料理下手
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
白ちゃんは1人、静かな部室でパソコンのキーボードを鳴らし、
「はむっ……、」
購買のコロッケパンを貪っていた。
「あれ?白ちゃん早いな。」
ひいろ入室。
「はむっ……、こんにちはひいろちゃん♪……ってことは、もう授業終わりの時間……。」
「授業中もここに来てるのか?」
「たまにね。ここの狭さが作業するのにちょうど良いのよ。」
「ちょっとわかる気がするな。」
「……ごちそうさま。じゃあもうすぐ2人も来るわね。」
「コロッケパン?」
「お行儀悪かったかしら……///」
「ああ。……お婆ちゃんならキレていた。
「お婆ちゃん?」
「ワタシのお婆ちゃん、食に関してはうるさいんだ。」
「そういえばひいろちゃんお婆ちゃんっ子だったわね。」
「ああ。毎朝ジョギングするくらいには健在だぞ♪」
「それはすごいわね……!?」
「むしろ元気すぎるくらいだ。調理中につまみ食いでもしようものなら……思い出したくもないな。」
「こだわりが強いのね。」
「ああ♪コロッケパンといえば、お婆ちゃんの作るコロッケは絶品だ!」
「コロッケってそんなに差が出る?」
「出るに決まっているだろう。そうだな……、出来合いのコロッケパンとお肉屋さんのコロッケとかでも味わいが違うだろう?」
「あ!それわかるかも。お肉屋さんのコロッケって美味しいのよね〜♪」
「手作業で粗く潰したジャガイモとバキバキに立った衣の味わいは購買では得られないからな。もちろん、ソースをふんだんに吸って柔らかい食感になった購買のコロッケもまた一興なんだが……♪」
「食べもののことになると饒舌なのはお婆ちゃん譲りかしら?」
「それは……そうかもしれないな。」
「あら?今日は素直ね。」
「食に関して嘘をつくのは食材に失礼だからな。」
「真摯なのね♪」
「と言うわけで、ながら食べは行儀悪いぞ?」
「う"っ……はぁ〜い。」
しばしの間、白ちゃんは無言でコロッケパンをご賞味し、完食した。
「コロッケの話をしたら、なんだかお腹が減ってしまったな……。」
「あら、悪いことしちゃったわね。」
「いや、いいんだ。そういえば白ちゃんは料……すまない、忘れてくれ。」
「答えさせなさいよっ!?」
「だって白ちゃん、私生活終わってるじゃないか……。」
「それはそう。手料理なんて調理実習以来ご無沙汰だし。」
「今日は素直なんだな。」
「……さっきの意趣返し?」
「そんなところだ♪」
「そういうひいろちゃんは料理するのかしら?」
「するぞ。」
「嘘でしょ……!?」
「失礼だな。」
「そんな、あーかい部の女子力最底辺争いから一抜けするなんて……!?」
「一抜けされてショックな所申し訳ないが、きはだも料理できるからあさぎとの一騎打ちだぞ。」
「いやぁぁああ!?」
「それはそれであさぎに失礼じゃないか……?」
「そうだけど、そうだけど〜〜!」
「嘆くくらいなら料理すれば良いのに……。」
「無理よ、私に料理なんて……、
白ちゃんは床に崩れ落ちた。
「何がそんなに無理なんだ?刃物が怖いとかなら無理にとは言えないが……。」
「あ、それは全然大丈夫。寧ろ刃物を捌くのは得意だから。」
「刃物『で』捌くんじゃないのか……?」
「あ"……。」
「?」
「…………そ、そうそう!切るのは得意よ!?うん。養護教諭だし!」
「じゃあ調理の部分がダメダメなのか。」
「ダメが1つ多くない?」
「火が怖い……とかか?」
「わたしゃ獣かっ!?」
