special candy 1
こんにちは。
お久しぶりです。
今回は和也視点で、おれんじ色、きみどり色、しろ色、ぴんく色をお贈りします。
では、どぞ。
和也side
きっと最初、出逢ったときから俺は玲菜のことが好きだったのかもしれない。
たとえどんなことが待っていようと俺はいま素直に言える。
――玲菜が好きだ。
*おれんじ色*
眩いほどの光が屋上に佇む二人をつつんだ。
「玲菜?見て?夕日が綺麗」
隣で笑う彼女、……ああ、俺はこんなにも玲菜のことが好きなのに。
「玲菜?月がみるく色だよ」
「そうだね、優しい色」
夕日に向かって投げ入れられる俺の視線は擦り抜けて君だけを見つめてることに、玲菜は気づいてるのだろうか。
「和也?そろそろ戻ろっか、授業始まる」
「……いいよ」
淡々とした拍子で始まった恋はホンキとなる。
*きみどり色*
――ガラガラガラガラ――
教室の扉を開ける。
「高梨ー、遅せぇよ 早く席着け。
和泉もだぞー」
さっそうと怒鳴るのは勿論担任だ。
「「はーい、すいません」」
ダラけた様子で椅子に座る。
授業に遅れるなんて日常茶飯事だ。
「んじゃー、授業続けんぞ」
「んじゃぁこの問題は……よし、高梨解け!」
まったく聞いてなかった数学の授業。
呼ばれたら行かなねえとまた怒鳴られるはめになるからとりあえず黒板に行った。
「「「和也ドンマイ」」」
後ろから聞こえてきたのはクラスの奴らの声と、後ろに振り返ってダチと話する玲菜の声。
小さなカラダのスズメが飛びたった一瞬のうちにも視線は玲菜を追っている。
「どこ見てんだ、はやく解け」
「……るせぇなぁ」
「何だと?」
「……何でもないです」
思わず飛び出た本音はいつも担任の反感をかう。
うんざりだ。
授業なんか抜け出したい衝動にかられる。
めんどくせぇ問題はみんなスルーしてペン回しで時間つぶした。
……あと10分。
所々に散らばった落書き。
自分で見てもヘタクソだ。
「んじゃー授業終わり、日直号令」
「起立礼」
「「「「「ありがとうございましたー」」」」」
窮屈な授業はおわり、みんなそれぞれ散らばっていった。
*しろ色*
玲菜のこと考える、入学式の日のこと思い出す。
咲のこと思い出す。
……ここ最近いろんなこと起こったよな。
玲菜と出逢ったのは入学式の日だった。
「此処、どこだ?」
突如出た溜息に近い声、相変わらずの俺だけど高校に行くのはイヤだった。
咲を失った悲しみだけじゃなくて、いろんなことが重なって何もかもイヤになったんだ。
だけど葉月に説得されて通ってる、高校。
そして今日がその入学式だ。
家の曲がり角を左に曲がった先一人立つ。
見知らぬ家、見知らぬ景色。
……ああ、ここはどこだ。
とりあえず近くにいた同じ制服の子を見つけた。
桜が舞い落ちた一瞬、思わず息をのむ。
……咲?
いや、違う。
咲じゃない、咲に似てる……だけど違う。
迷ってる暇なんかなかったから咄嗟に話しかけた。
「君ランス学園の生徒だよね?新入生でしょ?」
「………えっ?」
「俺も新入生なんだけど、道に迷っちゃって……」
「……?」
「一緒に行ってもいいかな?」
不思議そうな顔した彼女はまるで咲みたいで……馬鹿だな俺は。
無意識に彼女の手を握ってた。
「えっ手?」
慌てて彼女は俺の手を振りほどいた。
「「あっ桜」」
「……綺麗」
「本当、綺麗」
「名前、教えて?」
「えっ?桜の名前?」
「違う違う、君の名前」
「私?……玲菜」
「玲菜か、綺麗な名前だな」
「そんな事ないよ、君は?」
「俺は……和也」
「和也……?君こそ綺麗な名前」
淡々拍子で会話が進んでゆく。
秒針が早くなったかのように、時間は過ぎ去っていった。
「初めて……」
「えっ?」
「初めて綺麗って言われた、今まで格好良いとしか言われた事なかったから」
「そうなの?綺麗なんだけどな……」
「……ありがとう玲菜」
無意識にとびだしたのは素直な言葉だった。
*ぴんく色*
あの日から何日が経ったのか、自分でも分からなくなるような毎日がつづいた。
ただ一人屋上にいた。
なぁ咲……?
俺好きなやつができたんだ。
性格は咲と違うけど、優しくて……似てるんだよ、咲と。
俺幸せになっちゃいけねえって分かってんだ。
だけど、どうしても止められねぇんだよ。
呟いたら真夏だというのに涼風がふいた。
まるで咲が俺の背中を押したみたいに感じた。
勘違いか?
だけど勘違いでもいい、今はそう信じてたい。
ふと下を見下ろした。
そこには今一番逢いたい人がいた。
前を向く、夕日が綺麗だ。
自分でも驚くような速さで彼女のもとへと走る。
距離はそんな近くないはずなのに、すぐ近くにいるように感じた。
「玲菜――…!」
「……和也、どうしたの?」
「玲菜っ、屋上行こっ」
彼女の返事待たず、手を引いて屋上へと連れてゆく。
さっきみたいな風が俺たち二人をくすぐった。
この時間が永遠になってくれればどんなにいいだろう。
「はぁっはぁっどっどうしたの?」
「嫌だった?」
「嫌じゃないけど、」
「見せたかったんだ
この景色」
「へっ……?」
二人の視線に映るのは陽炎を映し出す夕日だ。
「綺麗だね」
「――…だろ?俺、玲菜と一緒に見たかったんだ」
「えっ私?」
隣にいても分かるほど、彼女の頬はピンクに染まってた。
イジワルげに笑う俺もか?
「玲菜、顔赤いって」
「えっ本当?」
「んな顔すんなよ、照れる」
言ったが最後。
彼女に軽くキスをした。
あー。長かった。
ここまで読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。
和也の視点、どうだったでしょうか。
次回はあか色、みず色、むらさき色をお贈りしたいと思っております。
special candy は、三部に分けます。
それで、最後にはその後をお贈りいたします。
皆様、どうぞこれからもよろしくお願いいたします。




