♯2 甲州 10
警視庁捜査一課から退職し探偵社を立ち上げ、その後引退した男が血なまぐさい生活から切り離された落ち着くBARを見つけたところから始まるストーリー。
縁を切ったはずの世界から舞い込む事件がまとわりつく……
BARから出ずに推理するテレワーク探偵のミステリー。
「もしもし、お電話かわりました」
受話器の向こうからはこちらが指定した人の声がしてきた。先程の録音音声から聞こえてきた声よりもクリアに。
私は
「お忙しいところすみません、うちのものがついさっきあなたにインタビューをしたと思うのですが質問が漏れていたので私から直接伺ってもよろしいですか?」
声の主からは特に乱れた様子は感じ取れず
「ええ、構いませんよ」
と返事が来た。
「相当ご心配されているようですね。彼が誘拐された事」
「もちろんです、あなたもこちらにいらしてる探偵さんと同じ事務所の方なんですか?早く、早く坊っちゃまを助けてください」
「ええ、わかってます。だから私もうちのものと一緒に解決に向けて動こうと思いまして」
間を置かずに私は続ける。
「それで私から追加でお聞きしたいことがあったのですがよろしいでしょうか?」
相手側からは承諾をする旨の相槌が打たれる。
平静を保ったままの声だった。しかし次の質問の後から徐々にそれは失われていくことになるだろう。
「と、できればその前にそちらの電話をスピーカーモードにしてもらえますか?なるべくうちの者にも聞こえるようにして通話したいのでね」
こちらの指示通り向こう側では私の声が部屋にいるもの全てに聞こえるようになったのを確認すると私は切り出した。
次回へ続く