「ああ、言われてみれば人類の歩みは火との歩みだな。となると白ちゃんは……。」
「置いてくな置いてくな。」
「じゃあ、動物やお魚さんがかわいそう……、
「はぁ。そんなピュアな心を持っていたかったわね……。」
「食材の声が聞こえる……!」
「急にスピリチュアルっ!?」
「じゃあ一体何がダメなんだ……ッ!?」
「ダメなところがないのがダメなのかもしれないわね……。」
「じゃあ略してダメダメでいいな、また明日。ダメダメ先生。」
「見捨てないでよおぉぉ……!」
白ちゃんは部室から出ようとするひいろの腰にしがみついた。
「……はぁ。少しは真面目にやる気になったか?」
「もう『お魚さんかわいそう……』とかいわないくらいには。」
「またあし
「待って待って待って待って〜〜!?」
「ああもう、わかったって。じゃあどこで失敗するのか聞かせてくれ。」
「どこで……う〜ん……、」
「最後に作った料理の行程とかでもいいから。」
「最後に挑戦したのはカレーだったかしら?……確か、お鍋に水とルーと具材を放りこんで
「わかった、もう充分だ。」
「な、なによちゃんと玉ねぎはみじん切りにしたし、お肉だって鮮度が落ちないように開けてからすぐ切って鍋に入れたわよ!?」
「……一応聞いておくが、味付けは……?」
ひいろの目尻がヒクついた。
「はっは〜ん?さてはひいろちゃん、私が隠し味のことも知らないと思ってるのねぇ?」
「いいから、何を入れたんだ……。」
ひいろの額に青筋がうっすら浮かび上がった。
「えっと、味噌にチョコにりんごにバナナにソースにイカにチリソー
「もうだめだ……おしまいだ……ううっ……、」
ひいろは堪えていた怒りすら忘れて床に崩れ落ち、己の無力さを悔やんだ。
「な、なによ!?」
「ワタシに白ちゃんは救えない……。」
「こんなところで諦めるの!?」
「よく言えたものだな。」
「はいはい、で?何かダメなところはあった?」
「白ちゃんの舌が答えを出していたんじゃないか?」
「ゔぐっ……!?」
「ワタシから言えることは1つ……白ちゃん。レシピを、見てくれ……。」
部室を去るひいろの背中は哀愁に満ちていた……。
あーかい部!(4)
ひいろ:投稿完了だ!
白ちゃん:コロッケパン美味しかったわね
ひいろ:ワタシは食べてないんだが
あさぎ:また飯テロでもされたの?
白ちゃん:しないわよっ!
きはだ:じゃああんた、その腕の墨はなんだい?
ひいろ:するってえと白ちゃん、島帰りかい?
白ちゃん:誓って殺しはしていませんっ!!
白ちゃん:って罪人じゃないんだから
白ちゃん:いつの時代の話よ……
あさぎ:島流しってけっこう長いことやってたみたいですけど、2人の口調から考えて江戸時代くらい……?
白ちゃん:それで江戸っ子口調だったのね
きはだ:や〜い前科者ぉ
白ちゃん:はいはい、いいからさっさと読んできなさい
あさぎ:私ってそんなに女子力低いの?
きはだ:うん
ひいろ:ああ
あさぎ:えぇ……
白ちゃん:みたいよ
きはだ:争え……争え……
あさぎ:デスゲームじゃないんだから
ひいろ:でもこのままだと白ちゃんみたいになっちゃうぞ?
白ちゃん:そうよ?
きはだ:肯定的で草ァ!
あさぎ:そんな、いやだ……死にたくないよぉ……!?
白ちゃん:おい
きはだ:悔しかったらレシピ通りに作るんだねぇ
白ちゃん:あんなにまどろっこしいことみんないちいちやってるの?
ひいろ:白ちゃん……何気なく食べてる味覚はそのまどろっこしいことの賜物なんだ
きはだ:命に感謝……
あさぎ:感謝……?
白ちゃん:食材も命だものね
きはだ:2人は食材に陳謝して
ひいろ:心から、な




