言ってみたい
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
「くさぁ!」
あさぎは誰もいない部室で叫んでいた。
「クサァ!……お、ちょっと寄ったかも。」
「……。」
『あさぎの中では』誰もいない部室で……。
「草ーーーーーっ!」
「うるさいよぉぉぉおお!!」
「きはだっ!?いつから……!?」
「さっき来だよぉ!?」
「いやぁ聞かれちゃったかぁ。」
きはだ、入室済。
「あさぎちゃんが大声で草を連呼するからねぇ……。芸人にでもなるのぉ?」
「きはだは芸人なの?」
「あれ、わたしの真似なの……?」
「きはだよくPINEでいってるじゃん。『くさぁ!』って。」
「あれは口に出すものじゃないよぉ……。なんか違うし。」
「じゃあきはだやってみてよ。」
「草ァ!……ほらねぇ?」
「うっ、確かに漢字の『草』が視える……!?」
「ふははは、格が違うのだよぉ格が!」
「良いなあ……。」
「ふはは…………え?」
「私もそういうくっっさいセリフ言ってみたい!」
「今日は一段とめんどくさいねぇ……。っていうかくっっさいセリフってなに?」
「さっきのだよ、『格が違うのだよぉ格が!』みたいなやつ!」
「……あ〜。」
「ねえねえきはだ、他になんかない?」
「そういうのって意識して言うもんじゃないよぉ……。」
「ねえねえ〜、」
あさぎは物欲しそうにきはだの身体を揺すった。
「ねえねえ?」
「自分で考えてよぉ……、」
「なえねえねえねえ
「黙れ小僧ッ!!」
「……。」
「あ、しまったつい……。」
「うわぁ……!すごいよきはだ!後ろにでっかい野犬みたいなの視えたよ!?」
「ぜんっっぜん嬉しくねぇ……。」
「もっとない?」
「言ってみたいセリフてきとーに言ってみればぁ?」
「いいね、じゃあさっそく……コホン。」
「やっほー、みん
「っっっせぇえんだよ先公がよぉぉおお!!?」
白ちゃん(最悪のタイミングで)入室。
「……。」
「「あ……。」」
「あ"?」
この日、あさぎときはだは思い出した。顧問に支配されていた恐怖を……。養護教諭に服従せざるを得ない屈辱を……。
「「ひぃっ!?」」
それからの2人の所作は神楽の如く……一糸乱れぬ鮮やかかつ荘厳な身のこなしで両の膝と掌をつき、額を床に擦り付けた。
「なぁ〜〜んだ、そうだったの♪いっやぁ〜あさぎちゃんがグレてなくて良かったわ♪」
「「あはは……。」」
「でもそうねぇ〜。普段なら絶対言わないけど言ってみたいセリフってあるわよねぇ〜。」
白ちゃんは人差し指を顎に添えてちょっぴり浮かれ気味に思索した。
「……まあ、言ってみたいセリフっていえば、あれかしらね?『私に意見するなんて、偉くなったものねえ?』……なんて、キャー///」
「白ちゃんって偉くなりたいのぉ?」
「なりたくないの?」
「わたしは別にって感じだなぁ。」
「きはだは偉くなりたくないんだ……。」
「お、あさぎちゃんはそっち側?」
「『頭が高いッ!!』とか言ってみたい。」
「わかる!わかるわあさぎちゃん……!」
「コイツら支配欲の塊か……?」
「じゃあきはだの言ってみたいセリフって何なの?」
「う〜ん、いつも言いたいことはだいたい口に出してるからなぁ……。」
「「確かに。」」
「口を慎め口を…………はっ!?」
「これを素でやってのけるから凄いわね……。」
「ああ、あれだ。『お許しください!』とかは行ってみたいかも……!」
「さっき床に向かって散々言ってたじゃない。」
あーかい部!(4)
きはだ:ミッションコンプリート……!
ひいろ:ちょっと言い方変えてるな
あさぎ:これも言ってみたいかも
ひいろ:『言ってみたい』?
きはだ:今日のタイトルだよぉ
ひいろ:なるほど、普段言わないけど言ってみたいセリフって色々あるよな
白ちゃん:あさぎちゃんって『草ァ!』したかったの?
あさぎ:あれなかなか難しいんですよ
ひいろ:そうなのか?
あさぎ:くさぁ!とかクサァ!になっちゃう
きはだ:文字に起こすとシュールで草ァ!
白ちゃん:お、本家
きはだ:ファンサだよぉ?
あさぎ:ひいろは言ってみたいセリフとかある?
ひいろ:やっぱり来たな
きはだ:想定済みかよ
ひいろ:ワタシはあれだな
ひいろ:『○○を愛しています。世界中の誰よりも。』
あさぎ:ひいろさぁ……
きはだ:お?良い子ちゃんかぁ!?
あさぎ:隠さなくてもいいんだよ?
白ちゃん:自分に正直になりなさい
ひいろ:何でだよ!?
白ちゃん:やり直し
ひいろ:は……!?
白ちゃん:もっと悪い子になりなさい。私が惨めになるから
ひいろ:ええぇ……
あさぎ:『この世界の半分をお前にやろう』みたいな方向で
きはだ:それじゃあ行ってみよー!
ひいろ:そんな急にいわれても
あさぎ:3分間待ってやる
きはだ:40秒で支度しなぁ!?
ひいろ:どっちだよ!?
ひいろ:『ボクの顔をお食べ』……かな
あさぎ:食べられたいの?
ひいろ:いや、人間だったら絶対言えないなって
白ちゃん:確かにそうね
きはだ:食品衛生的にどうなの養護教諭
白ちゃん:論外よ
ひいろ:だろうな
あさぎ:フィクションならではか……




