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マニキュア
仕事帰りに、安売りワゴンのマニキュアを買った。
赤と緑とオレンジ。特に理由もない。
小さな部屋に帰ると、なんとなく赤を塗ってみた。
乾く前に、手の甲に重みを感じた。
誰かがそっと手を重ねているようだった。
温度があり、指の形がはっきりわかる。
驚いたけれど、不思議と怖くはなかった。
久しぶりに、人に触れられた気がした。
次の日は緑を塗った。
今度は大きな手だった。
包み込まれるように握られ、少し力が強い。
指先が脈打つたび、何かの拍動と重なる。
手を引こうとしても離れないので、そのままにした。
オレンジを塗ったのは、寂しい夜だった。
小さな手が、指の先に触れた。
軽いのに、しっかりつかんでくる。
涙が出た。理由はわからない。
それから毎日、色を変えながら塗っている。
塗らないと、手がひどく冷える。
触れてくる誰かのぬくもりで、ようやく落ち着く。
今日も、赤を塗った。
乾く前に、手の甲にそっと触れる気配がした。
ただ静かに、重ねられている。




