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第4章:騒がしい闖入者

こんにちは、4話目です! いつも読んでくれてありがとうございます。今回は静かな寮が一気に騒がしくなります。新キャラ登場で、カンパとマタギの反応が…どうなるかお楽しみに。猪の足跡もじわじわ近づいてるみたいだし、冬休みが穏やかじゃ済まなさそうですね。初めての方もここからでも楽しめるように書いたつもりなので、気軽に読んでみてください。感想、応援、待ってます!

12月29日 夜:柄本アキラの登場


怯えた乱入


12月29日の夜8時頃、寮のロビーではカンパと邦衛さんが将棋を指し、マタギが暖炉のそばでスープを飲んでいた。穏やかな時間が流れる中、玄関の方からかすかに声が聞こえてくる。


「誰か…居ますかー?」


女性らしい甲高い声に、カンパが「ん?」と将棋盤から目を上げ、


「はーい」


気軽に返事をして玄関へ向かう。マタギが「誰だ?」と怪訝そうに呟きつつ後を追うと、玄関には雪まみれの人物が立っていた。


そこに立っていたのは、変に歪な体型に黒いダウンジャケットを羽織った人物が。


金髪ロン毛が雪で濡れマスクで顔を半分隠している、目がキョロキョロと怯えたように動いている。カンパを見るなり小さく「ぅゎ…どうしよ」と呟き、慌てて声を低くして、


「オレは銀行強盗だ!しばらくここに居させてもらう!」と威嚇するように叫ぶ。だが、その声は震えていて、明らかに無理をしている。続けて


「無理ならここに来た事を黙ってて欲しい!!」


非常に間の抜けた台詞で玄関で騒ぐ人物の声を聞き後から出てきたマタギが一瞥し


「バカ。山に逃げれば獣に食われるか、寒さで死ぬかのどっちかだ。そんなので生き延びれると思ってるのか?」冷たく切り捨てる。


奇妙な人物は「うぅ」と泣きそうな声で唸り、肩を震わせてうつむく。手に持ったビニール袋をぎゅっと握り、怯えと疲れで今にも倒れそうに見える。


カンパは内心、『マタギに色々教わってばっかで、男らしいとこ見せたいけど…こういう時、どうすりゃいいんだ!?』と焦る。強盗と聞いて一瞬身構えたものの、目の前の人物の情けない様子に「え、待て…これ、どう対応すれば…?」と困惑するばかりだ。


「おや、騒がしいな。」

そこへ、邦衛さんが手を拭きながら談話室から出てくる。


謎の人物が持つビニール袋を覗き込むとそこには紙幣らしきものが見えるが、邦衛さんは歪な体型の正体である肉襦袢とダウンジャケットの奇妙な組み合わせを見て「おお…」と笑い声を漏らす。


