第40話〜エピローグ
第40話 開封された保護メール
●須藤ゆりかの手記より
森田さんのコートを借りて私は帰宅した。
彼のコートはとても暖かかった。
少しだけカレー臭がしたけど、うちのパパの加齢臭とは違う。
カレー臭と加齢臭・・。ふと自分の思いつきでこんなこと書いてしまい、私は部屋でひとりツボにハマってウケていた。
しばらくバカみたいに笑っていたけど、徐々に寂しさも増してきた。
でも笑うのをやめたら孤独感が襲って来そうで怖い。そんな不安定な精神状態だった。
そのときちょうど、着信メールがあった。翔子からだ。私を心配して様子を聞いている。
私は簡単に、『元気にやってるから心配しなくていいよ。』と返信した。
と同時に、あることを思い出した。
そうだった・・森田さんからのメール、まだ読んでなかった。。。
彼のメールは保護設定になっているままだった。
この日記には書かなかったけど、以前森田さんから来た着信メールは、1通目から10分程遅れて2通届いていた。
さっき彼に偶然会わなかったら、きっとこのメールを読む気にはならなかったと思う。
私は、ようやくツボにハマった笑いから落ち着くと、1通目の保護メールを開いた。
●森田さんのメールより
森田です。お久しぶりです。須藤さんと会えなくなってから僕の毎日が空虚です。
どうしても忘れられません。こないだ偶然に、須藤さんが別な男の人と一緒にいるところを見てしまいました。
きっと新しい彼氏なんでしょうね。そのとき、僕の出る幕は完全になくなったと思いました。
だから何度も忘れようと思いましたが、どうしても無理なんです。未練がましい男って嫌われるのはわかってます。
僕はすごく女々しい男です。このメールが削除されても仕方ありません。
でもこんな僕でも、ひとつだけ納得できないでいることがあります。
それは須藤さんが僕の元から去って行った理由が、暗示によるものだということです。
僕と一緒にいた時間が全てウソだと聞いたときはショックで呆然となりました。
でも僕はそんなこと想像もできないし考えられません。
須藤さんは会うたびいつも優しかった。僕が全身泥だらけになったとき//
???えっ?・・・ここで森田さんのメールは終わっていた。
字数制限でも超えたのかしら?そんなことは・・
すぐに私は次のメールを開いてみる。
●森田さんの2通目のメールより
森田です。すみません。携帯の操作間違えて、途中で送信ボタン押しちゃいました。
(やっぱりそうだと思った・・森田さんらしい。(~_~;) )
さっきの続き書きます。
須藤さんは僕が全身泥だらけになったとき、丁寧にふいてくれたり、すぐに着る物も用意してくれました。
須藤さんの元彼と3人で食事をしたとき、小バカにされた僕をかばってパスタを下品に食べてくれましたよね。
僕の家に来たときは、一緒に同じ箸でぺヤングを食べあっこしてくれました。
僕が不審者と間違われて警察に連行されたときも、必死に説明してくれて誤解を解いてくれました。
みんなでテニスをしてて、僕が後頭部にスマッシュを受けたとき、須藤さんは涙目で心配してくれました。
そして・・須藤さんと別れてから1度だけ偶然、回転寿司屋でバッタリ会いましたよね。
そのときだって、財布をなくして困っていた僕にお金を差し出してくれました。
須藤さんとの日々を忘れようと思っても、逆に次々とこんな思い出ばかりが蘇ってきてどうしようもありません。
この優しさは決して暗示で起きたことなんかじゃなくて、須藤さんの本当の優しさ、心の美しさから起きたことだと思います。
僕はこんなずんぐりむっくりで見た目も悪いブ男ですから、嫌いになったとか、タイプじゃないとか言われたら諦めもつきますが、このままではどうしても煮え切らないのです。
もし、このメールを読んでくれたのなら、一言でいいから返信していただけないでしょうか?
よろしくお願いします。
私はやっぱり森田さんを苦しめていたんだ。
随分ひどい仕打ちをしてしまった。作道さんが私にした行為と同じことを、平気で森田さんにしていたんだわ。。
それにさっき彼と会うまでに返信もしていない。
コートを借りたとき、彼はそのことについては触れなかった。よっぽど聞きたかったはずなのに。。。
森田さんはあたしを気遣ってくれたんだ。自分の言いたいことを押し殺してまでも。
このメールだって、あたしが忘れかけていることまでもこんなに細かく書いている。
私は彼の気持ちを痛感した。
そして今でも、こんなあたしのことを真剣に思ってくれていることも。
第41話 心の確認
●森田卓の手記より
僕はひとり、部屋で考え込んでいた。
あんな寒い中、寂しそうにベンチに座っていた須藤さん。
きっと寒さなんかより悲しさの方が勝っていたんだと思う。
失恋てホント辛いよなぁ・・・
それがわかってたって何もできないでいる僕。
何かしようと思っても気持ちが先走って空回りするかドジるだけ。
僕のおなじみパターンだ。
あーダメだダメだ!僕ってやっぱり未練がましい。。
もう気持ちを切り替えなきゃなんないのに。。
この日記だって、とりとめのないことばかり書いている。
誰に見せるわけでもないから構わないけれど・・・
何か今夜のおかずでも作るかな。。。
めん類ばっかしもいよいよ飽きてきたし。
と言っても僕にできる料理なんて知れている。
冷蔵庫には半端な余りもの野菜がわずかばかり。
カップ麺や袋麺は充実しているのに、なんてザマだ。
僕はなんとかあり合わせで、あったか鍋を作ることにした。
ちょうど99円ショップから一人用鍋を買っていたのが目に付いたからだ。
野菜だけでもあれば、ヘルシー鍋が作れるはずだ!
