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おやつなヤツ(新作エピソード)

ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立 池図(いけず)女学院。


そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。


あーかい部に所属するうら若き乙女の干物達は、今日も活動実績(アーカイブ)を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。


『アウトオブあーかい部!』は、そんなあーかい部のみんなの活動記録外のお話……。

池図女学院部室棟、あーかい部部室。


……ではなく、あさぎのお隣さんこと、白ちゃんの妹改めモーラの部屋。




「むむむ……、」




あさぎとモーラは将棋盤を挟んで駒の配置に険しい視線を向けていた。




「……次、モーラさんの番だよ?」


「皆まで言うな……!わかってる、わかってるから……!」




モーラは隅っこに追いやられた王様を見て深いため息をつくと、眉間をつまんで天井を仰いだ。




「ぬぬぬぬ……!」


「そんな悩む?」


「うっせ、大人の威厳がかかってんだよこっちは。」


「ざーこざーこ♪」


「ぅおんのれぇえ!?最近流行りのメスガキで煽るんじゃあないよ!?」


「……、」




あさぎは盤外に転がしていた歩を両手の指の隙間に挟み目線の高さで見せびらかした。




「ぬがぁぁあくっっそ腹立つ!!」


「大丈夫?カルシウム摂る?」


「……摂る。」




モーラは立ち上がるとキッチンの引き出しを漁り出した。




「わーいおやつだ。」




あさぎもモーラを追いかけ、引き出しの中を覗き込んだ。




「カルシウムねえ……。なんかあったかな〜。」


「どぎついやつ無いの?」


「どぎついやつ?」


「ほら、毒蟲みたいな海外のお菓子。」


「毒蟲て……。」


「モーラさん、あんまり好きじゃなかったの?」


「そりゃ、向こうではぼちぼち食べたけど……。」


「けど?」


「なんか腹立つから食べなくなった……ッ!」


「逆効果じゃん。」


「あうぅカルシウム不足だぁ……。」


「小魚とか無いの?」


「……白身魚のフライなら。」


「全然雑魚じゃないじゃん。」


「お?なんだ、将棋クソザコなあたしは雑魚しゃぶってろってか!?」


「しゃぶるならママのおっぱいじゃない?」


「こいつぅ……!」


「やーい。」


「……お宅のママに吸わせてもらいに行ってやろうか?」


「頼んでおこうか?」


「すみませんでした。」


「いや負けるの早すぎでしょ……。」


「だって、頼んだら快諾されそうじゃん……。」


「あ〜……。」


「っていうか少しは躊躇してよ。」


「私が断ったら怒られそうだし……。」


「あ〜……。」




2人は見つめ合って無言で頷くと、示し合わせたようにこの話題を無かったことにした。




「……おいあさぎ。」


「ん?」


「ポテチを出せ。」


「……無いけど。」


「あさぎん家のリビングに大入り袋置いてあったっしょ?」


「他人ん家のお菓子の在庫把握してるの怖すぎるんだけど。」


「うるせえ、今日のおやつはフィッシュアンドチップスじゃあッ!」


「はーい。」




あさぎはモーラの部屋を出ると、ポテチの袋を持って戻ってきた。




「持ってきたよー。」


「いよっし!よくやった♪あとは重ねたキッチンペーパーをグラタン皿に敷いて、解凍したフライとポテチをオールベット!」


「おお……!」


「……そしたらお片付けして焼き上がりを待つ。」


「しれっと将棋無かったことにしたな……?」


「フッフッフ……あさぎよ、貴様は試合に勝って勝負に負けたのだよ……ッ!」


「跪いてお片付けしながら言うセリフじゃないと思う。」


「……うっせ。」




やがてオーブンの軽快なベルがお手製フィッシュアンドチップスの焼き上がりを知らせると、2人はテーブルを挟んで箸を手に取った。




「っしゃあ!頂くぞあさぎ!」


「『ます』でしょ?」


