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09.しるばー色

わー。とうとう9話まで来ました!!!

もうちょっとで最終話です。







「……ごめん、聞けない」

「え?」

「だって私たちもう別れたんだよ?

 私には健がいるし、和也だって今幸せなはずだもん」

「アイツは幸せじゃねえよ」

「え、何で」



好きな人と一緒にいられたら幸せなんじゃないの?

私には分からない、分かんないよ和也。

君が何考えてるのか、分かんない。

ちゃんと言葉にして伝えてくれなきゃ私、理解できないのに。

……もしかしたら伝えてないのは私の方?



「アイツのこともう好きじゃねえのか?」 

「……分かんない、和也のことも健のことも……分かんない」

「まあ、決めるのは和泉自身だから俺は何も言わねえ。

 だけど、アイツの苦しみだけは知ってて欲しんだ」

「苦しみ?」


私の幸せとか、心とか。葉月君の言葉聞いたら、崩れるかもしれない。

でも。それでも。私は今。

私の知らない、和也を知りたいと。

そう、思ったんだ。



    *



「2年前アイツ、本気で好きな奴ができたんだ。初恋だった」


初恋……、そんな響きを懐かしく感じた私は、前みたいには戻れないね。

純粋に人を好きになるなんて、思ってた通り簡単なことじゃない。


「名前は、山内咲。和也の事一番に理解してて、2人は付き合ってたんだ。アイツら、本当に幸せそうでさ?

 男の俺でさえ、嫉妬しちまうような。そんな奴らだった。こんな幸せが、永遠に続くと。そう、2人、嫌。

 俺でさえも、信じてた。」


葉月君の瞳は懐かしさで溢れていた、優しそうに夕日を反射させる。


「ある日、風宮凛香っていう名の転校生がやって来た。ソイツはモデルしてるとかで、本当に美人だった。

 性格もすげぇ良いし。理想の彼女、そのものだったんだよな……。

 でも、アイツの狙いは、和也だった。和也を自分の彼氏……物にする為なら、どんな手段だって使った。

 凛香によって来る、阿呆な男子共を虜にして、ついには凛香に憧れる女子も虜にして。

 咲を虐めたんだ。

 あれはもう、虐めのレベルじゃねぇ。立派な殺しだな。悲惨な光景だった。

 ある時には水を頭から掛け。プールに突き落とし、全クラスの黒板に悪口を書き。

 暴行する。毎日続いた。その内咲はどんどん心閉ざしてってさ?引きこもりになったり。

 最後には自殺したんだ。」


「俺や和也は必死になって凛香を止めた。そしたらアイツ、和也が私と付き合ってくれるならって言いやがって。

 仕方なくアイツは咲を裏切った。その事も含めてだった。

 咲が自殺したのは。

 咲が死んでからさ?和也、抜け殻のようになっちまって、女遊びだって普通になって……アイツの心は簡単に壊れた。

 凛香は相変わらず和也に付きまとって、咲の事もまるで反省してなかった。

 そんな凛香に和也マジギレしてさ?何発も何発も殴ってた涙流しながら。

 アイツその時初めて泣いたんだよ。咲が死んでから初めて。

 俺そん時、和也止めらんなくて一緒になって泣いた。

 凛香は。和也を一生付きまとう、そう言って転校してった

 凛香が転校してからも、アイツの心は元には戻んなくて何時しかアイツ笑わなくなったんだ

 笑うこと忘れたただの人形のみてえに何にも考えずに生きてんだ」


「「……」」


「偽りの性格で人とつるんで作り笑いだって、覚えて……罪悪感とか、知らないような人間だったあの頃の和也はな。……そんで、高校生になった

 和泉も知ってる通りアイツ入学式の日道に迷っちまって……そしたら見つけたんだ咲と顔だって似てて、雰囲気だって似てる和泉のことを

 アイツ……和泉と出逢った日俺ん所来てさ、あの頃みたいな自然な笑顔で和泉の事、嬉しそうに話すんだ

 咲と重ね合わせてたのかもしんねぇけど、アイツは和泉を一人の人間として愛してた」


「「……」」


「和泉と出逢ってからの和也は本当に輝いてた2年前に戻ったみたいでさ

 本当に本当に幸せな日々が続くって思ってたのに

 またアイツが転校してきた……ッ」


地面には、雨なんか降ってないのに雫がおちていた。

……なんだ、私たちの涙だ。

頭では冷静に考えてる、外では平気を装っている。

でも涙だけは止らなかった。

涙は、辛いときにだけ流すんじゃない。

人のためを思って流すときも必ずくる。


「んでアイツ和泉が咲のようになっていいのか?って凛香に脅されて

 幸せ手放した。和泉が見た、あのキスだって

 和也の意思じゃない!」


「……」

「お前らが別れた、その時にも。お前らはお互いを想いあってたんだよ」

「想いあってた……?」

「そぅだッ!簡単には持てねえような感情だよ!」

「……っ私、行かなきゃ。ありがとう二人ともっ」


本当の結末はここじゃない。

こんなところで終わらせられない。

だって私はまだ、彼に何も伝えてないんだ。


「ウワッ!!!!」


小さな小石に躓いて、全身から転ぶ。


「ッグッ」


どんなに痛っくったって。

私は起き上がらなきゃいけない。

今すぐにでも。逢いに行かなきゃ。


    *


――ピンポーン、ピンポーン――


急いでチャイムを鳴らす。

私が出した答はもう決まってる。


「玲菜っ?どしたんだよ」

「……健

 ごめんね」

「え?」



私の出した答は……あの人のところへもどること。

前みたいに和也と二人笑い合いたい。

前みたいに……。

だけどごめんなさい。

私は優柔不断なんだ。

いざ健に面と向かうとやっぱり言い出せなくなってしまう。

でも、……私が伝えなきゃ。

ぜったいに後悔する。


「別れよう?」

「嫌だ」

「え」

「俺が、嫌だって言ったらどうする?」

「健は言わないでしょ?」



本当は最初から気づいてた答。

彼は私のわがままを聞いてくれる。

小さいときからいつもそう、自分が損するばっかなのに。

私……知ってるよ?

健が私をからかう時のクセ。

耳をさわるの、右の耳を。

君が今さわってる耳は左?それとも右?


「玲菜が自分自身で決めたんなら、俺は何も言わない」

「……健」

「幸せになれよ?」

「うん」


「さようなら」



さいごの――さようなら――は、声が重なってどっちが言ったのか分からなかった。

それでも一つ感じたこと……、健は私の最高の親友だ。

もう恋人になることはないかもしれない、だけど親友ならいいよね?

……なんて、別れをつげた私の言うことじゃないなんて……分かってる。

だけど、幸せになってほしいって、本気で思った。


健は私の前では強がって、涙を見せたこと、なかったよね?

本当……すごいよ。

だから私が見た今日の雫はきっと私のものなんだ。

きっとそう……。



――ありがとう、そしてさようなら

次回:最終話です。

   

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