#1 マッケンジーとディーサイド 4
警視庁捜査一課から退職し探偵社を立ち上げ、その後引退した男が血なまぐさい生活から切り離された落ち着くBARを見つけたところから始まるストーリー。
縁を切ったはずの世界から舞い込む事件がまとわりつく……
BARから出ずに推理するテレワーク探偵のミステリー。
「しかしこれだけでは流石の私も無理だよ」
男は私の服の裾に縋り
「そんな先生。このままじゃ何もかもわからないまま終わっちゃうから依頼料が。事務所の存続が」
「だからそこは引き継いだ段階で全て君の責任になるって言ったろう」
十年前、私は彼に自分の事務所を任せ一線を退いた。それからはずっと隠居生活を謳歌できると思っていたのに行き詰まるたびに彼はこうして私の元へ足を運ぶようになったのだった。
「役員側の親族は『行方不明の女が彼を殺して海に投げ捨てて逃げているんだろう』って訴えようとしているそうで。依頼者のご両親からは娘の無実を、できれば見つけて欲しいと」
想像位以上に厄介な内容だったため改めて事情を聞いたことを心底後悔した。
マッケンジーのハイボールを一口含んで薫りを楽しむ。
「引退しても全然ボケる暇がないね」
「ありがとうございます」
「褒めてないよ」
後継を彼にしたのは間違っていただろうか。
にしてもここまでの情報では何一つ正解に辿り着けない。確かにこの段回だと双方生きているのかどうかさえ断定できない。せめてちらかが見つかれば、特に彼女の方が見つかれば進展するのに。
「遺書には何て?」
「『墓まで持っていかねばならない秘密ができてしまった。』と」
遺書とも取れなくはないしただのメモとも取れそうな、
なんとも微妙な内容だった。
次回へ続く