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#4 山崎五十年 7

警視庁捜査一課から退職し探偵社を立ち上げ、その後引退した男が血なまぐさい生活から切り離された落ち着くBARを見つけたところから始まるストーリー。


縁を切ったはずの世界から舞い込む事件がまとわりつく……


BARから出ずに推理するテレワーク探偵のミステリー。

「最初はビールでよろしいですか?」


グラスは目の前に並んでいるこれでいいだろう。いざ注ごうとして手が止まった。ビールサーバーがカウンター脇に二つある。どっちがどっちだ……?マズい、見分けがつかない。本物のバーテンダーなら蛇口の形か何かで判別できるのだろうか。しかし素人の俺には全く同一の物にしか見えない。手が止まり固まる俺をみてオッサンがみかねて声をかける。


「あ、ビールはそっちの方で。逆は黒ビールだから」

 

 

助かった。グラスにビールを注ごうとする。

 

その瞬間

 

「待った」

 

オッサンが止める。真剣な表情で。

 


何かしくじったか。グラスの持ち方か?いやちゃんと斜めに構えてたからそこは…


「やっぱりオレンジビアにしてもいいかな?本山さんがこないだオレンジジュース三本発注したつもりが三ダースって誤発注してすんごい積まれてたから大量に余ってるんだよね確か」 

 

注文の変更を指示してきた。


「ほら、カウンターの奥の方にある段ボール、あれがそうなのよ」

 

出入り口とは逆の方、おそらく控室や荷物置き場になっているゾーンに目をやると確かにオレンジの字が打たれた段ボールが目に止まる。


「冷蔵庫に一本冷えているのがあるからさ、それで作ってよ。」


 

話ぶりからしてオレンジビアとはどうやらオレンジジュースとビールを使って作る酒であることは確定だろう。だが割合や作り方がわからない。俺は下戸だから。呑んだくれで家庭を省みず、俺の給食費まで酒代にしたあげくお袋と俺を捨てた親父を変えた酒。だからそんな親父をクズにした居酒屋やバー、酒そのものが許せなくて俺は一滴もやらずにここまで生きてきた。結果俺も空き巣をやるほどクズに成り下がったがどうせ盗むなら憎い酒を金に変えてやると決めてここに入ったが

 

酒の知識の無さがここにきて仇となるとは夢にも思わなかった。どうする、どう切り抜ける。


「あ、ああ……本当だ。ネットで注文すると確かにそんなこと起こりますよね。誤タップとかも私もよくやるんで分かりますよ」 

 

 

そう言いながらさりげなく携帯電話を取り出し、素早く “オレンジビア 作り方”と検索をかけてカウンター下の冷蔵庫を開ける仕草のためにしゃがむついでにオッサンからは見えない位置に検索結果画面を開いたまま置く。


 

画面にはビールとオレンジジュースの割合が一対一と表示されていた。よし。半々ずつ注げばいいのがわかった。しかし次の一文にまた俺の身体が硬直した。

次回へ続く

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