カンパとマタギはまだ肉襦袢に気付いておらず

「あれ… お金入ってるぞ?」と驚くが、邦衛さんの余裕ある態度がさらに2人を混乱させる。


肉襦袢が震える手でポケットからナイフらしきものを取り出した。


カンパが「危ない!」と反射的にその腕を掴む。


「キャア!!」


甲高い悲鳴を上がり、肉襦袢はあっさり転んでしまう。カンパは内心『あれ? 弱い…?』と拍子抜けしつつ、肉襦袢の手から落ちたナイフを拾う。


「これ…おもちゃじゃん。刺すとシャコンって沈むやつ」


カンパがナイフをシャコンと動かすと、肉襦袢が「かえしt…返せ!」と叫ぶ。最初は女性らしい声が漏れたが、慌てて男声を装うも、すでに動揺が隠しきれていない。



カンパに掴みかかろうと立ち上がる肉襦袢、溶けた雪で床が滑り、「キャア!」と再び甲高い叫び声を上げ前のめりに倒れる。

カンパが「え!?」と避けきれず、二人はドンッとぶつかり、肉襦袢のマスクがずれて唇がカンパの唇に触れた。


「なん…えぇ!?」

カンパが飛び上がり、袖で口を拭きながら叫ぶと、肉襦袢が「ごめ…」と小さく呟き、床に座り込んだまま顔を赤くする。


「カンパ! 大丈夫か?」

マタギがカンパに駆け寄るが、「大丈夫…っていうか、何!? この状況!?」

カンパは混乱の極みに。



「ああもう、風邪引いてしまうぞ。」


邦衛さんが肉襦袢をそっと起こし穏やかに言う。そしてカンパの肩を叩きながら「落ち着けよ」となだめつつ


「カンパ、談話室にお茶とお菓子用意してあるから、マタギちゃんと行ってな」


肉襦袢には「ほら、お前も温まらないとダメだ」と優しく声をかけ、戸惑う彼女を風呂場へ案内しに行く。


「え、ちょ、邦衛さん…?」


カンパが呆然とする中


「なんだったんだ…」

マタギがおもちゃのナイフを手に持ったまま呟く。二人は訳が分からないまま談話室へ向かうが、カンパの頭は「キスされた…? 強盗なのに弱い…?」でいっぱいだった。



邦衛さんに連れられ、風呂場前の廊下にたどり着いた肉襦袢。


「女子用の風呂用品だよ。もうみんな入ったから、遠慮しないでゆっくりしてな!」


邦衛さんがタオルとシャンプーを渡すと、肉襦袢は「……え?」と立ち尽くす。


肉襦袢とダウンジャケットに包まれた彼女は、怯えと混乱で固まったままだ。


邦衛さんがニコニコしながら去ると、一人廊下に残された。

『どうしよ…バレちゃう…でも…』と心の中で葛藤していた。




12月29日 夜:談話室での一幕


談話室に戻ったカンパとマタギは、暖炉のそばのテーブルでお茶を飲んでいた。カンパは湯呑みを持つ手を震わせながら


「何だったんだ… 強盗がキスしてきて…おもちゃのナイフで…?」


頭の中が情報過多で整理がつかない。


マタギも無言で茶を啜りつつ、「あのバカ、何なんだ…」と眉を寄せ、二人とも言葉が切り出せないまま沈黙に包まれる。


暖炉の火がパチパチと音を立てる中、奇妙な緊張感が漂っていた。



マタギが気まずさを紛らわすようにテレビをつけると、ちょうどニュースが流れ始める。


「本日夕方、山麓の銀行で強盗事件が発生。犯人は身長175cm程度、黒いダウンジャケットを着た男性とみられ、現在逃走中」との報道が。カンパとマタギは同時に顔を見合わせる。


「これ、間違いなくさっき玄関で見た奴だ…」


「え、マジで!? 男って…でも声、女っぽくなかったか?」


二人はテレビに視線を戻し、頭の中で「あの肉襦袢の強盗」が報道と一致するのか考え込んだ。



そこへ、邦衛さんがキッチンから忙しく動きながら現れる。


「ヨイショイショイ、とお!」


声を上げ、オムライスとスープをテーブルに並べていく。ケチャップで「おいしいよ」と書かれたオムライスを見て、カンパが驚くが邦衛さんは「そろそろ出てくるかなあ」とニコニコしているだけだ。


「邦衛さん、ちょっと待って! あいつ強盗で…?」


邦衛が両手を上げカンパを制止した。そして微笑みながらやや熱が入った身振り手振りを合わせてカンパに言う。


「あのな、生きてると色んな事情っていうのがあるんだ。オレはさあ、世間様がどんなに悪いって言う事をしてる人でも、その人がいい人か悪い人かって言うのは…その、関係ないと思うんだよ。


