第6章:大猪の襲撃
こんにちは、6話目です! いつも読んでくれてありがとう! 今回はついにあの猪が登場…! 朝4時に寮を襲うデカいヤツと、4人の即席作戦が始まります。マタギの知識が炸裂したり、アキラがアキラらしかったり、ドタバタ楽しんでもらえたら嬉しいです。後半はちょっとホッとする場面もあるので、猪のド迫力と一緒にのんびり味わってください。感想や応援、気軽に待ってます!
12月31日 朝4時:大猪の初襲来と即席の猪よけ
寮の一階にある木野カンパの部屋は、暖炉の残り火が薄暗く揺れるだけの静寂に包まれていた。カンパはベッドに横になり、毛布を首まで引き上げて眠りに落ちていた。
その時、ドスン!という重い音が床を震わせ、カンパの目を一瞬で覚ました。
「何!?」
彼は跳ね起きて耳を澄ませた。外はまだ暗く、時計の針は朝4時を指している。またしてもドスン!という音が続き、今度は窓ガラスがビリビリと震えた。カンパは慌てて靴を履き、部屋のドアを開けて廊下に出る。
「邦衛さん!何か聞こえました?」
声をかけた先には、邦衛さんがすでに階段の踊り場に立っていた。薄暗いランタンを手に持つその姿は、いつもと変わらない穏やかな表情だったが、どこか緊張感が漂っている。
「カンパ、起きたか。あれは…獣の音だな。でかいのが近くにいる」
「獣!?」
カンパの背筋がゾクッと冷たくなり、思わず邦衛さんの後ろに近づいた。二人は一階の食堂へと急ぐが、その途中でまたしてもドン!という衝撃が寮全体を揺らした。
食堂に辿り着くと、窓の外から異様な気配が漂ってくる。カンパが恐る恐るカーテンを開けると、雪に映る巨大な影が動いていた。軽トラックほどの大きさの猪が、鼻息を荒くして寮の外壁に体当たりしているのだ。牙が月明かりに光り、地面を掘り返すその力強さに、カンパは息を呑んだ。
「で、でかすぎだろ…!何だあれ!?」
「落ち着け、カンパ。慌ててもどうにもなんねえよ」
邦衛さんがランタンをテーブルに置き、冷静に言うが、その声にも微かな震えが混じっていた。
その時、二階からパタパタと足音が響き、種子島マタギがパジャマ姿でナイフを手に駆け下りてきた。彼女の目は鋭く、猪を見た瞬間、口元が引き締まった。
「猪だ。でかい。やっぱり縄張りから出てきてた。」
「あんなのどうすりゃいいんだよ?」カンパがいうと、マタギは一瞥して「考えてる。」と冷たく返す。
彼女は窓際に近づき、猪の動きを観察した。次の体当たりで壁がミシミシと悲鳴を上げ、食堂の空気が一気に重くなる。
「キッチンだ。物資使う」マタギが素早く言い、ナイフを手にキッチンへ走った。
キッチンに飛び込むと、マタギは棚を漁り始めた。カンパと邦衛さんが後を追い、アキラが浴衣姿で寝ぼけ眼に「イノシシ~!?」と目を擦りながら合流する。
猪が再び窓に突進し、ガラスが粉々に砕け散った瞬間、アキラが「キャア!」とカンパにしがみつき、二人は床に倒れ込んだ。
「落ち着けよ!」
「カンパっちだってビビってる~!」
「二人とも静かに」マタギが静かに、だが鋭い声を二人にかける、キッチンのカウンターに集めた物資を広げた。
塩の袋、唐辛子のパウダー、酢のボトル、そして賞味期限切れの缶詰から溢れた魚の臭い汁。
「猪は臭いと刺激に弱い。こいつで追い払う」
マタギは手早く鍋に酢を注ぎ、唐辛子パウダーを大量にぶち込んだ。次に缶詰の汁を加え、ナイフで缶を叩いて混ぜる。キッチンに強烈な酸っぱさと辛さが入り混じった臭いが充満し、カンパが「うっ、何だこの臭い!」と顔をしかめた。
「我慢しろ。効くから」
マタギは無表情で鍋をかき混ぜ、仕上げに塩を一握り加えた。「塩は獣が嫌う。昔、祖父が教えてくれた」
「それでどうするの~!?」アキラが目を丸くすると、マタギは鍋を手に窓際へ走った。
猪が窓枠に頭を突っ込み、唸り声を上げて暴れる。マタギは「下がれ」と静かに言い放ち、鍋の中身を猪の顔に豪快にぶちまけた。赤黒い液体が飛び散り、猪の鼻と目に直撃する。強烈な刺激に猪が一瞬動きを止め、鼻をブルブル震わせて後ずさった。
「今だ、外に誘え!」マタギが邦衛さんに目配せすると、彼がキッチンからゴミ袋を引っ張り出し、中の残飯を雪の上に投げた。
「これで気を引けるか…」
猪は酢と唐辛子の臭いに混乱しつつ、残飯の匂いに釣られて向きを変えた。唸りながら雪の中へ走り去り、寮は一時的に静寂を取り戻した。
息を切らす四人。
「助かった…?何をしたんだ、あれ…?」カンパが床に座り込見ながら聞くと、マタギは鍋を置いて言った。
「即席の猪よけだ。酢と辛味で鼻を狂わせて、塩で追い払う。けど、一時的だ。また来る」