早速、キッチンに向かう決心をした僕は、野菜を調理し始めた。
そして、水の入った鍋に材料を入れて火をつける。
Σ(´□`)ハゥ・・・そういえばダシがない。。。
味付けはどうすればいいんだ?ええと。。んと。。そうだ!味噌でいいじゃん!
体も暖まるし、味噌鍋だ!うん。でもなんかこれだと普通の味噌汁かな?;^_^A
味噌汁にだってダシはいるし・・ま、ないもんはないんだから仕方ないさ。
そのとき僕の携帯に着信音がした。
僕はすぐにメールを確認する。
あ・・・須藤さんだ。。
僕はためらいもせずに、すかさずメールを開いていた。
彼女のメールにはこう書いてあった。
◎先ほどはちゃんとしたお礼もせずにすみませんでした。
本当に暖かくて助かりました。ありがとうございます。
今、クリーニング屋さんに森田さんのコートを預けたところです。
近いうちにお返ししますので、待ってて下さい。
森田さんにひとつ質問があるのですが聞いて下さい。
森田さんのメールを読んで思ったことです。
実はあなたのメール、先程読んだばかりなのです。
どうしても読む勇気がなかったの。本当にごめんなさい。
それで質問ですが、森田さんが私と初めて出会ってお付き合いしたときの第1印象を教えてもらいたいのです。
あなたは私の優しさが好きだと書いてました。でもそれはやはり、暗示で作られた優しさかもしれません。
ですから、まだその優しさが表現される前の私を思い出してみて下さい。私は嫌な女じゃなかったですか?
ここで須藤さんからのメールが終わった。
僕はちょっと考えてから、頭の中で整理し直して返信する。
◎嫌な女だなんて、全然そんなこと思ってもみませんでした。
第1印象の須藤さんは、抜群にきれいで、あのときの合コンメンバーの中で1番輝いてました。
僕は須藤さんからトイレで声をかけられたとき、それだけで舞い上がってしまいました。
ただ、須藤さんの元彼の慎也さんと食事したとき、正直彼に言われたひとことに度肝を抜かされたことがあります。
あのとき慎也さんはこう言いました。
「いや、この男は普段からモテそうもない。たまたまゆりかがこいつに声をかけたから、幸運だと思って飛びついてきただけなんだろ。もし、ゆりか以外の女がこいつを誘ったとしても、喜んでついて行くはずだ。違うか?おい」
図星でした。須藤さんのルックスだけで有頂天になってました。それは認めます。でもそれはあくまで最初のうちだけです。
須藤さんの優しさ、心の暖かさは、暗示という言葉で済まされるものでは絶対ありません。
僕は生まれて須藤さん以外の女性と付き合ったことはありません。
世の中には素敵な女性もたくさんいるでしょう。性格の良い子もいるでしょう。
でも僕は、須藤さんとの様々なデートがあまりにも強烈で、いくら時間が経っても思い出に変わるまでにはなりそうもありません。
こんな状態で、他の女性と付き合う気持ちにもなれませんし、僕なんかにはもう付き合ってくれる女性なんていないと思います。
長々とすいませんでした。。。
僕は長い返信をしたあと、深いため息をついた。
返事来るかなぁ・・・
少しボーッとしていると、我に返ってハッとした。
しまったぁぁ!鍋が煮詰まっちゃったぁぁ!
僕はすぐに鍋に水を加えて味を整えた。
でも野菜がすでにクタクタになっている。これじゃ食べた気にもならない。
僕は考えた。なんとか食べないと。前はカップ焼きそばでも失敗している。
10分後、ひとり鍋が完成した。
中身はクタクタの野菜に加えて、どん兵衛きつねうどんをスープごと入れてみた。
味噌とミックスされた味でなかなか良いアレンジかもしれない。
てか・・・やっぱり今日も麺類になってしまった。。。;^_^A
早速ひとくちスープを飲んでみる。
結構期待ができそうだけど果たして。。。
ひえー!(◎0◎)しょっぱぁぁぁぁぁぁ!!
すぐさま、お湯を足して薄めたあと、再び食べてみる。
今度は恐る恐る。。。
Σ(´□`)まずぅぅぅ〜〜!!(ノ _ _)ノコケッ!!
