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10.みるく色

いよいよ最終話です。

どぞ。





目に留まったのは、とくべつに珍しくもない普通の景色だった。

いくつもの陽炎をうむオレンジ色の夕日。

そんな夕日を反射させるようなラフなきみどりのベンチ。

白に染まったのは紛れもない私たちの関係。

頬にちりばめられた懐かしいピンク色の桜。

とたんに派手な赤色がセカイを包んだ。

時折零れ落ちるのは水色の涙だ。

むらさき色の雲が傾れこんだのは、妖しい雲行きのサイン。

ああ、このまま時間が止ってほしいと思ったのは透明に透き通った河原。

瞬くまに空にはシルバーの星が煌いていた。


ねぇ、一色足らないよ?


私が求めていたのはどんな色よりも、なくしちゃった色だ。

あの色のもとへと走ってゆけるのなら、私は臆病からも卒業できる。

一歩いっぽ、駆け抜けてゆく風は生ぬるくなくてただあの人の香りを思い出させた。



    *



――ピンポンピンポン――


息もできないくらい緊張する。

震える指先で掠めたラインを追って、臆病からサヨウナラ。



――ガチャ――


臆病にサヨナラまであと10秒。

……5秒。

淡々と過ぎ去っていった時間は待ってくれなくて、困った顔した私を作り出す。


「……玲菜?」


彼の声が私の胸へとひびいたら、さっきまでの冷静さはすぐに消えて、頭がまっしろになった。

だけど私は伝えなきゃいけないことがあるんだ。


「……和也話があるの」

「俺ら、別れたよな?」


この冷たい視線の先に私は映ってますか?

嘘でもいいから、私を見てほしい。

話を聞いてほしい。

私はもう臆病じゃないんだ。


「和也!私今でも、和也のこと好きです」

「帰ってくれね?」

「え」

「だから帰って」


あっさりと終わってしまった恋にハッピーエンドはないの?

やっぱり恋は、そう簡単には叶えられない。

だからこそ人は恋して、めいっぱい泣いて。さいごには笑えるようになるんだ。


「待って!私知ってるもん」

「え?」

「和也の過去知ってるよ」

「何で……なんで」


明らかに動揺する彼の瞳は初めて出逢ったときのあの悲しそうな顔だった。


「葉月君に聞いた」

「あいつ……」

「和也はなんでそんなに辛そうな顔するの?」

「それは……、分かるだろ?俺は今でも――…」

「私のため?

 私ね、和也と離れ離れになることが一番辛い」


彼が言おうとした言葉はきっと私が一番知ってる。


「玲菜――…」

「……」

「ごめん玲菜」

「……」

「俺さ玲菜のこと咲と重ねてみてた」

「……うん」

「だけど玲菜のこと知ってくうちに咲とは関係なく、ほんきで好きになったんだ」

「……」

「だから俺どうしても玲菜守りたいんだよ」


かぼそくひびいた彼の声。

彼の気持ちをはじめて知った。

……ねぇ和也、私は……和也を傷つけてまで守られたくないんだよ。


「今、和也は幸せ?」

「え」

「素直に笑える?」


黙り込んでしまった彼、続ける私。

――一緒に乗り越えられないの?


「私はね幸せだよ」

「え」

「だってこんなに和也に想ってもらってるんだよ?

 これ以上私のなにを守るっていうの?」

「玲菜……」

「私はなんと言われようと和也が好き

 健じゃだめなの、和也じゃなきゃだめなの」

「俺やっぱ玲菜のことすげえ好きだ」

「……私もだよ?」


素直に想ったことを伝えてみた。

おねがい、届け私の想い。


「だけどこんな弱い自分が嫌なんだ」

「和也は弱くなんかない」

「え?」

「だって和也は私にとって格好良いもん

 いつでも守ってくれる、ヒーローみたいなんだもん」

「……ありがとな、玲菜……

 俺、どんなに玲菜忘れようとしても忘れられねぇよ

 もう一度俺と付き合ってくれませんか?」


泣きじゃくりながら伝えた気持ち、ちゃんと彼に届いてた。

深呼吸して次の言葉へ。


「はい」


    *


見て和也?

月がきれいだ。

ちゃんとみるく色になってる。

ずっと求めてた私の大切な色はこれからもこれまでも、ずっとずっと……この色だ。



                        fin.



 

皆様。今まで本当にありがとうございました。

この物語を楽しみにしてくださった皆様。

気さくに感想やメッセージをくださったなみだうさぎさん。

お気に入り小説に登録してくださった皆様。

そして、この物語を最後まで読んでくださった読者様。


皆様に全ての感謝を。


今まで本当にありがとうございました!


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