1.日常×地球≠非日常×異世界 ~日常にさようなら~
どうも地球の皆さん、はじめまして。
いかがお過ごしでしょうか。
わたくし 藤宮 美咲 と申します。
目下、居候中の身である私は『ミーシャ』なんぞと呼ばれております。
まるで猫のような呼び名は現状当たらずとも遠からず、といったとこですが。
ざっとですが私という人間を紹介しておきましょう。
朝はけたたましく鳴り響く目覚ましを叩き潰すかのごとく平手打ちを繰り出すことで止め、
二度寝という幸せの世界へ旅立ち、勿論その後は言わずもがな。
朝ごはんを食べる暇があれば寝ていたいなんて女は化粧の時間も短い。
仕度もそこそこに家を飛び出し電車に駆け込む。
もっと早く家を出れば、いやその前にちゃんと目覚ましで起きていれば、
ため息と共に密着しているおっさんの汗の臭い(なぜにここまで匂うほどの汗をすでにかいているのか疑問)に呻くのもいつものこと。
一向改善されることのないルーチィン化された通勤ラッシュという第一の苦行を乗り越えこうして一日は始まる。
仕事が始まれば大量のメールにこまごました仕事を処理し、上司のパソコンの使い方がわからず作業ができない、というしょうもない上にめんどくさい質問を受け(結局最後はこちらが作業全てをやることになる)ようやくお昼。
昼は会社のお局さまたちとの雑談と言う名の私生活の偵察を受け神経を磨耗しつつ終了。
午後は眠気を跳ね飛ばしながら飛び込んできた業務を片付けるが、就業時間を迎えてもすんなり帰れるほど世の中甘くはない。
帰ってきた営業部隊の明日朝一番に持っていくという追加書類を作成し、合コン・飲み会などのお誘い攻撃をすり抜けてやっとこ帰宅。
もちろん残業手当なんてつかないし、一駅手前で降りて歩こうなんてダイエットが流行っているらしいがそんな暇があったら1分1秒でも長く寝させてくれ。
夕食なんてコンビニのお弁当で十分だし、スーパーが開いてる時間に帰ってこれたら僥倖な日々。
週休二日制?どうやら私とは縁が切れて疎遠になって久しい。
私も例に漏れずそんな戦う社会人生活を3年送っておりました。
たかが3年、されど3年。
気付けは25歳、女の曲がり角と言われる歳。
高校時代は油とり紙がなければ生きていけなかったのに今や化粧水を大盤振る舞いでつけねば朝、顔が引きつる日々。
ああ恐ろしい。
まったくどこにでもいるOLで少しでも長く寝たいとか、一日中ダラダラしたいとか、そんな誰しもが一度は願うような夢を抱いておりました。
さらに贅沢を言うなら南国の海の全身エステで磨かれ、寝ていたら食事の用意がされていて、一から十までお世話されたい、なんてね。
大学時代は雑誌の街角のスナップショットを2・3回撮られたこともあり、顔は中の上くらいと自負はしているけれど。
正直昨今茶色に染める子が多い中で黒の長髪ストレートが珍しかったのでは、との見立てをしてるんだけどね。
恋人?ふっ、お一人様万歳な日々ですがなにか?
とまあどこにでもいるたいして珍しくもないふつうのOLだったわけよ。
堅苦しい言葉遣いって疲れるわ。
ちょっと現実逃避でバカンスとかを夢見てはいたけどさあ、だからといって今の状況はどうかと思う。
まあある意味願ったり叶ったりな生活ではあるけれど、ここはいろいろ言いたいコトを飲み込んで夢の楽園休暇を手に入れたと思うとしよう。
しかも無期限、無償。
ただサービスが少々過剰である、ということは言っておこうと思う。