ん〜ん。。。いろんな意味で前途多難。。。はぁ・・
第42話 女3人のイヴ
●須藤ゆりかの手記より
「なんか女3人でクリスマスなんて寂しいよねぇ。」
さんざん料理を食べまくっていた翔子が、少し酔っ払いながらそう言った。
「そりゃそうだけどさぁ、こんな大事な日に男がそばにいたら余計気ぃ使うじゃん。」
と、美智代はタバコをふかしながらソファにもたれかかってサバサバした口調で切り返す。
私はその意味がいまいちの飲み込めなくて聞き返す。
「気を使うってどんなこと?彼に対して?」
「当然じゃない。イヴの夜は印象が大事なんだから!こんな大酒飲みで行儀の悪いオヤジみたいなことできないわよ。」
「それって美千代自身のこと言ってるの?w」
「そうよ。あたしはちゃんと自覚症状あるもんw」
「美千代はアネゴ肌だもんね。」
「あたし的には男の前で猫かぶるよっか、洗いざらいホントの自分を知ってもらった方がいいからね。だからイヴとか記念日とか、そういうかしこまったことってできないのよ。」
「そんな窮屈に感じたことないけどな、あたしは。」
「えぇ〜?そんなことないでしょゆりかだって。去年のあんたは前の男に相当気を使ってたわよぉ。」
「・・・・そうだっけ?」
「そうだったじゃん。着て行く服はもちろん、勝負下着から化粧の果てまで。」
「でも決めるまで考えるの楽しかったけどな。」
「そのあとあたしに相談して来たじゃない。どうやったら男を喜ばせるの?とか、どんな振舞いが彼の気持ちを惹きつける?とか。」
「だったっけ?」
「覚えてないの?歩き方やせセクシー目線まで教えてあげたのに!」
「それってなんか、もう遠い過去のよう・・・」
「たかが1年前程度のことを忘れるくらいなら別れて正解だったわ。印象に残らない男だったんでしょ。」
美千代はお酒が入ると毒舌が更に過激になるし、態度もでかくなる。
でもウソは言わない。いつも本音トークで図星発言ばかり。
「だからね、デートなんていくらでも普段できるんだから、クリスマスは女同士で思う存分騒いだ方がいいのよ。ねぇ?翔子!」
「まぁ、十分リラックスはできるけどね。でも外には出れないわ。カップルばかりだもん。」
「あ、翔子はやっぱり男欲しかったんだ?」
「そりゃできればね。でも今年は縁がなかったもん。美千代だってイヴまでに彼できなかったじゃない。」
「別にあたし、イヴまでになんて目標作ってないし。作ろうと思えばできたわよ。今からだってちょっと出会い系にアクセスすれば、すぐに待ち合わせできる男が寄ってくるはずよ。」
「いえ、そういうんじゃなくて・・(~_~;)」
「とにかくあたしはこれでいいの。あんたたちは寂しいのかもしれないけど。」
次になぜか、翔子が私に話題をふってきた。
「ゆりかは慎也に相当気を使ってたもんね。その前の彼にも・・なんて名前だっけ?」
「もういいわよ。その話は。」
「でもさ、今思えば森田と付き合ってたゆりかが1番ふだんのままだったね。」
「え・・?」
美千代もそれに便乗して付け加える。
「そうそう、あのブ男と一緒にいるゆりかって全然気を使ってなかったし、今までで1番笑顔が多かったんじゃない?」
「・・・・・・」
「なんで終わったのかは知らないけどさ、やっぱ顔?あれは耐えられないよね?w」
「違うわ!!」
「美千代!あんまりゆりかをいじめないで。誰にでも色々事情はあるんだから。」
「そっか。。。そうよね。ごめんゆりか。今夜のあたし、酔っぱだから許してぇ〜!」
美千代に悪気がないのはわかっていた。
ある意味、あたしに美千代の性格が少しでも備わっていたらこんなに悩まなくてもいいのに。。。
第43話 In my room again
●森田卓の手記より
ドアにノックの音がした。週末を迎えた土曜の午後。
僕はボーッとしながら日記の更新の内容に悩んでいた。
普段行動しているのならともかく、何もしないで家にいる僕に何が書けるだろう?
