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あの人が着ていた服の柄と同じハンカチを見つけた。

白地に、灰色の細い線が波のように走る模様。

どこにでもありそうなのに、見た瞬間に胸がざわついた。

あの日、血の気の引いた顔でその服を着ていたあの人の姿が、どうしても頭をよぎる。


最初は偶然だと思った。スーパーで買った安物のハンカチだし、同じ柄のものがあっても不思議じゃない。

でも、洗っても洗っても、その模様が少しずつ変わっていく気がした。

折り目の場所も、ほつれの形も、どこかで見たものに近づいていく。

あの人が落としたハンカチ――そう言われたら信じてしまいそうなほどに。


不安になって捨てた。

新しいハンカチを買った。けれど、袋を開けた瞬間、息が止まった。

同じだった。線の揺れ方、滲み方、すべてが。

しかも、ほんのかすかに、茶色い染みが増えている気がする。


その日から、どれを使っても同じ柄に見えるようになった。

職場で同僚に見せても、「全然違うじゃん、花柄でしょ」と笑われる。

彼らには違って見えている。けれど、私の目には、もう“あの”柄しか映らない。


数日後、夜更けに洗濯物を取り込んだとき、枕カバーの端に見覚えのある波模様があった。

指でなぞると、かすかに布の下が湿っている。

まるで、まだ乾ききっていない涙の跡みたいだった。


いま、カーテンを引いた。

その向こうの光の加減で、布全体に灰色の線が浮かんでいる。

目をこすっても、瞬きをしても、消えない。


――多分、もう止まらない。

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