俺がダーリン!?
なかなか長くなってしまいました。どうか温かい目で読んでください。
魔物日記6月5日
明日から魔物たちの生活だけど不安がでいっぱいだ。こんなボロ屋ではまず生活が難しいので、とりあえず今日はこの魔物研究所の修繕をした。遠藤さんに頼んで黒服たちにも手伝ってもらった。上司があんなんなのに黒服たちはいい人ばかりだ。まあ、あんなのがいっぱいいたら困るけど。今日中に終わるか心配だったけど黒服さんたちの動きがすごくて作業は無事に終わった。黒服さんたちがその手の職業の人に見えるほどだ・・・・・あの組織の黒服を着るには大工スキルがいるのかなぁ。とにかく間に合ってよかった!!明日どんな子が来るかドキドキです。
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6月6日魔物研究所・二月寝室
俺は緊張していた。時計と自分の身だしなみを何回も確認していると、
―――ピーンポーーーン
呼び鈴の間延びした音が響いた。
「二月く~ん遠藤だよ~」
「はいっ!!」
遠藤に返事をすると、足がしびれ転びそうになりながら玄関へ向かった。
「この子が君の同居人の魔物番号214号ちゃんです!ぱちぱち~」
「214号って呼ぶなですぅ」
そこで待ってたのは、短く切りそろえた髪に深めにかぶった帽子、その帽子からちらりと覗く大きな一つ目、あの子だった。
「まああとは任せるね!2ヶ月に一枚のペースで調査書頼むよ~」
遠藤はそれだけ言うと森を出ていった。
「「・・・・・・・」」
何を話したらいいのか分からず、沈黙が流れる。
「僕はサイクロプスのキュクル=ロープスですぅ」
先に沈黙を破ったにはキュクルだった。
「あの時は助けてくれてありがとうですぅ」
キュクルは地面にヘッドバットする勢いで頭を下げた。
「俺はなんにもしてないよ」
俺は思っていたより友好的なキュクルの姿勢に戸惑う。
「俺の名前は二月覚、じゃあ中に案内するよ」
とりあえず俺はキュクルを研究所に案内しようとドアを開ける。
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6月6日魔物研究所・リビング
「これで一通りの案内は終わりかな。」
「人間の家はすごいですぅ!!」
あっちの世界のサイクロプスは洞窟に暮らしているらしく、一軒家が珍しいらしい。
「この壁変なゴミがついてますよぉ?」
―――バキッ
「それ電灯のスイッチ・・・・・・」
教える事はたくさんありそうだ。
「それはこの部屋の電灯のボタンだよ」
「伝統のスイッチ!?スイッチがなにかわかりませんが伝統的なもの壊しちゃいましたぁ!ごめんなさぃー!!」
なにか盛大な食い違いが起きたようで泣き出すキュクル。
「伝統じゃなくて電灯ねってわからんか!そんな大事なものでもないしすぐ治るから!!泣き止んで!ねっねっ!」
「グスン・・ホントですか?」
「ホントホント!」
「よかったですぅ。お前やっぱり優しいですぅ!」
とりあえず泣き止んだキュクルを座布団の上に座らした。
「そういやどうして黒服に追われてたの?」
「それは・・・・・」
―――ピーンポーーン
「につきーん僕だよ~」
何故か遠藤が帰ってきた。
「はーーーい。ごめんねちょっと行ってくる」
「いってらっしゃいですぅ」
「につきん早く~♥」
俺は遠藤の声にイラつきを覚えながら玄関に向かった。
「・・・・・・人間を消したからですぅ」
ポツリと冷たい声がリビングに響いた。
―――ガラガラガラ
「遠藤さんどうしたんですか?こんな大人数で」
玄関の戸を開けると遠藤と黒服たちが待機していた。
「いやね言い忘れたことがあってね。一応君と魔物の生活に対するルールってのがあるんだよ。」
「そうなんですか」
遠藤は懐からタバコを出し火をつけた。
1魔物はこの魔物研究所のある森から出る場合研究員の同行が必須。
2魔物は研究員の調査に協力的でなければいけない。
3魔物は決して人間に手を出してはいけない。
4魔物がこの3つのルールを守らなかった場合、研究員は直ちに魔物対策部門に連絡すること。
「ってとこかな。」
「もしこのルールが守られなくて、研究員が魔物対策部門に連絡したら・・・・その魔物はどうなるんですか?」
遠藤はタバコを捨て足で踏み潰し、自分と後ろの黒服たちを指差した。
「search and destroy僕たちの出番さ!」
俺は背筋が凍った。
「214号ちゃんの前の研究員は何故か失踪しちゃってね。それから研究所から飛び出していたあの子を保護したんだ。一人で外出してたけど研究員がどこにも見当たらなかったから特別処置で殺処分は逃れたって感じ。じゃあそんだけだから。」