妄想の世界を書くわけにもいかず、自分の胸のうちは今までにも日記に記してきた。
これ以上は同じことの繰り返しだ。
一人暮らしを始めてから書き出したこの日記。
自分自身へ気合を入れる意味と、あとで振り返って自分を省みるために始めたことだ。
もう・・書くのやめるかな。。
そう思っていた矢先の訪問客だった。
僕がドアを開けるとそこには須藤さんが立っていた。
あまりの想定外のことに驚いた僕は、気のきいた言葉がすぐに言えなくて、思わず
「い・・いらっしゃいませ。。」
と、わけのわからないセリフを発していた。
「あの・・これ・・以前借りていたコート。クリーニングが出来上がったので持って来ました。」
「あぁ・・そ、それはわざわざすみませんでした。」
「本当にあのときは助かりました。ありがとうございます。」
「いえそんな・・1度あげると言ったのに訂正してしまって・・」
「違いますよ。あたしの方が申し訳なくてどうしても受け取れなかっただけですから。」
外は昼間なのに、曇り空で気温はかなり冷え込んでいた。
「あの・・こんな寒い中わざわざ来てもらっちゃって・・中に入って暖まって行きません・・・よね?」
我ながら今のセリフをこの場面でよく言えたものだと僕は自分に感心した。
須藤さんは少しためらっているようだった。
「や、やっぱり無理・・・ですよね?いえ、別にいいんですけど。。」
「じゃあちょっとだけ。」
「え?ホントにいいんですか?」
「ダメなんですか?」
「いえ、いいんです、いんです(^_^;)ごめんなさい。僕っていつも言葉のやりとりが下手で。」
「それでは少しお邪魔します。」
「外は相当寒いですからね。すぐにコーヒー入れますので。」
そのときピーッピーッという音が部屋に鳴り響いた。
「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lげっ!!!」
ファンヒーターの灯油がなくなったお知らせ音だった。
「しまったぁぁ!灯油タンクのの予備もなくなってるしぃ。。」
「あたし、買って来ましょうか?」
「と、とんでもない!僕が近くのスタンドで買って来ますんで、須藤さんはここでゆっくりしてて下さい。」
「でも・・」
「少し部屋が寒くなりますが、この暖かいコーヒー飲んでて下さい。お湯沸いてますからその。。。」
「はい。自分でできますよw」
「すいません。。ゲストにさせるなんて・・急いで灯油買って戻りますんで。。」
「気をつけて下さいね。道路滑りますよ。」
「は、はい。気をつけますっ!」
と、生返事をしたのがまずかった。
せっかく注意された甲斐もなく、全力疾走した僕は、凍った雪の地面に見事足を取られ、体勢が前のめりのヘッドスライディング状態で、20メートルは滑りまくってしまった。
幸い、ちょうど起き上がった場所がスタンドの前だったが、年配の従業員らしきおじさんがあっけにとられた顔で僕を見ていた。
「と、灯油下さいっ!!ε- (^、^; ふぅ」
「いいけどあんた、帰りは滑り込みなさんなよ。灯油がどうなっても知らんで。」
「は、はいっ;^_^A アセアセ・・・」
「で、タンクは?」
「ガ━━ΣΣ(゜Д゜;)━━ン!!忘れた。。。」
「((ノ_ω_)ノバタ」
「取って来ます!」
「にいちゃん、ちょい待ち!!ウチにタンク売ってるから買えばいいじゃろ。」
「あ、そうなんですか。それなら・・少し痛い出費だけど買おうかな。人も待たせてるし。。」
「ほい、1個3980円。」
「高っ!!」
「ウチはディスカウントの店じゃないねんで。」
「はい・・じゃそれで。。(足元見られた・・)」
●須藤ゆりかの手記より
夕方、森田さんの家から帰宅した。
今日の出来事をじっくり考えて手記にしたためてみる。
彼が灯油を買いに行ってる間、私はコーヒーを飲みながら彼の部屋をゆっくり見回しながら思いにふけっていた。
懐かしいような気もするけど・・遠い過去の出来事に思えて冷静に見てしまう。
そんな中、ふと森田さんの机の上を見ると、彼の日記があるのに驚いた。
森田さんも日記をつけてたなんて。。。信じられない。
私はいけないことと知りながら、どうしてもこの日記を開かずにはいられなかった。
私はどれほど彼を傷つけてしまったんだろう?
彼はどんな気持ちで今まで過ごしてきたんだろう?
そして私と付き合っていたころの気持ちは?
そう思うと私は知らず知らずのうちに彼の日記に目を通していた。
15分か、20分の間、私はずっと読み続けていた。
私と付き合い始めたときの日付からずっと。。
森田さんがこんなに几帳面だとは思わなかった。
彼の気持ちが本当に細かく繊細に書かれている。
数々の思い出が私の日記とダブっていた。
デートの待ち合わせに遅れた理由とか、デートでの失敗談。
もちろん、楽しかったことやそのときの気持ち。
慎也と3人で話し合いをしたこと。
そして私の家の玄関前で、作道さんとのキスを目撃していたことまで。
彼の私への一途な気持ちは十分伝わった。それはそれで嬉しいことだけど。。
彼の日記の中の私は結構大胆だったかもしれない。
暗示にかかっていなかったら、こんな大胆に人をリードする女なのかな?あたしって。
でもこんなに思ってくれる人がいるなんて・・・
あたしの気持ちひとつで彼が救えるのかしら?