オレにはさあ、あの子がそんなに悪い子には見えなかったんだよなあ。」



カンパははっとして邦衛さんの言葉を反芻する、マタギも「…一理ある」と警戒を少しほぐした。



3人のやり取りからやや間をおいて廊下の引戸がガラッと開いた。


カンパとマタギが反射的に身構えるが、そこに立っていたのは浴衣姿の長身の女子だった。さっきは手袋で隠れていた手にはネイルが施され、金髪ロン毛がギャル系そのもの。

肉襦袢とダウンジャケットを脱いだのんびりしたギャルが、モデルのようなスタイルで立っている。カンパは「 誰?」と目を見開き、マタギも「…別人か?」と一瞬疑う。



「あ、あの~…。」小さく声を出すギャル


「おー、来たねえ! ご飯作ったから食べて!あと名前教えてくれると嬉しいなあ」


邦衛さんが明るく迎え入れる。


「え、柄本アキラと言います~」


「アキラちゃん!」アキラを椅子に座るよう促す邦衛さんの態度があまりに自然。


「待て待て、色々言いたいことあるんだけど!」

カンパは強盗の件以外の諸々に口を開きかけるが、邦衛さんがまるで明るい父親のように「ほら、座って座って」と仕切るので割り込めない。

アキラも困惑しつつ、目の前のオムライスを見た瞬間、お腹が「グゥ~…!」と盛大に鳴り響く。


「ほーら、食べてー?」


邦衛さんの優しい声に、アキラが「い、いただきます」と小さく呟きスプーンを手に持つ。カンパは怪訝そうにアキラを見つめ


「ダメだ、何も分からん…」


思考を諦めた、マタギはテレビの報道チャンネルを変える、お笑い芸人達が楽しげにコントを披露していた。



談話室にはテレビの音と、アキラがオムライスを食べるカチャカチャという音だけが響いていた。だが、不意に別の音が混じり始める。


「ふえ…んぐ…ヒック…んん…」


アキラが大粒の涙をポロポロ流しながらオムライスを食べている。金髪ギャル系の見た目とは裏腹に、泣き声が子供っぽく、カンパは女子の涙に困惑を深める。邦衛さんが「お腹空いてたんだもんなあー? おいしいかあ?」と優しく聞くと


「おいっ…おいしい…ヒック」手の平で目を拭いながら金髪ギャルが答える


カンパは頭をかき、マタギが「全部が騒がしいやつだ」とポツリ呟く。

テレビでは依然としてお笑い芸人のコントが流れ、アキラの涙とオムライスのコントラストが奇妙な空気を作り出していた。


ここで、邦衛さんがカンパとマタギに目を向け


「お前ら、ちょっと悪いけど、倉庫から毛布と予備の枕持ってきてくれねぇか? アキラちゃん今夜泊まるなら、準備しとかないと」と穏やかに頼む。


「え、今ですか?」カンパは戸惑うが、邦衛さんの「頼むよぉ」の笑顔に押され、「…分かりました」と立ち上がる。マタギも「仕方ないな」と渋々ついて行き、二人は談話室を後にする。