遠藤はそう言うと黒服を連れ森を出て行った。
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6月6日魔物研究所・研究室
「じゃあ早速調査に協力してね」
「はいですぅ」
やることもないので俺は仕事をすることにした。懐からルーペを取り出し、レンズをきゅクルの方へ持っていく。
「スキャン!!」
―――ブブーン
ルーペは機械的な音を上げると、強く青色に光りだした。
―――魔物番号214号
―――種族 サイクロプス
―――特徴1 高い知能と戦闘能力を持ち、握力、腕力、脚力などの身体能力は人間の約5倍とされる。
―――特徴2 目が一つしかないのにも関わらず広い視野を持ち、ほぼ死角はない。
―――特等3 目が敏感なため急な強い光に弱い。
「すげーな、その目ちょっと調べさせてね」
「はい」
俺は目に興味を持ちルーペをキュクルの目へ持ってい行った。
「ルーペ倍率100倍!!」
―――ブーン
ルーペは一瞬青く光ると、普通のルーペではありえない倍率を映し出す。
「スゲー!本当に出来た!!」
興奮しながらもルーペを少しずつ動かして、キュクルの目を観察する。
「ん?なんだこれ。倍率200倍」
俺はルーペの映像に光る六角形を見つけさらに倍率を上げる。
「これは複眼?」
キュクルの目は大量のごく小さな六角形の塊で出来ていた。
「視野の広さの原因はここにありそうだな」
俺は結果を調査書に書き入れた。
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魔物研究所リビング
「キュクルちゃん今日はありがとね、俺腕によりかけて飯作っちゃうよ。」
「いいってことですぅ」
調査も終わり、俺はキュクルとご飯を食うことにした。
「今日はすき焼きだ!!」
―――ズーン
俺は初めてのご飯ということで、豪勢にすき焼きにしてみた。
「な、なんですかこれ・・・・・」
何が気に喰わないのか一向にすき焼きに手をつけないキュクル。
「肉になんてことをですぅぅ」
「えっ!」
キュクルはすき焼きを見たことがないらしい。
「肉は気に刺して丸焼きか生が普通ですぅ!!」
不満プンプンで頬を膨らましている。
「まあ食ってみろって。絶対美味しいから」
「そうですかぁ?」
箸を一本だけ持ち肉を一刺し、卵につけずふうふうして口に運んだ。
「うぅ・・・・」
「・・ダメだった?」
キュクルは唸って下を向くと、
「うまあーーーーいですぅ!!」
歓喜の雄叫びを上げた。
「それはよかった」
俺はすき焼きにがっつくキュクルを見微笑ましく思いながらも、箸の使い方教えなきゃと思った。
「肉ばっか食べないの!!」
俺たちは初めてのふたりだけの食事に舌鼓を打った。
「あぁ美味しかったですぅ。」
キュクルはお腹いっぱいになったお腹をさすりながら寝っ転がった。
「すぐ寝ちゃダメだよ!・・そうだ俺が皿洗ってるあいだに風呂に入って来なさい。」
「風呂ってなんですかぁ?」
サイクロプスには風呂がないらしい。
「体を洗う場所だよ。」
「わかったですぅ、体を拭くものはどこですかぁ?」
「ああタオルなら・・・・」
俺はタオルを渡すとキュクルはリビングから出て行った。
「俺キュクルに風呂の場所案内してなかったな」
俺は少し不安に思ったが、わかりやすい場所に風呂があるので大丈夫だと思い皿洗いを再開した。
―――20分後
皿洗いが終わりキュクルを待っていると。
―――ガラガラガラ
「なぜ玄関から音が?」
「ただいまですぅ」
「!?」
キュクルだった。
「外に行ってきたのか!!」
「ここの川はあんまり綺麗じゃないですぅ」
サイクロプスは川で体を洗うらしい。
「ルールは知ってるだろ俺の同行がないときは外に出ちゃダメだよ!!」
「森はでてないですぅ」
俺は胸をなで下ろした。俺は次こんなことが起きないよをにと、風呂の存在と風呂の場所について詳しくキュクルに教えた。
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6月6日魔物研究所・二月寝室
(今日はいろんなことがあったなー・・・キュクルもいい子だしやっていけそうかな!)
キュクル風呂事件のあとキュクルとテレビを見ていたが、いい時間になったので寝る事にした。俺は明日はどんな生活がまっているかワクワクしながら眠りに落ちていった。
―――キィィ
「zzzzzzzz」
二月の寝室のドアが開く音が聞こえる
「今日は楽しかったですぅ。でもごめんなさいですぅ・・・・・・ッ」
キュクルは腕を上げ二月の顔に振り落とした。
「にゃむにゃむzzz」
―――ズンッッッッ!!