いえ・・人を救うためじゃなくて、あたしの真の気持ちは。。。
今の真の気持ちは。。。。。
そのとき、ちょうど森田さんが帰って来た。
「すいませぇん。遅くなりましたぁ・・・」
「コーヒーおいしかったです。ありがとう。あたし、これで帰ります。」
「Σ('◇'*エェッ!?灯油すぐ入れますから。。」
「あたしは十分温まりましたよ。灯油は森田さんのために必要なものでしょ。」
「は、はぁ・・」
「森田さん、あたしでも・・・いいの?」
「え?」
「いえ・・何でもないです。ごめんなさい。お邪魔しました。」
「あの・・僕の思いはメールした通りですから。。。」
私は振り返って答えた。
「そう・・でも森田さんはあたしの全部をまだ知らない。それを知っても同じ気持ちでいれるかしら?」
「・・・どういうことでしょう・・か?」
「それは・・」
ここからの話はまだこの手記には書く気になれない。
でも森田さんは、この話をあたしから聞いても全く動じなかった。
私の気持ち・・不安がつきまとっていたこの思いが安心感に変わったのには間違いない。
あとはあたしの決断次第。。。
第44話 奇跡
●森田卓の手記より
年も明けた新年早々、このとき僕は合コンの会場に来ていた。
僕の意思に関係なく、例によって人数合わせのために呼ばれただけ。
ただ合コンに参加するのは本当に久しぶりだった。
知らない女の子たちと差し向かえで座るだけでも緊張の極地だ。
女性陣の視線が僕に突き刺さる。
とてもじゃないけどまともに目を合わすことなんてできない。
僕はうつむき加減で堅くなっていると、正面に座っている女の子が、口に手を当てながら隣の席の子とかすかな囁き声で話しているのが聞こえた。
「アタシの前の人、すごい油ギッシュだよね。」
「うん。てかオイリー?チビで小デブで老け顔で、なんかキモイ・・」
あぁ・・やっぱりボロクソ言われてるよ。。。
もう早く帰りたいよ。。。断れば良かった。。
と思っているだけで、いつも断れないでいる僕がいた。
結局のところ、女性陣の一人が急な用事で欠席になったため、男性陣がひとり多くなってしまった。
そうなると、当然溢れるのはこの僕だろうし、帰ろうとしたが、なぜか同僚に止められた。
「森田、前にも言ったはずだ!お前がいるから俺たちが引き立つんだ。帰んなよ!」
相変わらずひどい同僚だ。数が合わないんだから僕なんていなくてもいいのに。。。
その後の自己紹介でも僕は悲惨だった。
「も、森田卓と言います。す・・好きな食べ物はカップめん。。特に好きなのはぺヤング。
アハ(//▽//)」
「シーーーーーーーーーーーーーーーーーン・・・」
誰にも何のリアクションもされず、すぐに乾杯の音頭となった。
僕は完全に浮いていた。その後も他の人の話す話題にもついて行けず、合コンの終始はほとんど聞き役だった。
わけがわからない話なのに相槌を打ったりしても、話す側の女性たちも同僚の男たちも僕の方には全く見向きもしなかった。
合コンもある程度時間が経過すると、お酒も入っているせいか、トイレに行きたくなるものだ。
女性陣はひとりがトイレに立ち上がると、「あたしも!」「じゃあたしも!」というように、全員で席を外して行った。
たぶん、向こうで僕たち男性人の品定めか、意見交換でもしてるのだろう。
女性陣がいない間、僕の同僚たちも次の作戦を練っている。
「おい、そろそろ2次会行くぞ!今日はどの子もまぁまぁ可愛い子じゃん。うまくいったらお持ち帰りできるかもよ?」
「だな。今日の女の子、みんな飲みっぷりいいし、もう1歩詰めると落とせるかもな!」
「じゃ例のクラブ行くか?もっと酔わせて最後にチークを踊るころには。。フフフ・・・」
「おう!2次会はムードたっぷりに攻めようぜ!」
「森田、お前も来るんだぞ!」
「Σ('◇'*エェッ!?僕はここで勘弁してよぉ。人数も合わないんだし。」
「バカ!お前の勉強のためなんだぞ!ダンスのひとつも覚えて女の子をびっくりさせてやれよ。」
「僕と踊ってくれる子なんてどうせいないし。」
「いや、わからんぞ。みんな酔っぱらってるし、お前でもいい男に見えてるかもw」
「(≧∇≦)ぶぁっはっはっ!!」
「きゃははは(T▽T)ノ_彡☆ばんばん!」
結局ここまで侮辱されてるのに、なぜか一緒に2次会会場に向かって歩いている僕がいた。
もうすでにみんなはペアを作って、手を握りながら歩道を歩いている。
僕は1番後ろからトボトボ追いかけているだけである。
僕自身どうしてここまで付き合うのかわからない。
ただあれ以来、須藤さんから連絡がまた来なくなった。
彼女から多少衝撃的なことを聞いたけど、僕の気持ちにたじろぎはなかった。
それなのに・・・
こんな優柔不断な行動も僕の不安な心の現われかもしれない。
2次会のクラブでは、同僚たちが一変、ダンディーな紳士のように変貌していた。
会話でもテンションの高いバカ笑いなどせず、クールに笑っている。
僕から見れば、逆に芝居じみてておかしく見えるんだけど、そのことはもちろん黙っていた。
それにムードに弱い女の子たちも何気にトロ〜ンとした気分になってきたようだ。
「おっ!そろそろチークタイムだな。森田も踊れよ。」
「え?で、でも・・誰と・・?」
「それはアミダクジで決めよう。」
すると、女性陣の方から意見が出た。
「さっきここに来たペアでいいんじゃないの?」
「それはそうなんだけど、森田の顔も立ててくれないかな?せっかく来たんだし、こいつのためにもダンスの経験くらいしとかなきゃさ。」
「工エエェェ(´д`)ェェエエ工」と、女性陣一同から。
僕ってそんなにキモイ存在なのか。。。。ショボーン。。。
「森田からもお願いしろよ。どうかこのモテナイ歴27年の森田に愛の手を・・・どうかヨロシク!」
「そ、そうよね。不公平は良くないものね。いいわよ。じゃみんなでアミダクジね!」
「当たりが出た人ひとりが森田とチークしてやって下さい。」
なんか僕自身がかなり哀れだった。クジで僕の相手を決めるなんて。。
不公平だと思うんだったら、率先して「アタシがお相手します!」くらい言えないもんなのか?
