#4 山崎五十年 8
警視庁捜査一課から退職し探偵社を立ち上げ、その後引退した男が血なまぐさい生活から切り離された落ち着くBARを見つけたところから始まるストーリー。
縁を切ったはずの世界から舞い込む事件がまとわりつく……
BARから出ずに推理するテレワーク探偵のミステリー。
オレンジジュースのグラスにビールを注いだあと、静かにステアする。
ステア……?なんだ?明らかな専門用語だ。
なんだ、どういう動作をするんだステアとは。
サーバーからビールゆっくり注ぎながらその下に置いていた携帯電話の画面を凝視する。。ステアの意味を今度は検索したいがあまりにも不自然に映るだろう。字面から想像するしかない。悩んだ俺はビールを注ぎ終えた後のグラスをそっとカウンターに置いてじっと眺めつけた。
「ん?どうしました?」
そこから微動だにしなくなった俺をみてオッサンが話しかける。
「あ、いえ今ステアの真っ最中でして」
真剣にそう答えた俺にオッサンは冷静に
「いやそれステイだろ。注いだら軽く混ぜてもらえたらそれでいいんだよ」
とツッコんできた。混ぜるだけでよかったのか。注いで一、二分放置することだと思っていたが間違っていたようだ。
「あ、ああ失礼しました、どうぞ」
慌ててストローを手に取り軽く混ぜてグラスをオッサンに差し出した。
致命的だ、流石にバレたか……?
「いや、面白いね玉木さん」
オッサンはそう言うと笑いながらオレンジビアを美味しそうに飲み出した。バレなかった。
ジョークだと思われて終わった。とりあえずこの一杯を飲み干すまでは次の注文はないだろうし大人しくしてるはずだ。なんとかそれまでに買い出しに行くだのなんだのともっともらしい理由をつけてここを出ないといけない。次の一手をどうするか。決めかねていたとき
「玉木さん」
オッサンが話しかけてきた。
次回へ続く