「へあ…」アキラがへたり込み、邦衛さんが「よくやった、マタギちゃん」と笑うが、キッチンは臭いで充満し、全員が咳き込んだ。
「…先ず、片付けからだな…」カンパが弱々しく言うと、マタギが「私は夜が明け次第追跡、今から準備をする」と静かに返し、アキラが「ふぉお…GIジョーだあ…」と笑い出した。
窓の外では、雪が静かに降り続き、猪の足跡が不気味に残されていた。
12月31日 朝10時頃:マタギ帰還後のひととき
寮の食堂は朝の猪襲来の余韻が残り、割れた窓から冷たい風が吹き込んでいた。
木野カンパは箒を手にガラスの破片を掃き集め、時折「寒い…。」と呟きながら作業を続けていた。田中邦衛さんはキッチンで鍋を洗い、鼻歌を歌いつつ「まぁ、猪も大変だよなあ」と呑気に笑っている。
ソファに寝転がった柄本アキラは、ギャルらしいピンクのネイルを眺めながらスマホを弄っていた。この寮は圏外なので写真でもみているのだろう。
のんびりした声で「あ~、マジでさっきの猪ヤバかったねぇ。夢かと思ったよお。」と言うが、その口調は危機感ゼロ。
「お前、夢だと思ってたなら何で叫んでたんだよ!」カンパが箒を止めて突っ込む
「だってビックリしたんだもん~。」アキラはだらっとした笑顔で返す。彼女はドテラを着ているものの浴衣は緩くはだけ、足を投げ出してソファを占領している姿は、まるで自宅にいるかのようだ。
「ったく、お前ってほんと危機感ないよな…」カンパが呆れ顔で言うと、邦衛さんが「まぁまぁ、アキラちゃんらしいよ」とフォローに入る。
その時、玄関のドアがギィと開き、雪まみれの種子島マタギが戻ってきた。彼女の猟師ジャケットには雪がこびりつき、手にはナイフとロープが握られている。顔はいつも通り無表情だが、眉間にわずかな疲れが滲んでいた。
「あ、マタギちゃん!おかえり~!」アキラがソファから身を起こし、のんびり手を振る。マタギは一瞥して「ただいま」と呟き、雪を払いながら食堂に入った。
「どうだった?足跡追えたのか?」カンパが箒を置いて聞くと、マタギはコートを脱ぎながら短く答えた。
「追った。でかいの確認した。けど、雪が深すぎて断念した。また来るかもな」
「また来る!?マジかよ…」カンパが顔をしかめると、アキラが「えぇ~…またあの大きいの来るの?」と怯えつつもだらっとした声で反応。マタギは彼女を無視し、暖炉に近づいて手を温めた。
「とりあえず罠を仕掛ける。昼までになんとかする」マタギが言うと、邦衛さんがキッチンから顔を出し、「腹減ったろ?何か温かいもん作るよ」と提案。マタギは「なんでもいい」と頷き、カンパが「俺も手伝うよ」と立ち上がった。
アキラはソファから動かず、「ねぇマタギちゃん、猪って食べれるの?」と唐突に聞く。マタギが振り返り、「食える。けど、あれはでかすぎて硬いだろうな」と淡々と返す。
「えー、でも~焼いたら美味そうだよねえ、バーベキューとかしたいねぇ」アキラが目をキラキラさせると、カンパが「バーベキュー…。」と今朝見た大猪の迫力と結び付かなそうなのんびりした空気を頭に漂わせる。
「のんびりしたいねぇ~、大晦日だしぃ」アキラが笑うと、邦衛さんが「あは、いいねぇ。猪退治したら考えようかあ」と乗っかる。
マタギは「ふん」と鼻を鳴らしつつ、暖炉の火を見つめた。
邦衛さんがキッチンでマタギのフレンチトーストとみんなのココアを温め始め、カンパが皿とカップを並べる。
アキラはソファで「ココア~!」と喜び、マタギに「ねぇ、マタギちゃんも飲むでしょ~?」と絡む。
「私はいいよ。」マタギが真面目な顔で返すが、アキラは「えー、飲みなよぉ、あったかいよぉ」とのんびりした口調で迫り、結局マタギが渋々カップを受け取る。
四人が暖炉の前に集まり、ココアを手に持つと、しばしの静寂が訪れた。アキラが「ねぇ、大晦日ってやっぱり、こうやってのんびりできればいいよねぇ」と呟き、カンパが「のんびりって…猪が来てなきゃなぁ。」と返すが、どこか笑顔になっていた。
フレンチトーストを食べているマタギは無言でココアを飲みつつ、窓の外の雪を見やった。足跡の記憶が頭をよぎりつつも、この一瞬の穏やかさに少しだけ安堵を感じていた。
6話まで読んでくれてありがとう! 大猪の初襲来、いかがでしたか? マタギの即席猪よけとか、アキラの「キャア!」とか、書いてて笑いながら緊張してました。朝10時のココアタイムは個人的にお気に入りで、4人の空気がちょっと温かくなった気がします。けど、猪はまた来るっぽいし…次はどうなるかな? アキラのバーベキュー案も気になるよね。感想や「マタギかっこいい!」みたいなコメント、ぜひください。次も頑張ります!
7章はエイプリルフール4/1夜8時公開です!ホントだよ!よろしくお願いいたします!