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香水、かもしれない
香水を指に乗せた瞬間、
透明なはずの液体が もぞり と動いた。
指の腹に沿って、赤黒い何かがゆっくり形を変え、
次の瞬間にはただの香水に戻っている。
最初は見間違いだと思った。
だが翌日、別の姿が見えた。
灰色の粉のような粒がうねり、
その次は細い毛の束が肌に貼りつき、
また別の日には、白い小さな“眼”が浮かんでいた。
瓶を変えても同じだった。
香水が空気中に出る前は透明なのに、
肌に触れた瞬間だけ、本性が漏れ出すらしい。
それでも使用をやめる気にはならなかった。
鏡の前で指先を見つめ、
その日どんな姿を見せるのかを確かめるのが
いつしか習慣になっていた。
香りを広げるたび、
液体は私の皮膚の上で静かに もぞり と動く。
恐怖よりも、期待のほうが先に来る。
明日はどんな形で触れてくるのだろう。
そんなことを思いながら、
私はまた指先に香水を落とした。




