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きれいに整えられている理由

爪を切った覚えがなかった。

それなのに、指先だけがきれいに整えられている。

昨夜は切っていない。けれど、切った直後のように白い断面がそろっていた。


不思議に思って床を見るが、爪はひとつも落ちていない。

ゴミ箱にも、机の下にも、洗面所にも、どこにもなかった。

片づけた覚えがないのに、跡だけが消えている。


そのうち、爪を切ろうとすると決まって記憶が途切れるようになった。

「パチン」という音が耳に残っていることだけはあるのに、

気がつくと爪は短く整えられ、床には何も落ちていない。


ある日、机の上に細い白い筋が点々と並んでいた。

爪の欠片に似ていたが、形が少し普通じゃない。

反り返り方が、人間の爪とは思えなかった。


その夜、爪切りを手に取った瞬間、刃の合わせ目がかすかに震えた。

金属の擦れる音が、小さく「チッ」と舌打ちのように聞こえた。


思わず手を離すと、机の上で爪切りがゆっくり転がった。

向きを変えたその先端が、まるでこちらを見ているように感じた。


ほんのわずかだが――

爪切りが、笑った気がした。

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