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はーい

仕事机の上に、安物のノック式ボールペンが一本転がっていた。

特に愛着があるわけでもない。ただ気がつけばいつも手の届く場所にある。


夜更け、書類をまとめているとき、ふと手が止まった。

眠気覚ましに無意識で、ペンのノックをカチリと押したのだ。


すると──机の下から「はーい」と返事がした。


思わず固まる。

声ははっきりとした人間の声だった。低くも高くもない、曖昧な調子で、まるで返事だけに特化した響き。


慌てて机の下を覗き込む。

暗がりには何もいない。ただ、床の上に書類を落としたときのようなかすかな紙の擦れる音が残っていた。


気のせいだ、と自分に言い聞かせる。だが胸の鼓動が早くなっている。

確かめるように、もう一度ペンをノックした。


カチリ。


間を置いて──「はーい」。


今度は、すぐ耳元で聞こえた。


慌ててペンを投げ出すと、音は止んだ。

机の上で転がるボールペンは、ただの安物にしか見えない。


けれどそれ以来、怖くて触れなくなった。

なのに、気がつくといつも机の上に戻ってきている。


カチリと押せば、またあの声が返るのだろう。

……次はどこから「はーい」と返ってくるのか。

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