カンパとマタギが談話室を出ると、アキラはオムライスを食べながらまだ涙を拭っている。

邦衛さんが暖炉の火を調整しながら口を開く。


「アキラちゃん、どうしたんだい? お腹空いてただけじゃ泣かないだろ」


アキラはスプーンを止めて、しばらく黙った後、小さく呟く。


「…母ちゃんが…過労で…」


邦衛さんが「おお」と目を細め、アキラの隣に腰を下ろす。


「それで何か大変なことしちまったのかい?」と穏やかに聞くと、アキラが「うぅ…言わないでください~…バカなことしただけなんで…」と涙をこらえる。


「銀行のことかい?」

邦衛さんが静かに言うと、アキラがビクッとして顔を上げる。


「え、どうして…?」


「ニュース見てたし、ビニール袋にお金入ってたからなぁ。まぁ、そういうこともあるよ。生きてれば色んな事情があるよなあ」邦衛さんは穏やかな笑みを浮かべる。


アキラは目を丸くして、

「おじいちゃん…怒らないんですか~?」


「怒らないよお。オレにはさ、アキラちゃんがそんな悪い子には見えないよ。母ちゃん思いで、ちょっとバカやっただけだろ?」


「…!…うぅ…むぇ…ヒック…。」また泣き出すアキラ。


「ほらほら、泣くなよお。オムライス冷めちまう」


邦衛さんがアキラの肩を叩き優しく締める。


「何かあったらオレに話してくれればいい」


アキラはコクコク頷き、オムライスを食べ続けた。




談話室を出たカンパとマタギは、寮の渡り廊下を歩いて倉庫へ向かう。冷たい風が窓の隙間から吹き込み、カンパがコートの襟を立てながらポツリと呟く。


「なぁ、マタギ。あいつ、強盗なんだろ? いくら泣いてたってさ、簡単に信じていいのか分かんねぇよ…」


カンパの声には警戒心が滲み、懐中電灯の光が揺れる中、彼の表情は硬い。


マタギは無言で歩き続け、倉庫のドアを開けてから棚に近づき、淡々と口を開く。



「山の生き物見てるとさ、見た目で判断するの危ないって分かる。狼だって子育てする時は優しいし、猪だってただ生きてるだけだ。


さっき邦衛さんが言ってた言葉…『生きてると色んな事情がある。世間様がどんなに悪いって言う事をしてる人でも、その人がいい人か悪い人かって言うのとは関係ない』って。


ああいう事も確かにあるよ」


カンパが「え?」と立ち止まり、マタギを見やる。マタギは棚から毛布を取り出しながら続ける。


「祖父ちゃんも言ってた。山じゃ見た目や聞いただけの話で決めつけたら生きていけないって。

邦衛さんがあんな風に言うなら、ちょっと考えてもいいと思う。」


カンパは毛布を受け取り


「…確かに、邦衛さんって変なとこで鋭いよな。あの人が悪い奴じゃないって言うなら…少し様子見てみるか」


警戒心は完全には消えないが、マタギのクールな視点と邦衛さんの言葉を思い出し、少し気持ちが緩む。


「まぁ、お前がそう言うなら」とカンパが強がり気味に言うと、マタギが「お前が決めるだけだ」とクールに返す。


二人は微妙な空気の中、毛布と枕を抱えて談話室へ戻った。




倉庫から戻ってきたカンパとマタギが談話室のドアを開けると、アキラは涙を拭いてオムライスを食べ終え、邦衛さんがお茶を淹れているところだった。


「お、お疲れさん」と邦衛さんが笑顔で迎え、カンパが「これでいいですか?」と毛布を置く。


邦衛さんが二人を暖炉のそばに呼び、「ちょっと座ってくれ」と言う。カンパとマタギが怪訝そうに腰を下ろすと、邦衛さんがアキラをチラッと見てから言葉少なく呟く。


「アキラちゃんさ、良い子だよ。色々あったみたいだけど、悪い子じゃない。オレがそう思うだけでもいいか?」


カンパが「え、でも…」と言いかけると、邦衛さんが「まぁまぁ、事情ってもんがあるんだ」と微笑んだ。


マタギは倉庫での会話を思い出し、「わかった」とポツリ呟く。カンパも「邦衛さんが言うなら悪い奴じゃないのかも…」と、倉庫でのマタギの言葉が後押しとなり納得する。


アキラは「え、私のこと~?」とキョトンとするが、邦衛さんが「ほら、アキラちゃんも仲間だ。明日から仲良くやってくれよ」と笑う。