「なんだなんだ!!」
「外したですぅ!!」
寝返りをうったおかげで頬を切るだけですんだ。
「何をしてるんだキュクル!!」
キュクルのいきなりの行動に動揺を隠せない俺は布団から飛び退いた。
「見られたからにはもう引き返せないですぅ・・・ごめんなさいですぅ、おとなしく失踪してくださいですぅ」
キュクルの前任の研究員の話が頭によぎった。キュクルは腕を振り上げこちらに向かってくる。
(やばいどうしたらいい!!そうだ強い光!!)
俺は布団の横に置いてあったルーペを手に掴んだ。
「スキャン!!」
ブブーーン
ルーペの強い青色の光が部屋を照らした。
「眩しいですぅぅぅ!?」
―――パリーン
キュクルは殴る勢いを殺すことができないまま窓にぶつかる。
「ヤバッ!!」
寝室は一軒家の2階でベランダは修繕していなかったのだ。俺は無我夢中になり窓から飛び出しキュクルを抱き寄せる。
俺とキュクルの体が一瞬の浮遊感のあと・・・・・・・・・・・落ちる。
―――ドムッ
「ガッハッ!!」
口から血が出ている。
(内臓いっちゃったかな?)
俺はうまいことキュクルのクッションになったらしい。
「だ、大丈夫かキュクル?」
キュクルが胸の中で動かないのが心配になり声をかける。
「うぅぅぅぅなんでですぅぅぅぅなんでなんですかぁぁぁぁ」
「大丈夫か!どこか痛いとこでもあるか?」
いきなり泣き出すキュクルに戸惑う俺、
「大丈夫じゃないのはお前ですぅぅヒックッぅぅぅなんでヒックッ助けたんですかーー」
「無我夢中でね」
キュクルは涙目でこっちを見てくる。
「キュクルはどうしてこんなことしたんだ?」
するとキュクルは今日までにどんなことがあったか話しだした。
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1年前4月4日日本亀裂前
「人間ごときがあああ!!!」
―――タタタタタタン!!
―――ドーーーーーン!!
そこは戦場だった。
「キュクル!!このキャンプまで人間が攻めてきた!!一時撤退だ亀裂まで走るぞ!!」
パパが包帯を持っている僕の腕を掴んだ。
「でも僕は衛生兵だから最後まで残らないといけないですぅ・・・・」
「そんなの知るか!!娘を死なせられん!!亀裂はあと10分でしまってしまう!」
「えっ!じゃあこの戦いは私たちの負けなのですかぁ!!」
亀裂が閉まると言う事はこの世界での戦争をやめ撤退する、つまり負けを意味した。
「違う一時撤退だ!!手を引けるものなら引きたいが戦士が死にすぎた・・・・上のやつらは手を引くに引けんのだろ」
「そっか・・・」
「こんなとこで無駄話してる場合ではない!亀裂か閉まる前に行くぞ!!」
僕はパパに腕を引かれるがままについていった。
―――タタタタタタン!タタタタタタン!
戦場の中をかける僕たち、戦場では空飛ぶ球が戦友たちの体を貫いていた。
「おらどけどけ!!小虫風情が邪魔だ!!」
パパは手に持っている棍棒で人間をなぎ倒してゆく。
「あとちょっとだ!!頑張れキュクル!!」
「うんですぅ!!」
亀裂まであと約10m助かったと思ったしかし、
「魔物が来たぞ!一斉に構えっ!!」
5人くらいの人間が空飛ぶ球が出る筒をこっちに向けていた。
「ってぇぇぇぇぇぇ!!」
―――タタタタタタタタタタタタタタタタタン!
―――タタタタタタタタタタタタタタタタタン!
―――タタタタタタタタタタタタタタタタタン!
―――タタタタタタタタタタタタタタタタタン!
―――タタタタタタタタタタタタタタタタタン!
「ヌンッ!!!」
パパが僕の前で大の字になった。
「パパッ!!」
空飛ぶ球は貫通はしないがパパの体を傷つけていく。
「そこをどけえええええええええええ!!」
棍棒を人間に向かって投げた。
「うわああああああ」
「ぐはっ」
人間二人に当たり攻撃の手が一時的に止む。
「死ねえええええ!!」
パパはその隙を逃さず人間のもとへ走り人間を千切る。
ガガガガガガガガ・・・・・・ズンッッ!!
