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トライアングルレッスン応募分

夕暮れの騎士 ~むっくんルート寄り~

作者: 玉露
掲載日:2026/02/06




「ひーろし、かーえろっ」


「すまない、ゆいこ。今日は委員会があるんだ」


「じゃあ、たくみは?」


「ちょっち待ち。借りた本返す」


一緒に帰ろうと二人の教室を訪ねると、残念ながらひろしは委員会の会議だった。たくみが図書室に用があるなんて珍しいと思ったら、古典で課題がでていたしかたなくらしい。


「教科書に載ってない一首で、ってえげつなくね?」


「古典の先生、百人一首好きだもんね」


図書室への道すがらぼやくたくみに同情しつつ、私も来年は同じ課題がだされるかもしれないから覚悟する。和歌が多いのは二年になってからだ。

着いた図書室で、同じ利用者に見知った人物を見つけた。


「あれ? むっくん?」


「ゆいこ姉ちゃん」


「なんで、むさしがいんだよ?」


「中高共有なの、知らないの? たくみは図書室使ったことないから知らないのか」


「相変わらず、可愛くねぇヤツだな」


いとこ同士だから遠慮ない物言いの二人が可笑しくて、つい笑みが零れる。


「かなちゃんは一緒じゃないの?」


「中学になってまで姉貴にべったりしないよ」


私がよく遊んでいたもう一人のたくみのいとこ、かなちゃん。小さい頃はむっくんと会うときはかなちゃんとセットだったから、つい訊いて、むっくんから呆れた声が返る。

たくみが本を返却しているのを待っている間、むっくんの用を訊くと読む本を探しにきたらしい。しかも、探しているのはミステリーだという。


「ミステリー小説に興味持ってくれて嬉しいな! おすすめした甲斐があるーっ」


好きなジャンルを気に入ってくれたのを私がはしゃぐと、むっくんは伏せた視線を少し逸らした。


「あーっ、こんなトコにいた! たくみ、バスケの練習試合の助っ人してくれんじゃなかったのかよ!?」


「ヤベっ、今日だっけ」


バスケ部員が探していたたくみに怒鳴る。うっかりしていたらしいたくみは、一緒に帰れないことを私に詫びて、バスケ部員に引っ張られていった。

ひろしともたくみとも帰れなくなって、私はすぐに帰らなくてもいい気分に変わる。


「むっくん、選ぶの手伝うよ。オススメいっぱいあるんだー」


「……じゃあ、お願い」


「まかせて!」


新刊コーナーにあるのだけじゃなく、好きな作家先生のまであれやこれや紹介していたら、あっという間に時間がすぎた。図書室のある特別棟をでたときには、もう夕焼け空だった。


「時間かかっちゃってごめんね」


「別に。頼んだの、こっちだし」


好きな本のことを話すのが楽しすぎた。むっくんが聞いてくれるものだから、余計、饒舌になってしまった気がする。たくみだったらこうはいかない。絶対途中で茶化してくる。

たくさん薦めすぎたかと思ったけど、むっくんは紹介したなかから二冊借りてくれた。

校門を通り、角を曲がるとむっくんも同じ方向に曲がった。


「あれ? むっくんの家あっちじゃない?」


私がこてりと首を傾げると、こちらを見ずにぶっきらぼうにむっくんは返す。


「送る。女のひとり歩きは危ないし」


不意打ちで女の子扱いされ、なんだか照れてしまう。目線の高さが近くなっていることに気付いたから、余計。


「たっ、頼もしいー! むっくん、大きくなったもんね。背だって……」


あんまり変わらない、と手をかざして、残り数センチの差を示そうとしたら、その手を掴まれる。


「すぐ追い抜かす。覚悟してろよ、ゆいこ」


逸らされがちだった眼差しに射貫かれ、私の胸が鳴った。むっくんは、そんな私を見て、不敵に笑う。


「たくみだって抜かすかもな」


「そう簡単に抜かされるかよ」


がしりとむっくんの頭部を掴んで、上から圧をかけるたくみ。なんでか息があがってる。


「たくみ!? バスケの練習試合は?」


「そっこーで終わらせてきた」


ひとりで帰るとちゃんと伝えていなかったから、私が待っている可能性もあると心配して追いかけてきてくれたらしい。


「まーだゆいこよりチビなお前じゃ騎士(ナイト)にゃ力不足だっての。オレに任せておけって」


そう言って私の肩を引き寄せるたくみ。


「ちょっと走ったぐらいで息切れてるたくみの方が力不足だっての」


たくみを睨み上げ、私の手を引くむっくん。

反発しあって二人とも放してくれないから、帰り道の間、私はどっちに胸が高鳴っているのか分からなるのだった。




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トライアングルレッスンM第385回2026.2.13放送分下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオにて、朗読いただきました。
(23:11頃から朗読されています)

2026年度(2026.04)以降なろラジには参加しません。

出版情報などの詳細

マンガUP!HP
マンガUP!にて2020.04.21よりコミカライズ連載中
Global version of "I'm Not Even an NPC In This Otome Game!" available from July 25, 2022.
2025.03.17 韓国版「여성향 게임의 엑스트라조차 아니지만」デジタル配信開始


マンガUP!TVチャンネル以外のyoutubeにある動画は無断転載です。海賊版を見るぐらいなら↑公式アプリ↑でタダで読んでください。
#今日も海賊版を読みませんでした
STOP! 海賊版 #きみを犯罪者にしたくない
(違法にUPされた漫画を読むと、2年以下の懲役か200万円以下の罰金、またはその両方が科されます)
― 新着の感想 ―
採用おめでとうございます。 突然の名前呼び捨てにはドキッとしますよね。田村睦心さんの演技もよかったですね。 そして追いかけてきたたくみが、むっくんに敵意出しているのところも好きです。
うわ〜っ青春〜っ(*´艸`*)甘酸っぱぁい 偶然行き逢った通行人Aになって、によによ眺めたい 気恥ずかしくても、興味なくても、好きな本の話に茶々を入れてる点が自分的には減点なので、きちんと聴けるむっ…
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