そうこうしてるうちにアミダクジは進んで行った。僕に当たらなかった女の子は、
「あ〜良かったぁ。」と安堵のため息。
「みどり助かったわね!」
「次アタシ、ドキドキするぅ〜怖いよぉ!」
僕って一体何者だと思われてるんだろう?
「(≧∇≦)キャーーーー!!当たっっちゃったぁぁぁ!!」
「きゃははは(T▽T)ノ_彡☆ばんばん!」
「キャハハo(>▽<o)(o>▽<)oキャハハ!留美当たり〜!」
「やだ!もぉぉぉぉぉ!!」
非常に不本意なことだけど、僕が原因で盛り上がったのはこれが初めてだった。
同僚が留美という女性に話しかける。
「申し訳ないけど、留美さん森田をヨロシク!無理にとは言わないけど。」
「やっぱ無理よアタシには。」
「そこをなんとか。」
「留美が負けたんだからさぁ。」
「そうそう、運のつきよ。」
「でもさぁ、アタシ思うんだけど、せっかく楽しいひとときを過ごす時間なのに、どうして自分の意思に反することをしなきゃなんないの?全然意味わかんない!」
「そりゃそうだけど・・・」
「でしょう?そのための合コンでしょ?ボランティアじゃないのよ?」
僕は煮えたぎる心を必死に耐えていた。なぜここまで言われなきゃなんない?
確かに僕はミテクレは悪いさ。でも目の前で人にこうもはっきり言うもんなのか?
僕がお前らに何をした?迷惑でもかけたか!!?
僕は両手の拳を握り締めてテーブルの下の膝の上に置いていた。
腕がもう震えている。顔が紅潮して自分で涙目なのがはっきりわかった。
同僚が留美の機嫌を取り始める。
「よく考えたらそうですよね。留美ちゃんの言う通りだ。僕が間違ってましたよ。ごめんなさい。もういいです。」
「ホント?あ〜良かったぁ。 (o^-^o) ウフッ」
「というわけだ。森田、残念だが諦めろ。」
「ぼ・・僕は・・」
「ん?どした森田?なんだその顔は?文句でもあんのか?」
「どこまで僕を・・」
「お前に魅力がないからこうなるだけなんだぞ。人のせいにすんなよな!」
僕は同僚に殺意を持った。このままワイングラスを同僚の顔にブチ当ててやろうと真剣に思った。
もう我慢できない。僕はグラスを手に取ろうとテーブルの下から拳を出そうとしたまさにそのとき!!
後ろから優しく肩を叩く人がいた。すぐに振り返ると。。。
「私と一緒に踊ってくれません?森田さん。(*'‐'*)」
「す、すすすす須藤さんっ!!」
僕はあまりの衝撃に放心状態になった。
そんな僕を彼女は優しく微笑んで手を取ってくれた。
「ど・・どうしてここが・・?」
「美千代が別グループの合コンでここに来ててね。教えてくれたの。ほらあそこ。」
僕が彼女の示した方を見ると、確かに美千代さんが少し離れた席でこちらに向かってVサインをしていた。
「ほら、もう曲が始まってるわ。アタシが教えてあげるから踊りましょ。ね!」
「は、はいっ!」
この光景を見ていた同僚たちみんながポカンと口を開けたまま見ていた。
「すっげぇ美人じゃん。。」
「てか、半年前に合コンしたときの超美人じゃん。俺たちがモーションかけたのに全員撃沈した・・」
「あ〜思い出した!そうそう、俺あれ以来、1ヶ月は彼女の顔が忘れられなくて頭から消えなかったぞ。」
「でもほんと綺麗な人ね。。。」
「うん。女優さんみたい。。」
同姓までもが須藤さんの第1印象から絶賛している。
僕はさっきまでのブチ切れそうな気持ちはどこへやら。今はまるで夢心地で彼女と踊っていた。
「森田、お前・・その人を知り合い・・なのか?」
「え・・?えと・・その。。」
「アタシは森田さんの彼女ですっ!それがどうしたんですか?」
「ガ━━ΣΣ(゜Д゜;)━━ン!!そ・・そんなバカな。。」
一同、更に仰天して体が固まったまま口も利けなくなっていた。
そんな中、須藤さんは僕の耳元で囁いた。
「森田さん、今までごめんね。私、もう迷わないから。」
「須藤さん。。僕・・僕。。。」
今度はさっきとは全く別な意味の涙が溢れてきた。
すごく嬉しくて嬉しくてたまらない涙。感動の涙。僕の人生で1番の涙。
そして彼女の微笑み。それが今は満面の笑顔に変わっている。
今まででも見たことのない彼女の最高の笑顔だ。
「森田さん?」
「は、はい?」
「アタシの足踏んでる。。(^_^;)」
「うわっ!!ごめんなさぁぁい。」
第45話(最終話) 突然の彼女たち
●須藤ゆりかの手記より
私は今、自分の部屋でこの日記を書こうとしている。
昨晩は私にとって、一生記憶から消えることのない日になったと思う。
森田さんがあんなに感激してくれて・・・私もつい貰い泣きしてしまった。
それに私自身、とても幸せな気分になれた。
私を心から思ってくれる人がいる。そう確信できるだけで胸が熱くなる。
森田さん、ダンスはできなかったけど、一緒に手を取り合って彼の瞳を見たとき、その澄んだ目に安堵感を覚えた私。
彼はウソのつけない人だし、自分を演出しない。
私が求めていたのはやっぱりこの人だったんだと改めて気づいた。
この日記をこれ以上書く必要もなくなった。
カウンセラーのところへはもう行かない。
