#4 山崎五十年 6
警視庁捜査一課から退職し探偵社を立ち上げ、その後引退した男が血なまぐさい生活から切り離された落ち着くBARを見つけたところから始まるストーリー。
縁を切ったはずの世界から舞い込む事件がまとわりつく……
BARから出ずに推理するテレワーク探偵のミステリー。
「は、はあそうですか。しかし私この店での勤めは今日が初めてなのでどこに何の器具やお酒があるかもわからないのですが……」
そうだ、道具の場所がわからないと言えばオッサンがなんのカクテルを飲みたくても作れまい。
「あーあーいいよいいよ、本格的に作ってもらうのは本山さんきてもらってからで。それまではビールとかビアカクテルとかでいいから。うんそうしよう」
勝手に決めるオッサン。もはや完全にオッサンのペースに持っていかれている。店員ごと。
「まあまあ彼女すぐ来るから。大丈夫だから。それにそうこうしてる間にほら、ゲリラ豪雨も降り始めちゃったから」
本当にツイていない。外に目をやると雨音は確かにまだ聞こえないものの外は雨が理始めていた。
「電話先の本山さんのいたところはもうザーザー聞こえてたから間も無くここらもそうなるよ多分。この辺この店以外には喫茶店もなんも飲食店系はないからさ、ね」
傘も持っていない様子のオッサンを追い出すことはもう不可能に近いようだった。それならもういっそとっとと酔わせてその隙に買い出しに行くとかなんとか言って店員の女が来る前に抜け出すしかもう道は残されていなさそうだった。
「そ、そうですね、ではおかけください」
俺は諦めてオッサンをカウンターに座らせ、自身はカウンターの中に入った。リュックをそっと足元に置く。やはりさっぱりわからない。道具の場所はもちろんながらそれぞれの道具の使い方もわからないし、酒の名前を言われてもどのボトルのことかわからないものが大半だ。オッサンが高い酒を頼むならいくつかはわかる。しかし安いものについては知識が皆無だ。最初はビールと言っていたからその辺りはまだセーフだ。
次回へ続く