カンパとマタギはまだ少し困惑しつつも、邦衛さんの穏やかな態度と倉庫でのやり取りで、ひとまずアキラを受け入れる気持ちになる。


邦衛さんが突然立ち上がり

「よし、せっかくだから今夜はアキラちゃんの歓迎会だ! オレなんか作るからさ、お前らも何か出し物、考えてな!」


「え、出し物!?」カンパが慌て、マタギが「それは…」と呟くが、邦衛さんの「面白そうだあ」の勢いに押される。


「え~、歓迎会って私~!?」


泣き腫らした目を丸くするアキラ、次第にその目をキラキラさせて

「ロード・オブ・ザ・リングみたい!ご飯とパーティ!」とテンションを上げる。


「ロード・オブ・ザ・リングは知ってるぞぉ、前に見たから」

邦衛さんが笑い、キッチンへ向かって行った。


「誰がホビット族だ…」

カンパは呆れつつ、マタギに「何かやるか?」と聞くと、「お前がやれ」と冷たく返される。



結局、邦衛さんがお茶とクッキーを追加で用意し、談話室に簡易な「歓迎会」がスタート。


何か吹っ切れたのか、アキラは「ごーあへっど!めいくまいでい!」と映画の台詞を口走る。

「そういうシーンじゃないだろ…」カンパは突っ込み、マタギが無言でクッキーを食べる。


邦衛さんが「仲良くなぁ」と笑顔で見守る中、歓迎会は賑やかに進む。外では雪が吹雪き始め、窓の外を覗いたアキラが「何かデカい音した気がする~」と何気なく言う。

カンパが「え?」と反応するが、マタギが「風だろ」と流す


アキラがお茶を飲み終え、クッキーを手に持つと、突然マタギの方を向いて目を輝かせる。


「ねぇ、マタギちゃんってさ~、山で生きてけるんだよね? 超カッコいい~! 『ランボー』みたい!」


マタギはクッキーを口に入れたまま、「…誰だそれ」と無表情で返すが、アキラは気にせず身を乗り出す。


「ほら、『ランボー』! 森で罠作って敵倒してさ、マタギちゃん絶対できるよね!?」


カンパが「敵はいないだろ、ここ」と笑いながら突っ込むが、アキラは太陽の様に笑い、マタギの隣に詰める様に寄る。


「ねぇ、マタギちゃん、私にも何か教えてよ~! 火起こしとか罠とか!」


マタギは「騒がしいなぁ」と一言で切り捨て、お茶のおかわりを取りに行くが、アキラが立ち上がって後を追う。


「マタギちゃんってさ、無口だけど優しいよね~。さっき玄関で私のことバカって言ったけど、ちゃんと気にしてくれてたし」


キッチンまでついてきたアキラはニコニコ笑う。マタギはお茶を汲む手を止めて、「…別に」とそっぽを向くが、耳が少し赤くなっているのをアキラが見逃さない。


「やだ~、照れてる~! 絶対いい人じゃん、マタギちゃん!」とアキラがピョコピョコ跳ねて喜ぶ。


まるでボス犬に絡む子犬だ。


談話室に戻ったアキラは、マタギの隣にピッタリ座り直し

「ねぇ、マタギちゃん、 山で熊とか出たらやっぱり戦うの?、『あいあむヘラクレース!』って感じで!」。


マタギが「なんだそれ?」と返すが、アキラニコニコとマタギの腕に軽く抱きつく。

「お、おい、離れろ」とマタギが慌てて腕を振るが、アキラは「やだ~」とさらにくっつく。


カンパが「急に仲良くなった」と驚きつつ笑うと、邦衛さんが「あは、マタギちゃん懐かれたなぁ。アキラちゃん、人が分かるんだなぁ」とニヤニヤ。


「だってマタギちゃん、カッコいいもん~! 私、弟子入りしたいくらい!」とアキラが言うと、マタギが「弟子。やめろ」と呆れつつ、お茶を飲んで誤魔化す。


「じゃあさ、マタギちゃんのサバイバル技、私に一つ教えてよ~! 今ここで!」


マタギがため息をつき、「…クッキーの包み紙で火起こしの練習でもしろ」


「え~、マジで~!?」と興奮してクッキーの包み紙を手に取るアキラ


カンパが「待て、火事になるって!」と慌てて止める。談話室は一気に笑いと騒ぎに包まれる。



アキラのマタギへの懐きっぷりに場が和み、歓迎会は賑やかに。

中でもアキラがロボットの様な歩き方をして立ち止まり、振り向き様に