亀裂の閉まる音が聞こえる。
「キュ・・クルぅ・・・・大丈夫か?」
パパは大変なのは自分なのに僕に声をかけてくる。
「大丈夫じゃないのはパパですぅぅぅヒックッもうボロボロですぅ!!」
「そう泣くなぁ、いいじゃないか!お前が無事なんだから。」
パパは僕の頭に手を載せ微笑みかけてくれる。
「笑えキュクル!!どんな絶望の中でも!!どんな最低な時でも!!地べた這いずって、生きて、そして笑え!!そうすらまた明日の日が望める」
「そんなん無理ですぅ」
「これが最後なんだ・・俺の宝物の輝きを・・・お前の笑顔を見せてくれ・・・・」
僕は溢れ出る涙を押さえ笑った。これまでこんなに頬を上げたことはないんじゃないかというくらい上げた。パパの死なんかなかったかのように。
「ああぁ・・眩しいなぁ・・・」
パパの体は光を放ちボロボロに消えていく。そこに残るのは、パパのつけていた腰巻だけだった。
「こんなとこに魔物がいます!!どうしますか?」
「上の命令だ拘束しろ。」
そのあと僕は人間につかまり研究所に送られる。送られた先の研究員を拘束し催眠術を掛け別人とさせ暮らさせた。そのあと研究所を出て暮らしているとこを発見され捕まった。
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6月7日魔物研究所前
「大変だったな」
俺はキュクルの小さな肩を強く抱いた。
「優しくするなですぅ!!僕はぁ!僕はぁ!」
「二月君にひどいことしちゃったんだもん♥」
「「えっ」」
いきなりの二人以外の声に驚き、声のする方を見るとそこには遠藤立っていた。
(こんなに近くまで来ていたのに全然気が付かなかった。)
「こんばんわ遠藤さん。なぜこんな夜更けに?」
なぜこのタイミングで遠藤が来るのか俺には理解できなかった。
「二月君の顔が見たくてね~♥」
遠藤は嘘だとしか思えないことを平然とほざいた。
「あれれぇ二月くーん?怪我してるじゃないのぉ!!」
(わざとらしいなクソッ)
遠藤は俺の上に乗っかっているキュクルの首根っこを持ち上げた。
「お前がやったのか214号」
遠藤の目が淀む。俺は遠藤からキュクルを引っ張り抱き寄せた。
「214号じゃない!!キュクルだ!!それにこの傷はさっき転んだんだよ!」
「ふーん、じゃあなんで君たちがここにいてぇ、君のベランダあんなにグッチャグチャなの?」
何かを言おうとするキュクルの口を押さえる。
「キュクルと部屋でお話をしてたら目眩がして窓から落ちたんだ。それをキュクルが助けようとして一緒に落ちたんだ!!」
遠藤は俺の顔を見、
「突っ込みどころ満載だけど今は見逃してあげる」
キュクルの顔を見、
「次はないぞ」
と言って森を出て行った。
「なんで助けたのですかぁ?」
キュクルは大きな目を腫らしながらこっちを見た。
「まだ会って1日だけど君が大好きだから助けた・・・・じゃダメかな?」
俺の言葉にキュクルは頬を赤らめるとそっぽを向いた。
「ダーリンは馬鹿ですぅ」
「なぜダーリン!?キュクルどうしカハッッ!!」
(そういや俺怪我してたじゃん)
―――パタッ
「ダーリイイイイン!!」
俺はダーリンという言葉を最後に聞き意識を失くした。
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6月7日魔物研究所・二月寝室
―――ピヨピヨピヨピーーーーーー
「ん?ここは俺の部屋か?」
俺はベタな朝の雀のさえずりとともに起きた。
「キュクルはっイテッ!」
(包帯?)
俺の体には包帯が巻かれていた。
「起きたですかぁ?よかったですぅ!」
一緒の布団にキュクルも入っていたらしい。キュクルはよっぽど嬉しかったのか俺に抱きつく。
「イテテテテテテテテッ!!」
「ごめんですぅ」
俺が怪我をしていることを思いだし離れる。
「この包帯はキュクルがやったのか?」
「はいですぅ!僕衛生兵でしたから!!」
キュクルは自分の胸をババンと叩いた。
「ダーリンが無事で良かったですぅ」
「そういやなんでダーリンなんだ?」
俺の言葉にキュクルは頬を赤らめると、
「あんな愛の言葉を言われたらオッケーしちゃうじゃないですかぁ!もう恥ずかしいですぅ!!」
そんなこと言ったような言ってないような曖昧だ。
「これからは仲良く愛の巣で暮らすですぅ」
「そら楽しそうだ」
俺はキュクルとの生活に少しの不安と大きな期待を感じながら、もうひと眠りすることにした。