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窓を閉めろ
夜更け、机の上に一枚のメモが置かれていた。
「窓を閉めろ」とだけ、黒いペンで殴り書きされている。
覚えがない。自分で書いた記憶もなければ、誰かが部屋に入った形跡もない。
気味が悪くなり、机から視線を上げると──窓が開いていた。
夕方、確かに閉めたはずだ。
鍵までかけた記憶がある。それなのに、今は外気が入り込み、カーテンが微かに揺れている。
慌てて窓を閉め、鍵をかける。
もう一度机を見た。メモはそのまま、置かれている。
「……誰が置いた?」
心臓が早鐘のように鳴り、息が落ち着かない。
眠れないまま夜を過ごした。
翌朝、机の上のメモはなくなっていた。床にも、ゴミ箱にも見当たらない。
夢でも見たのだろう、と自分に言い聞かせた。
だがその夜、再び机にメモが現れた。
昨日と同じ紙、同じ字。だが今度は一言増えていた。
「窓を閉めろ。見られている。」
怖さよりも寒気のようなものが背中を走る。慌てて窓を見る。
ぴったり閉まっている。鍵もかかっている。
……なのに、ガラスに映る部屋の中に、自分以外の影が揺れていた。