「おーけー、ぴるぐりむ」と言った瞬間、


「ジョン・ウェイン!」

「レオン!」


邦衛さんとカンパが答えてから始まった映画当てクイズはかなり盛り上がった。


映画をあまり観た事がないマタギだったが無言でクッキーを食べつつ、楽しむアキラの腕を振りほどくのを諦め、分からないなりに3人のおかしい動きの出題を楽しんでいた。


マタギが場を作りアキラがふざけてカンパがツッコむ。

もう役割の決まった3人を見て邦衛さんが「アキラちゃん、この子達のこと気に入ったんだなぁ」と笑うと、アキラが「うん!」と返す。




外の吹雪が強まっていく中、邦衛さんが切り出す


「さて、アキラちゃん、今夜はどうするんだい? この吹雪じゃ帰れないだろお」


「え~、うそ、私どうしよう~!」


すると邦衛さんがニヤリと笑い


「なぁマタギちゃん。アキラちゃんを今夜、マタギちゃんの部屋に泊めてやってくれねぇか?」


マタギがお茶を飲む手を止め、「…何?」と低い声で聞き返す。カンパも驚いて聞き返した。


「え、邦衛さんマジですか?」


「ほら、アキラちゃん、マタギちゃんに懐いてるし女の子同士だしなぁ。オレの部屋は物置みたいで狭いし、カンパの部屋じゃ落ち着かねぇだろ?」


邦衛さんは終始穏やかに続ける。


アキラが「え~、マタギちゃんの部屋!? 」と目を輝かせ、マタギに「 お泊まり会みたいで楽しそう~!」と迫る。


「待て、勝手に決めるな」

マタギは拒否姿勢を見せるが、邦衛さんが「頼むよぉ、マタギちゃん。アキラちゃん一人じゃ不安だろ?」と畳みかける。

カンパが「確かに、アキラ一人じゃ何かやらかしそうだし…」と笑うと、散々アキラに揉みくちゃにされたマタギは、揉みくちゃ犯人の顔を見やるが、逆にキラキラした瞳に押される。


マタギはため息をつき


「…仕方ない。一晩だけだ」


渋々頷く。アキラが「やった~! マタギちゃんと一緒!」と跳ねて喜び、マタギの腕にまた抱きつく。マタギが「だから離れろ」と振りほどこうとするが、アキラは「やだ~!」と笑う。邦衛さんが「ほぉ、決まったなぁ。仲良くやってくれよぉ」と満足げに笑う。



歓迎会はさらに和やかに進み、アキラが「マタギちゃんの部屋ってどんな感じ~? サバイバル道具いっぱいあるの~?」と質問攻め。マタギが「寝るだけだよ」と返すが、アキラは「絶対楽しいよ~!」とテンションが止まらない。


「マタギ、今日は眠れなさそうだな」とカンパがからかうと、マタギが「黙れ」とカンパにも冷たく返すが、どこか諦めた表情。


「じゃあ、そろそろお開きだなぁ。毛布と枕はもう用意してあるから、マタギちゃん、アキラちゃんを頼むよぉ」邦衛さんが締めくくる。


アキラが「おじいちゃん、ありがとう~!」と礼を言い、カンパが「何だかんだで楽しい夜だったなあ」と呟いた。


外の吹雪が強まる中、マタギはアキラを連れて部屋へ向かう。アキラが「マタギちゃん、寝る前におしゃべりしようね~!」と言うと、マタギの「寝ろ」の声が廊下に響き、カンパと邦衛さんが笑い合う。


その夜、マタギの部屋ではアキラが「マタギちゃんってさ~」と話し続け、マタギが枕を被って寝ようとする


『こいつ…悪い奴じゃない…んだけど…』


突然の来訪者との相部屋に今まで一人でいることが多かったマタギは慣れない感覚に戸惑っていた。

4話まで読んでくれてありがとう! アキラの乱入、いかがでしたか? 個人的には彼女のマイペースっぷりと、振り回されるカンパたちが書いていて笑えました。

生徒の心を支える邦衛さんのナイスガイっぷりを書くために北の国からとトラック野郎見直しました!面白くて完走してたよ…!


次はもっと山での展開が増える予定なので、猪の影とかサバイバル要素とか、楽しみにしてもらえたら嬉しいです。マタギとアキラの絡みも増えそう。感想や突っ込み、ぜひぜひコメントください。次も頑張ります!


5章は3/25夜8時公開です!よろしくお願いいたします~!

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