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種子島マタギの物語(後編)

マタギちゃんの過去!後編です!

叔母と想い合うすれ違いのお話


どうぞ!


3/20 描写不足のところを加筆訂正しました。

中学2年の3月、マタギは神奈川にある叔母夫婦のマンションから出られなくなっていた。


ストレートボブで揃えていた髪も肩甲骨辺りまで伸び、今日もカーテンを締め切り、動けないまま終わっていく自身の人生をただ潰していくのか。



唐突に扉がノックされ、怯えたマタギは布団を被る。穏やかにシズカが語りかける。


「マタギちゃんおはよう、ここはあなたの家だから安心してね。私今日から明後日まで出張だけど、もう少ししたらタケルさんが旅行から帰ってくるから…その…。とにかくいってきます。ご飯食べてね。」


そう言い残し出ていった。


タケルとシズカはこんなマンションに住んでは居るが2人揃う事は珍しい。


シズカの出張は珍しいがタケルが旅行に行くのはもっと珍しい。タケルは普段あまりここに居ないのだ。



『タケルさんどこに行ったんだろう…。』


家から人がいなくなり少し気が休まるマタギ。


そう言えばタケルが出掛ける少し前、口論という程ではないがシズカとタケルが議論をしているようだった、きっと自分の事だろうと思い憂鬱になる。




何分経っただろうか、玄関の鍵を空ける音がして、続いてガサガサとビニールを運ぶ音がする。



「マタギちゃん、ただいま~!」


タケルだ、マタギは再び布団を被る。


ガサガサと音を立てながらマタギのいる部屋の前に立つタケル。


「マタギちゃん、見てほしい物があるんだけど入って良いかな?」



布団から顔を半分だすマタギ、何も気にしてないと言った様なタケルの声は気にはなるが…どうしてか声が出せない。



「シズカが居ないから言えるけど、僕もそうなった事があるよ。部屋に入るけどそのままで良いから、着替えしてたりしてないよね?」


タケルが言ったのは今着替え中か?と言う話なのだろうが、マタギは別の意味で捉える、どっちにしても手遅れだが。



ガサガサと音を立ててタケルが入ってきて正座で座った。


「ごめんね、実は霧峰の山に行ってきたんだ。」


唐突に焦がれていた故郷の名前が出てきてマタギは布団から出る。こうなる前から思い出さなかった日の無い名前だ。



「ぁ…ぅ…。」


色々聞きたい事があるが声がでない。


家は壊れてないか、誰か買ってしまったのか、


祖父の山は…荒れていないか…



「声でないよねぇ。実は相続の手続きに行ってきたんだ。あ、家とか山は近所の学校の用務員さんがずっとちゃんとやってくれてたよ。すっごいいい人だった。」


その言葉を聞いてマタギが目を見開く。



「じ、じいちゃのやま…まだ…ある…?」


「やっぱりそうだよね…シズカとも話したんだ…僕たち間違えてないか?って。」



そう言うとタケルがゴソゴソと袋からマタギの見慣れたジャケットを取り出した。



源次郎のジャケットだ。


マタギは物心ついた頃からこのジャケットの背中を追ってきた。錯覚であれ、祖父が迎えに来てくれた様な安心感を覚える。


「ぁ…ぁ…」


ろくに動いていなかったマタギがボロボロと涙を流しながら布団から出たのを確認して、タケルが源次郎のジャケットをマタギに渡す。


そして正座のまま頭を下げる。



「本当に…申し訳なかった。」


涙でぐしゃぐしゃになった顔で源次郎のジャケットを抱きながら、マタギは驚いた顔でタケルを見る。


「山から連れてきてマタギちゃんが体調崩した時に気付くべきだったんだ、それを…今日から僕らは親だとか浮かれたり、周りを気にして君が慣れるのを待とうとか…


…これが正しいと思ってしまったんだ。


人が大事に思っている事を親切のつもりでねじ曲げる酷さは…僕だけは分かってなきゃダメだったのに。」



タケルは泣いている。


マタギにはタケルに何があったのかは分からない、だけど自分を引き取ったのは間違いなく自分を想ってくれた結果だと言う事は分かる。


その優しさに答えられなかった自分の弱さも。



「わ、たしも…ご、ごめんな、さい」


マタギが源次郎のジャケットを抱きながら涙を流し、タケルと同じように謝る。タケルは慌ててやめさせる。



「子供がさあ…!そんなこと気にしちゃだめなんだ!ホンッッット!ごめん!」


息を切らして泣きながらタケルはマタギの目を見て言った。


タケルは息を整えて、「ご…ごめんね。」そう言って鞄からファイルを取り出してマタギに見せる。



相続人欄に種子島マタギ 法定代理人 種子島 タケル



と書いてあった、マタギは意味が分からず首をかしげるが。タケルが


「お祖父さんの家と山を、マタギちゃんが継いだってこと。」


と言うと、マタギは唖然とした顔で


「か、かえ、れるの?」


タケルは首を縦に振る


「シ、ズ、カさん、は?」


マタギはとても良くしてくれた叔母が気になった、源次郎がいない今、自分だけが彼女の肉親なのだから。


だがタケルが晴れやかな笑顔で言う。


「すっごい寂しがったけど、良いんだ!君が幸せじゃなきゃ、僕らは親だとか言えない!」



実はシズカの出張は嘘であった。


マタギの心配通り、かつて災害でマタギの父である兄を無くした彼女にとって唯一の肉親であるマタギが帰る事は、子供のいない彼女には寂しすぎた。


笑顔で送り出す自信がなかった為席を外したのだ。



こうしてマタギがタケルの車で故郷に立った後、空になったマタギの部屋でシズカは一人泣いた。


マタギは霧峰山へ帰って行った。




タケルの話の通り、山の反対側にある霧峰学園の用務員のおじさんが手入れをしてくれていた様で、家は源次郎と生活をして居た頃と何一つ変わらない。



神奈川から帰ってきた翌朝、仏壇にある祖父の遺影に手を合わせるマタギ。



伸ばし放題になっていた髪に気付き、祖父の遺影に恥ずかしそうにする。


そして前髪だけを整え彼女は今日も山へ出掛けていった。




そして時は経ちマタギは高校1年生になった、冬休みの12月25日。


霧峰学園の寮のロビーにある古めかしいピンクの電話で通話しているマタギ。


彼女はこの学園が家から一番近かった事と、父タケルの薦めもあり全寮制のこの学校へ進学したのだ。


家の手入れをしてくれていた用務員、邦衛さんとも知り合った。



高校生活中、家と山の手入れはマタギが手を離せない時だけ邦衛さんの手を借りている。



どうも聞き手に回った通話をしていたマタギが、困った顔になってきた。


「雪が深すぎて来ても入ってこれないよ…うん、私は大丈夫、生まれた時から知ってる山だし……油断しないって、誰に育てられたと思ってるの…うん…そうだね、雪が溶けたら…はい、また連絡するよ、またね、


メリークリスマス、お母さん。」

雨が降らなきゃ地は固まらないのかも知れませんね…この件無かったらマタギちゃんはシズカ叔母さんと疎遠になってただろうしタケル叔父さんも相続めっちゃややこしい形にしてたかも…それは恐ろしい…


これがマタギちゃんの過去でした!髪の長いマタギちゃん気になるけど、今だと鬱陶しいってその場で切りそう


4章は3/22公開です!マタギちゃんとまた別ベクトルの重~い奴がやって来るよ!よろしくどうぞお願いします!

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