蛍光灯
昼間でも薄暗い休憩室だった。天井に一本だけ取り付けられた蛍光灯が、古い換気扇の音に合わせるように、時折ちかちかと瞬く。
清掃の仕事を始めて三か月。夜勤にも慣れ、誰もいない時間の静けさがむしろ落ち着くようになっていた。
ただ、この蛍光灯だけが気にかかる。交換しても、すぐに点滅を繰り返すのだ。
同僚の田村さんが言っていた。
「ここ、前の担当が急に辞めたらしいよ。夜中に誰か立ってたって言って」
冗談半分に聞き流した。監視カメラにも人影なんて映っていなかったし。
その夜も、私はいつも通り休憩室で弁当を広げた。
蛍光灯が、また点滅する。
ぱち、ぱち。
音もなく瞬く光の下、自分の影が床に伸びている。
……もう一つ、あった。
床に、私と並ぶようにしてもう一つの影がある。
けれど椅子は空いていて、周りには誰もいない。
目を凝らすと、それは微かに揺れていた。呼吸のように。
瞬間、蛍光灯が消えた。
真っ暗な中で、どこか近くで誰かの息づかいがする。
スイッチを連打すると、光が戻った。
影は一つになっていた。私のだけ。
……ただ、妙だった。
影の形が少し長い。
腕の先が、さっきよりもずっと遠くまで伸びていた。
次の日、蛍光灯は点かなくなった。
交換しようと脚立を上ると、蛍光灯のカバーの内側に、くっきりと指の跡が残っていた。
焼きつくように、五本の黒い跡が。




