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筆箱

授業中、ふと机の上から小さな笑い声がした。 「フフッ」


思わず顔を上げる。前の席の子は真剣にノートを取っているし、隣も後ろも静かだ。教室全体に緊張した空気が流れていて、笑う理由などどこにもなかった。


気のせいかと思ってペンを取り出そうと筆箱に手を伸ばす。……その瞬間、また「フフッ」と聞こえた。今度ははっきりと、机の上から。筆箱から、だ。


慌てて開けても、中身は普通の鉛筆と消しゴム。何もおかしなものはない。


首を振って気を取り直す。だが次の日も、またその次の日も、授業中に同じ笑い声がした。タイミングはまちまちだが、必ず筆箱を開く直前か閉じた直後。周囲の誰も気づいていないらしい。試しに隣の友人に耳を澄ませてみろと囁いたが、彼は首を傾げるだけだった。


気づけば、筆箱を触るたびに緊張するようになっていた。ペンを取ろうとジッパーを開く瞬間、耳の奥がざわめく。閉じるときには、背中がひやりとする。いつ来るかわからないあの声を待ち構えてしまう。


放課後、自宅で課題をしていたときだ。机に置いた筆箱の前で鉛筆を削っていると、あの声がした。 「フフッ」


慌てて部屋を見回す。もちろん誰もいない。筆箱を睨みつけると、笑い声はもう聞こえなかった。中身はやはり普通だった。


……ただ、それ以来。夜に机で勉強すると、決まって背後からも筆箱のほうからも、あの小さな含み笑いが重なるように聞こえてくる。


もう、開けて確かめることはできない。

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