映画のお供 (新作エピソード)
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
……ではなく、あさぎのお隣さん改め白ちゃんの妹改めモーラの部屋。
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」
「安いよ安いよ〜?」
「何がぁ?」
「家賃とか。」
「……。」
この日は白ちゃんときはだと、ついでにあさぎがお邪魔していた。
「……ふ〜ん?割と良いお部屋じゃない。」
「あれ?そういやすみ姉呼ぶの初めてだったっけ?」
「前来たときはお隣のあさぎちゃん家だったからねぇ。」
「家賃とか全然安くないでしょこれ……。」
「ま〜ね♪駅近オートロック付きの角部屋だし。」
「ポップコーン出しとくよ。」
「面白そうだしついてこ〜っと。」
あさぎがキッチンへと歩いていくと、きはだがその後ろをついて行った。
「……お?さ〜て〜は、妹のが良い暮らししてて焦って焦っておりますなあ?」
「ははは、はぁぁあ!?そそ、そんなわけ、ねーし……!?」
「いよっし!どんどんマウントとっちゃうぞ〜♪」
モーラは浮き足だって我先にとリビングのソファーに腰を落とした。
「……ったく、中身はクソガキのままなんだから。」
「いいかいすみ姉?人生を楽しむコツは、幾つになっても童心を忘れないことなのだよ?」
「おっっも……。」
ソファーの前のテーブルに、口を閉じた透明なビニール袋に入れられた業務用サイズのポップコーンが乱暴にドスンと置かれた。
「ふぅ……。さてとあさぎちゃん、一応もう一回聞くけど………なぁにこれ?」
「ポップコーン。」
「見りゃわかるよぉ……。」
「うわ……。」
「『うわ』とはなんだ、こいつがあれば毎日が映画館なんだぞ〜!?」
「まさか毎日こんな食生活してるわけ……?」
「いやいやまさか。……ねえ、あさぎ。」
「モーラさん割とちゃんと料理してますよ?」
「うっっそぉお!!??」
「良かったねぇ白ちゃん、女子力最底辺の座は安泰みたいだねぇ。」
「慰めになってないのよ。」
「や〜い女子力最底へ〜ん。」
「くっっそ、こんな生ゴミみたいにポップコーン管理してるヤツにすら敗けるのか私は……!」
「それ、これから食べるんですけど……。」
「生ゴミ言うなっ!?」
「因みに何味〜?」
「塩だけど。」
「よく飽きないわね……。」
「2人がかりで味変してっからね。」
「何それ面白そ〜♪」
「お?きはだもやってみる?」
「わ〜い♪」
「じゃあまずそのまま行ってみようか。」
あさぎがテレビのリモコンのスイッチを押すと、明るくなった画面にはデカデカと『ランニングシャーク』のタイトルロゴが表示された。
「電気は?」
「「消そう。」」
「はあ……ほんっと好きねアンタら……。」
部屋が暗くなると、4人は小1時間の上映時間をほんのり塩味のするポップコーンと過ごした。
「いやあ、良かった……!素晴らしい!!」
「ブラボー……ッ!」
エンドロールが終わり、再び『ランニングシャーク』のタイトルロゴが表示されると、あさぎとモーラは涙を流してスタンディングオベーションした。
「何やってんの……。」
「「スタンディングオベーション。」」
「そう……。」
2人の温度感についていけない白ちゃんはさっさと立ち上がり部屋の電気を点けた。
「ポップコーン、まだまだあるねぇ……。」
「業務用だからね。」
「ここで調理してるわけ?」
「いやいやまさ……か…………、」
「やめなさいよ?」
「その手が
「やめときなさい。」
「え〜……。」
「『え〜』じゃないのよ。アンタ昔『マシュマロ作る』とか言って家中メレンゲ塗れにしたの忘れてないでしょうね……!?」
「あ、あ〜…………そんなこともあったっけ☆」
「何やってんのモーラさん……。」
「とんでもねぇ前科で草ァ!」
「うう、うるさいなあ!///……今は流石にもっとマシに料理できるっつの!」
「本当かしらねぇ〜♪」
「ねぇねぇあさぎちゃん、モーラさんに最後に作ってもらった料理何ぃ〜?」
「最後?……昨日の夜、鮭のホイル焼きとポトフかな。」
「なん……だ、と……!?」
「ああ、うん……。その反応ですみ姉の家事力だいたいわかったわ。」
「 」
「お掃除、ちゃんとやろうね?」
「……うっせ。」
「まあまあ、味変でもして元気出してくださいよ。」
「味変……?」
あさぎは燃えるゴミのように袋でテーブルに鎮座するポップコーンを指差した。
「そうだよ!すみ姉は貴重な食べ手なんだから。」
「まさか今日呼んだのって……。」
「いっやあ〜、消費期限が近くってさ///」
このあと、4人がかりでポップコーンに味変という魔改造を施し、なんとか燃えるゴミの発生を未然に防いだ。
あーかい部!(4)
あさぎ:いや〜協力感謝感謝!
