#4 山崎五十年 5
警視庁捜査一課から退職し探偵社を立ち上げ、その後引退した男が血なまぐさい生活から切り離された落ち着くBARを見つけたところから始まるストーリー。
縁を切ったはずの世界から舞い込む事件がまとわりつく……
BARから出ずに推理するテレワーク探偵のミステリー。
「あ、もしもし本山くん?私私、オレオレ詐欺じゃないよ声で私ってわかるでしょ?そう、先生って今言ったね?ほらわかってんじゃないの。今フライングして先にお店ついてるんだけどさ、あとどれくらいで着く?三十分位?」
電話の相手はいつもこの店を開けるあの美人のようだった。三十分後と言えばこの店の開店三十分前だ。時間的にみて間違いないだろう。
「じゃ来るまで待ってていいかな?あのゲストバーテンダーさんもね、もう来てるのよ玉木さん。あ、そう。もう店の中にいるのよ二人とも、え?鍵?開いてる」
その一言に一瞬ヒヤリとさせられた。確かに関係者とはいえ一介のゲストが鍵を預かっているとは思えなかったからだ。
嫌な汗が滲み出る中でオッサンはどこ吹く風といった様子でなおも電話は続ける。
「あ、そうなの?じゃそうしてもらおう。中で待ってるから、そんじゃまた」
オッサンは電話をしまいながら俺に話しかけてきた。
「よかった、玉木さんが本山さんからスペアキー預かってもらってて。彼女あと少しでくるからお店の開店準備はあっちがきてからでいいって、それまで一足先に玉木さんにお酒作ってもらっていいってさ」
預けてやがった。ゲストバーテンダーに店の鍵預けてやがったあの女。どういう神経してるんだ。いやしかしそのおかげでピッキングでこじ開けた疑いは持たれずに済んだ。
が、
話の流れから事態はより最悪な方向へと向かったこともわかった。店員が来るまでオッサンが居座る。しかも俺がこのオッサンの接客をしないといけなくなった。
居座るな、オッサン。帰れオッサン。
次回へ続く




