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♯3 悪魔の取り分 9

警視庁捜査一課から退職し探偵社を立ち上げ、その後引退した男が血なまぐさい生活から切り離された落ち着くBARを見つけたところから始まるストーリー。


縁を切ったはずの世界から舞い込む事件がまとわりつく……


BARから出ずに推理するテレワーク探偵のミステリー。

三時間、そのくらいは経っただろうか。私達はまだバーにいた。

 

「先生、やっぱりネットはさっきのことで持ちきりです」

 

タブレット端末をニュースのサイトなどでひたすら検索しては何かヒントがないか、動きがないかを河口君は探し続けている。


「何が起きたんでしょうね、あの時…」


全くの他人事であるにも関わらずバーテンダーの本山君は親身になって身を案じていた。


程なくして私の胸ポケットから着信音が流れる。


「先生、今日は携帯電話持ってきてるんですね」 


河口君がそんなことを言っている傍で電話をとる。


「もしもし。俺だ」

 

電話の主は昔の同僚だった。

 

「おぉ、お前か、元気か」


思わず私は昔の感覚で声をかける。


「相変わらずだよ、仕事漬けだけどな」


「警部補に出世したんだってな。俺も警察辞めなかったらそこまで行かないにしてもコキ使われる身のままだったろうなあ」 

 

「もうあと十年で定年じゃ警部補だろうが警部だろうがもうどうでもいい。それより今夜起きた事件の話はもう知ってるかあれ?」

 

親しげに話すかつての同僚は挨拶の後にそう繋いで、


「あれって?」

 

「ほらあれだよ、ジェネリック…だっけ?歌舞伎役者みたいなメイクのバンドの…」

 

ハッとして私は河口君を見る。

 

「…新騒世鬼ネオンジェネシズ?」


「そうそれそれ。今現場検証に駆り出されちまってな」


あっさりした言い方に反して私は


「そこにいるのか今。ちょうどさっきまで私も中継観ていてね」


と思わず返してしまう。


「生放送中のを観ていたのか?いつの間にこんな趣味になったんだお前は」


「いや、私の趣味じゃないんだけどね。それはいいとしてそんなときに私なんかに電話していいのか?」


普通であれば捜査に集中すべきであろう時にとっくの昔に辞めた人間に呑気に電話をかけてくるこいつの気がしれなかった。

 

次回へ続く

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