私は前向きに生きられる自信がついた。だから日記は今日で終わり。
最後に私のこの手記に、今まで隠していて書けなかったことを記そうと思う。
それはカウンセラーにも言いたくなかったこと。
それを書いてしまうと読まれてしまうから。
それだけは絶対嫌だった。誰にも言えない私の秘密・・・
今、こうして書こうとしているのは、この日記にけじめをつけるため。
これで終わりにするため。それにもうカウンセラーにも読まれないから。。。
森田さんに借りたコートを返しに行った日。
そのとき彼に話した内容をここに書こうと思う。
「森田さん、あたしね。。。あたし、実は子供がいるの。」
「え?Σ|ll( ̄▽ ̄;)||l」
「女の子なんだけどね。今は小学1年生なの。」
「子供ってその・・須藤さんが産んだ子ってこと・・ですか?」
「ええ。。あたし、未婚の母なの。」
「でも・・以前自宅にお邪魔させてもらったとき、子供がいる気配なんて全然・・」
「今まで離れて暮らしてたの。いずみって言うんだけどね。」
「その・・理由とかって聞いちゃったらマズイ・・ですよね?」
「ううん、いいの。あたしが18歳のときの子なんだけど、高校生だったし生活能力も何もなくて・・」
「・・・・・」
「うちの母も病気で入退院を繰り返してるような時期だったから、彼側の家庭に引き取ってもらうしかなかったの。」
「男手で赤ちゃんを育てるなんて無謀な気もしますけど・・」
「実際に彼が育てたわけじゃないのよ。ほとんど彼の両親が育てたの。」
「言葉悪いですけど、父親になる人は遊び人みたいな人なんですか?」
「そのようなものね。。だから子供には全く無関心だったの。だから結婚もできなかった。。」
「そうだったんですか・・」
「あたしがいけなかったの。いつもそんな男の人ばっかりと付き合って・・そしてその後も同じことを繰り返してるバカな女なの。あたしって。」
「繰り返してるって・・他にも子供さんが?」
「そういう意味じゃなくて、クールで人情味のないような人ばかりと付き合って来たってことよ。」
「あ・・ご、ごめんなさい;^_^A アセアセ・・・」
「そしてこんなあたしだけど、やっと来月からいずみと暮らすようになるの。」
「それは良かったじゃないですか!でもそれはまた急な話だったんですね?」
「ええ。向こうのご両親のおじいちゃんが脳梗塞で倒れてね。おばあちゃんが看病に付きっきりなので、いずみの面倒が見れないって連絡が来たの。」
「そうなんだ。。。」
「あたし、社会人になってお給料もらえるようになってからも、ずっといずみと一緒に生活させてもらえるように説得して来たんだけど返してもらえなかったの。それがやっと叶った。。」
「須藤さん、ずいぶん辛い思いをして来たんですね。。」
「だからあたしを支えてくれる人が欲しかった。少し強引でもいいから、引っ張ってくれる人がそばにいて欲しかったの。」
「その条件は・・・僕には当てはまりませんよね。。。」
「ううん。違うの森田さん。あたしね、今までのそういう考えが間違いだったって気づいたの。」
「は、はぁ。。。」
「心がきれいで純粋な人。人を裏切らない人。あたしをずっと思ってくれる人。。」
「。。。。。」
「森田さん、こんなあたしでもいいですか?」
「須藤さん・・どうして『こんなあたし』って言うんですか?」
「だって・・あたし、子供までいるのに・・・それにうつ病でカウンセリングも受けて来たし・・その上、森田さんまで傷つけてしまったわ。」
「そんなの・・全然関係ないです。須藤さんは以前の須藤さんと全く変わってないです。それにそんな過去からの心労を表にも出さず、ここまで頑張ってきたじゃないですか!!」
「森田さん。。。」
彼の言葉に私は泣きそうになった。こんな優しい人もいるんだ。。。
「須藤さん、僕は子供も大好きですよ。今度一緒に3人で遊びませんか?その・・いずみちゃんと一緒に。」
「森田さん・・本当にあたしでいいんですか?」
「僕ってなぜか、子供になつかれるんですよ。きっとレベル的に同類って思われるんですかね?ハハ・・(^_^;)」
「ありがとう・・森田さん。お気持ち心から感謝します。でも・・悪いけどもう少しだけ考えさせて下さい。」
「はい・・わかりました。またいつでも連絡して下さい。」
こうして私は帰宅したのだった。
この日のことも、昨晩のダンスも、私にとっては一生忘れられない日。
そして、この私の手記もこれでおしまい。
もう誰にも読まれないまま、封印しよう。。。
これからは森田さんと歩んで行くと決めたから。
そう決めたから。。。
●森田卓の手記より
僕に突然、彼女ができた。
須藤さんが僕のところに戻って来てくれたのだ。
その前日までは、ほとんど毎日のように部屋でひとり泣いていた僕。
同僚からいつもバカにされ、こけにされ、笑われ続けてきた僕。
それが一夜で一変したのだ。
須藤さんと出会ったのが半年前。そのときも突然彼女になってくれた。
うん。これはやっぱり運命なんだ!そうなんだ。そう考えることにしよう!