ひいろ:あさぎ……じゃないな
あさぎ:ぴんぽ〜ん♪みんなの隣人、モーラちゃんだぞ☆
白ちゃん:おえ
あさぎ:おい
ひいろ:で、強力ってなんのことなんだあさぎ
あさぎ:きはだと白ちゃん先生呼んで4人がかりでポップコーン食べきった
ひいろ:この前話してた映画のやつか
きはだ:そのと〜り
ひいろ:結局きはだも行ったんだな
きはだ:きはだちゃんの心は秋の空なのだよ
白ちゃん:やめて雲がポップコーンに見える……
ひいろ:そんなに食べたのか
あさぎ:うむ!業務用は伊達じゃないっ!
きはだ:またモーラさんだ〜
ひいろ:業務用……?
あさぎ:解説しよう!あたし、モーラ・コロルにはやっすいやっすい業務用サイズの食品をお得だと買い漁ってはあさぎもろともノイローゼ気味になりながら消費期限ギリギリで食べきる悪癖があるのだー!
白ちゃん:誇るな誇るな
ひいろ:悪癖と自覚して、なおやるのか……
あさぎ:だってお得なんだもん
白ちゃん:いったいなんでこんな子に……
あさぎ:うるさいやい食いもんいっぱいあんのは幸せなことなんだぞ〜!
ひいろ:購買の売れ残りパン買い占めてるときの白ちゃんは幸せそうだもんな
白ちゃん:なんで今それ言うのよ
あさぎ:草ァ!
きはだ:盗られた、だとぉ……!?
白ちゃん:別にアイデンティティでもなんでもないでしょ
ひいろ:しかしポップコーンは同じ味だとすぐ飽きるぞ?業務用サイズなんてよく食べきったな
あさぎ:そこは味変さまさまよ♪
きはだ:最後の方コンソメスープにぶち込んでカサ減らしてたけどねぇ
ひいろ:ゴリ押しどころじゃないな
白ちゃん:チョコソースはともかく味噌出したときは正気を疑ったわ……
あさぎ:これだから頭硬度10は
白ちゃん:おん?
ひいろ:言われてみれば味噌とコーンは定番の組み合わせだな
あさぎ:さっすがひいろちゃんわかってるぅ〜♪
きはだ:調味料はあらかた試したよねぇ
白ちゃん:普通の家はみたらしとかホイホイ出てくるもんじゃないんだけどね
あさぎ:実家にはあったじゃん
白ちゃん:あれはうちが特殊なだけよ
きはだ:特殊なお家?
あさぎ:そう、あたしの味覚をぐちゃぐちゃにしてくれた罪なお家さ……
白ちゃん:まあ罪といえば罪ね
ひいろ:気になるな……
あさぎ:行っても良いけどあたしのことはトップシークレットで頼むよ?
白ちゃん:まあそう言う約束だしね
ひいろ:そういえばあさぎはいるのか?
あさぎ:あさぎならあたしの隣で肉まん頬張ってる
きはだ:まさか……
白ちゃん:また業務用……
あさぎ:お!よくわかったね
ひいろ:こうして歴史は繰り返されるんだな




