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水筒の音
夜中、机の上から「ちゃぷん」と音がした。
時計の針が止まったような静けさの中で、水音だけが生々しく響く。
水筒の中は、さっき寝る前に入れたままの白湯だ。
揺れるはずもないのに、確かに水が動いた気配がした。
朝、蓋を開けると湯気が立った。
ぬるいどころか、まるで体温のような温かさ。
夜のうちに冷めたはずなのに。
気味が悪くて、その日は職場にも持っていかなかった。
昼過ぎ、机に戻ると、水筒の位置が少しずれていた。
誰かが触れたのかと思い、指でなぞると、底のあたりがしっとりと濡れている。
倒れてもいないのに。
不安になりながらも、夕方、ふたたび蓋を開けた。
中の水は、朝より減っていた。
翌晩、わざと耳を澄ませていた。
部屋の灯りを落とし、目を閉じる。
……ちゃぷん。
音は確かにした。
でも、今度は一度ではなかった。
呼吸のように、ゆっくりと。
ちゃぷん、ちゃぷん。
震える手で蓋を開けた。
暗がりの中、水面がわずかに上下していた。
冷たいはずの水が、指を近づけるとほんのり温かい。
そっと触れた瞬間、わかった。
——これ、水じゃない。
ゆっくりと、確かに脈打っている。




