――そう、それはまるで街全体が陽光を受けて光り輝いている様な――
「ここが国の中心、首都エウス=ゼプト=オイゲルン。通称、光の都EZOだ」
「光の都、か」
クシイの説明に、ガルデルムが呟きで応える。
それが聞こえたのかどうか分からないが、クシイはこの「光」について語り出す。
「ここの全ての建築物の外側にはある特殊な材料が使われていて、太陽の光を受けるとそれ自体も同様の光を発する様になっている。それによって、街自体が光っている様に見えるために、光の都と呼ばれている訳だ」
そんな材料など見た事も聞いた事も無かったが、何のためにそんな光を発する必要があるんだ? 眩しくなるだけではないのか?
と、オレが疑問を口にするよりも早くガルデルムが問う。
「それはどういう意味があるのだ? 眩しくはないのか?」
それにクシイは、フフッと笑い声を漏らす。
「もっともな質問だな。それはこの街の作りを見てもらうと分かると思うが――」
そこでクシイは、窓外を見る様にと右手で指差す。
「ここの建物は、軒並み百階を越える高層建築のみ。となると、当然地上付近には太陽の光がほぼ届かないという問題が出てくる訳だ。それを解決するために建物自体が陽光を発する様になっている、と」
「なるほどね」
オレは窓外の建物を眺めながらそう口にした。




