07.むらさき色
いよいよ終盤です。
でわ、どぞ。
『俺、和泉のこと好きなんだよね』
『付き合ってくんね?』
『何でだよ、……面白くねえな』
和也と別れてどれくらい日が経ったのだろう。
……ああ、どんなに告白されても私の気持ちは変わらないのに。
きっとみんな私のこと好きじゃない、ただ興味が湧いただけ。和也と付き合ってた私に。
*
「玲菜?ちょっといいか?」
後ろから聞きなれた声がした、幼いころからずっと聞いてた響き。
思えば私は、いつも健と一緒だった。
大切な幼なじみなのに、なのに何で、何で健まで他の男たちと同じようなことするの?
私をなんで好きになっちゃうの?幼なじみなのに。
「だめ?」
「……ううん、いいよ」
いつもそうだ、自分が掘った穴に見事に落ちてく。
私は今でも和也が好きなんだって、伝えなきゃ。
陽炎が並んだ体育館。
少年の手はオレンジ色に染まった、少女は悲しそうな顔をした。
「話って?」
「好きだ」
「……ごめん」
「高梨と、別れたんだろ?それも、アイツの浮気で」
「何で、知ってるの?」
「凛香から聞いた」
「え、何で凛香さん」
「アイツ、言いふらしてるらしぃぜ」
「ごめん、健……もう、私無理かも」
誰でもいい、だから誰か私の隣にいて――…。
私はやっぱり誰かがそばにいてくれなきゃ、怖くて生きていけない。
……苦しいよ、和也。
「待って、玲菜」
そう私の手をひいたかと思えば彼は私を抱き寄せる。
何で……私たち、幼なじみなのに。
私は今でも和也のことが好きなのに。
「やめて健ッ、放して」
「やだ」
「最低ッひどいよ健……」
「俺じゃ、駄目か?」
「え」
幼いころから一緒にいたのに、初めて目にした彼のあの表情。
悲しそうだけど力強い、和也のような表情。
「俺じゃ、お前を支えられないかな」
「た、ける?」
「俺はお前の事、本気で好きなんだ」
頬をかすめた雫はまちがいなく私のものだった。
「でもッ私は和也がッ」
「いぃんだよ!そんな事、お前が高梨を好きでも俺を利用したって、いいんだよ」
「出来ないよ……そんな事」
「じゃぁ、そんな顔するなよ。放っておけねえだろ?」
「……でもッ」
「俺が、お前を惚れさせてやる」
「……絶対?」
「絶対」
*
前に進まなきゃ、私は和也から卒業しなきゃだめだ。
……だから、私は健を好きになりたい。
たとえ彼を利用することになっても、彼なら受け止めてくれる……そんな気がした。
さようなら、和也。
次回:私は、新たな人を愛し、生きてゆく。
その覚悟を持てるような、強い人間になりたい。