現金なヤツ(新作エピソード)
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
……ではなく、応接室。
「……、うん♪こんなもんかしらね。」
「終わったぁ……。」
今日も今日とて、あさぎは教頭先生の雑用を手伝わされていた。
「じゃあ今日の報酬ね♪」
「わーい♪」
今日も今日とて、あさぎはお菓子で懐柔されていた。
「いや〜、しっかしほんとにいい食べっぷりね……。」
「菓子の声に応えへるだけでふよ。」
「声、ねえ……。私には咀嚼音しか聞こえないけど。」
「近くで聞きます?」
「座って食べなさい。」
「は〜い。」
応接室は咀嚼音とお茶を啜る音以外、無音であった。
「いや〜、満足満足……♪」
「……まあ、それで満足してくれるなら安いものね。」
「金品とか付けます?」
「もらう側が言うな。」
「なんなら金箔入りのお菓子とか……♪」
「金箔、ねえ……。」
教頭先生は大きなため息をついた。
「あれ?金箔お嫌いでした?」
「出されれば食べられるけど……個人的にイケ好かないってとこね。」
「あんまりキンキラキンでも悪趣味ですもんね。」
「そうそう、料理なら味で勝負しなさいっての……!」
教頭先生は茶柱もろとも湯呑みのお茶を豪快に飲み干した。
「お〜、いい飲みっぷり。」
あさぎはすかさずお茶のおかわりを注いだ。
「そもそも誰が食べ物に金振りかけようなんて考えたのかしらね……。消化されないならおがくずみたいなもんじゃない。」
「どうせなら金は胃袋より懐に入れたいですもんね〜。」
「懐の金はすぐに溶けて無くなっちゃうけどね。」
「冴えてますね〜。」
「あさぎちゃんの師匠だからね。」
「私、弟子になったんですか……?」
「誇っても良いのよ♪……あ!『金』マークの道着でも着てみる?」
「まさかり担いでる方に怒られそうなんでやめときます。」
「まさかり担いでる方ならしょうがないわねぇ……。」
教頭先生とあさぎは同時にお茶を啜った。
「そもそも金箔考えたヤツってセコいと思わない?」
「え、続けるんですかその話題。」
「ええ、まだまだ引き延ばせるもの。……金箔のように。」
「……もしかして、この会話、あーかい部に投稿させようとしてます?」
「ええ♪」
「えぇぇ……。」
「だめ?」
「だめ。」
「……。」
「……。」
・・・・・・。
「……まあいいわ。投稿させてくださいって頭下げるくらいには面白い話をしてやろうじゃない。」
「頭下げたら帰してくれます?」
「え〜〜……。」
「……だめ?」
「だめ♪」
「……。」
「……。」
・・・・・・。
「サラダバッ‼︎」
あさぎが教頭先生の不意をついて風のように駆け出しドアノブに手をかけた。
……と思ったらあさぎはドアノブを握る教頭先生の手を覆うように握っていた。
「……ドンマイ☆」
あさぎはさながら親猫に首根っこを掴まれて運ばれる赤ちゃん猫の如く、教頭先生にソファーまで連れ戻された。
「あんまりだ……。」
「良いじゃない、年寄りの話はためになるものよ?」
「金箔への愚痴が何のためになると……?」
「誰があさぎちゃんのためになるなんて言ったのかしら?」
「最悪だぁ……。」
「じゃあちょっとだけあさぎちゃんのためになる話をしてあげようかしら♪」
「え、普通に嫌なん
「いいから黙って私に知識をひけらかされなさい。」
あさぎは黙ってお茶を啜る他なかった。
「金は自然に塊で存在したり、常温でも叩いて伸ばせる加工の容易さのお陰でその歴史はかなり古いの。」
「ツタンカーメンもキンキラキンですもんね。」
「そう!人類史においては鉄なんかよりよっぽど先輩なんだから♪」
「随分と金の肩持つんですね。」
「それはそれとして下品な金ピカはイケ好かないけど。」
「教頭先生になるような人なら金ピカな古墳とか建てたがるもんかと思ったんですけど……。」
「……!」
教頭先生は無言であさぎの肩に手を置くと、目を輝かせてサムズアップした。
「いや作りませんって。」
「じゃあピラミッドでも良いから!」
「自己顕示欲止まんねえな……。」
「だって私、教頭先生よ?」
「全国の教頭先生が古墳造らせてたら大地がチ○コモナカジャンボみたいになっちゃいますって。」
「それじゃあありがたみが無いわね……。」
「問題そこなんですか。」
「じゃあ控えめに胸像でも……、」
「もうあるじゃないですか正門に。」
「私のじゃないもん。」
「っていうか金の話はどこ行ったんですか。」
「どこ……?」
教頭先生は少し考え込むと、戸棚の引き出しを漁って戻ってきた。
「ここかしらねぇ?」
教頭先生が持ってきた紙箱には大きく、『きんつば』と達筆な字が書かれていた。
「おおお……ッ!これが、『きん』……!!」
「……現金なヤツめ。」
牡丹、あさぎ(2)
牡丹:投稿がまだのようだけど
あさぎ:まだもなにも、しないんですよ
牡丹:きんつばあげたじゃない
あさぎ:ごちそうさまです
牡丹:くっ
あさぎ:そういえば教頭先生がくれるお菓子ってみんな和菓子ですけど
あさぎ:洋菓子苦手なんですか?
牡丹:食傷気味ではあるわね
あさぎ:え、うらやましい
牡丹:役得と思った頃もあったわね……
あさぎ:そうですかおやすみなさい
牡丹:そこは掘り下げる流れじゃないの!?
あさぎ:変なイベント踏んで和菓子の供給減らされたくないので
牡丹:そう、もうかれこれ20年は軽く超えるかしら……
あさぎ:zzZ
牡丹:聞けぃ
あさぎ:身の上話ならひいろにしてくださいよ
牡丹:やだ
あさぎ:なんでですか
あさぎ:ひいろならお通じの話ですら目を輝かせて聞きますよ
牡丹:ひいちゃんにの前ではミステリアスなシゴできお姉さんでいたいもの
あさぎ:[送信を取り消しました]
牡丹:誤送信は良くないわね
あさぎ:失礼しましたぁぁあッ!!orz
牡丹:私の親友がそれはそれはもうお料理が上手でね
あさぎ:めでたしめでたし
牡丹:聞けぃ
あさぎ:教頭先生に友人がいたなんてまあまあ衝撃の事実ですね
牡丹:友人じゃなくて親友よ
牡丹:たった2人の……ね♪
あさぎじゃあその親友のどっちかってことですね
牡丹:そうなのよ
牡丹:子どもが産まれてからは毎年誕生日ケーキ自作するもんだからその練習台にされてねぇ……
あさぎ:役得じゃないですか
あさぎ:っていうかケーキ自作はすごいですね
牡丹:一回試食するくらいならいいのよ
あさぎ:はい?
牡丹:子どものことになると自信がない〜!なんて言って何度も何度も作り直すもんだから
あさぎ:毎年それは……飽きますね
牡丹:毎年違う創作ケーキだから飽きは来ないんだけどね?
あさぎ:はい?
あさぎ:え、それを20年以上!?
あさぎ:それは食傷気味にもなりますね
牡丹:すごいでしょ〜♪
あさぎ:素直に凄い
牡丹:まあ、その子の子どもの倍の速さで私の内臓が老けてくんだけどね……
あさぎ:お墓に金粉振りかけときますね
牡丹:勝手に殺すな