人生何事もプラス思考でなくちゃ!
そして今回更に、突然彼女がもうひとり増えた。
小学1年生のいずみちゃん。3人で来週会うことになっている。
須藤さんの子供だもの。きっと利口でおしとやかで可愛い子に違いない。
今からとっても楽しみだ。わくわく。。。
1週間後・・・
「ママ、この車寒いよぉ〜。」
「いずみ、じゃあこの『貼るカイロ』あげるから体につけなさい。」
「ヤダぁ、ババくさい〜!」
「風邪ひくでしょ!ママの言うこと聞きなさい!」
「す、すいません。。。車内のヒーター壊れてて・・まだ直してなかったんです。。」
「いいの。気にしないで森田さん。寒かったら着ればいいんだから。」
「おじちゃんの車ってボロいよね。」
「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||l」
「こらっ!いずみなんてこと言うの!!」
「い、いいんですよ( ̄ー ̄; ホントのことだから。それに僕、老け顔だし。ハハ(´▽`;)ゝ」
「ごめんなさい森田さん。子供から見たら大人の男の人ってどうしてもおじさんに見えるようなの・・」
「え、ええ・・わかりますよ(^_^;)気にしてません。」
「そうだ!いずみは歌が好きでしょ?何か歌えば体も温まるかもよ?」
「ママ、そんな子供だましみたいなこと言ったってダメだよ。大声で笑った方がいいよ。」
「この子ったらもう・・でも何か笑えることがないとできないでしょ?」
「このおじちゃん見てたら笑えるよ。寒いのにさ、なんか汗びっしょりなんだもん。」
「ヘ( ̄ω ̄|||)ヘぎくッ!鋭い・・・」
「ちょっといずみったら・・本当にごめんなさいね森田さん。この子ちょっと口悪くて。。」
「いえいえ(^_^;)構いませんよ。」
いずみちゃんは細かいところに気が付くようだ。
「ママの唇の色、いつもよりなんか薄い。」
「Σ(゜∇゜|||)はぁうっ!あたしったら、今朝この子にばっかり手がかかって口紅つけるの忘れてたわ。ちょっと失礼していい?」
「どうぞ遠慮なく。」
須藤さんはコンパクトをバッグから取り出して僕の助手席で口紅を塗り始めた。
と、そのとき目の前の道に段差が・・・・・
ゴットン!!!
「キャ!!」須藤さんが小声で悲鳴をあげた。
「ママどうしたの?」
後部座席のいずみちゃんへ振り返る須藤さん。
「きゃははは(T▽T)ノ_彡☆ばんばん!ママの顔おもしろぉい!」
「ど、どうしたんですか?」
僕もつい横にいる彼女をを見てしまった。
「(*´m`)ぷっ。。あ、ご、ごめんなさい。」
「もう〜みんなしてひどいわ!」
「だってママの鼻の頭が真っ赤なんだもんwトナカイさんみたいw」
「もうヤダぁ〜!こんなドジ初めてだわぁ。」
「すいません。。僕の運転のせいですよね(^_^;)」
「いいのいいの。森田さんは気にしないで。でも・・」
「でも?」
「ちょっと森田さんのドジ癖が移っちゃったかもねw」
「いずみも移らないように気をつけよぉっと♪」
「こらいずみっ!失礼でしょ!」
「アハハ・・別にいいですよ。子供なんだから;^_^A アセアセ・・・」
とてもにぎやかなドライブだった。
いろいろハプニングはあったけど、すごく楽しくて充実した一日。
こんな日がこれからいつまでも続きますように。。。
(完)
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
できればほんの一言でも感想をいただけたら嬉しく思います。