「おん?なんだ最近流行りのマナー講師か?」


「めっちゃ流行り物に噛み付くじゃん……。」


「今のあたしは最近の子にボッコボコにされて腹が立ってるからね♪」


「満面の笑みだけど。」


「それはそれ、これはこれ……♪」




モーラはフィッシュとチップスをテキトーに箸で摘んで口に運んだ。




「んん〜〜♪♪これよこれ!」


「どれどれ……、お!ぼちぼち美味い……!?」


「でしょでしょ〜♪某島国に行ったらやってみな?」


「本場じゃん。」


「本場の食べたら戻れなくなるから。」


「どっちに?」


「それは、将来にとっときな♪」


「えぇぇ……。」




モーラの目はここから見えないはずの水平線の向こうを眺めていた。




「そういえばさ?」


「ん?」


「さっき流したけど、なんでモーラさん向こうのお菓子食べると腹立つの?」


「なんでって……そりゃ、和菓子と比べちゃうからかなあ?」


「和菓子めっちゃ好きじゃん。」


「……ムカつくことにね。」


「ムカつく?」


「だってさ?和菓子なんて英才教育受けなきゃ、砂糖の塊かじって満足できてたわけじゃん?」


「……落雁(らくがん)。」


「ぐおぉぉわかってんだよちくしょうめぇッ!!」




モーラは弱めに台パンした。




「めっっちゃ好きじゃん。」


「まあ、そりゃ溶かして固めて砂糖漬け〜、がほとんどな毒蟲スイーツに比べたら……ねえ?」


「うわあすんごい偏見。」


「あさぎが最初に言ったんじゃん。」


「それもそっか。」


「はぁ〜♪、やっぱおやつはしょっぱい系だわ〜///」


「……じゃあケーキは?」


「  」




モーラの箸が止まった。




「…………、否ッッ!!!」


「そんなに……?」


「そりゃもうアレよ、ケーキなんてもん口に入れようもんならMK5からのムカチャッカ大噴火よ……!」


「めっっっちゃ好きじゃん。」


「……好きくない。」


「英才教育?」


「英才教育。」


「……もしかしてモーラ姉、お菓子作れたり


「ないないない!あたしにできんのはせいぜい炙って炒めて茹でるくらいよ。」


「ほぼ加熱だけじゃん……。」


「だ〜たい、料理なんて混ぜて火ぃ通せればどこでも生きてけんの。」


「こりゃあ酷い……。」


「じゃあそういうあさぎはなんか料理できるわけ?」


「フィッシュアンドチップスなら。」


「…………グラタン皿に混ぜてチンしたやつ?」


「うん。混ぜて火ぃ通したやつ。」








モーラ、あさぎ(2)




モーラ:やほやほ


あさぎ:そっち行こっか?


モーラ:敢えて遠距離感出すのが良いんじゃない


あさぎ:文明に寄り添って置いて?


モーラ:お〜、詩的


あさぎ:それ程でもある


モーラ:謙遜って知ってる?


あさぎ謙遜とは:敢えて距離感出してる


モーラ:言いよる


あさぎ:え、ほんとに何も用無くてダル絡みなの?


モーラ:いつものことじゃあないか


あさぎ:そのトーク、もしかして孤独死対策……!?


モーラ:お、いいね見守りカメラでもつけてみる?


あさぎ:飯テロされるだけだからやめときな


モーラ:お!もしかして料理してんの?


あさぎ:逆に聞くけど、してると思う?


モーラ:する訳ないっ!


あさぎ:わかってるじゃん


モーラ:えっへっへ、これでもあたし、暫定あさぎのおねーちゃんだもんね♪


あさぎ:義姉?


モーラ:かたいかたい


あさぎ:姐さん?

あさぎ:……は白ちゃん先生か


モーラ:わかってんじゃん


あさぎ:リアル姉ってどんな感じ?


モーラ:けっこう損な役回り


あさぎ:妹がそれ言うんだ……


モーラ:すみ姉見てるとね〜


あさぎ:でもおねーちゃんなんだ?


モーラ:あさぎが呼んでくれるまでは(自称)だけどね


あさぎ:じしょうのおねーちゃん?


モーラ:なんか痛そう……


あさぎ:それは自傷


モーラ:く……!大将あとは頼むっ!


あさぎ:次将


モーラ:来週も観てくれよなっ!


あさぎ:う〜ん、次章

あさぎ:っていうより次週

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