種子島マタギの物語(前編)
雪と絆の冬物語の種子島マタギちゃんが劇中にいたるまでの物語です。
何故寮住まいの彼女がサバイバル技術を持っているのか?と言うお話をいただきましたので前後編にして送りたいと思い急遽書いてみました!
クールなマタギちゃんの過去!どうぞ!
時期の整合性の為に加筆訂正しました。 3/19
種子島マタギは、ショートカットの黒髪に鋭い目つきを持つ、小柄でやや筋肉質な少女だ。
身長150cmと華奢に見えるが山で鍛えられた体はしなやかで力強く、江戸時代から続く山守の子孫として育った。
物心ついた頃から、霧峰山の深い森で猟師の祖父・源次郎に育てられた。両親は幼い頃に災害で亡くなり、祖父と町に暮らす叔母夫婦が唯一の肉親だった。
源次郎はかつて名を馳せた猟師で、山では厳しくマタギを鍛えた。「マタギ、罠はこう仕掛ける。動物の動きを見ろ」と鋭い声で指導し、容赦なかった。しかし、家では「お前、腹減ったろ。飯にするか」と笑い、子煩悩な一面を見せていた。
マタギは小学校に通いながら、祖父と山を歩き、足跡の見分け方や火起こしを学んだ。
「山は生き物だ。お前が敬えば、山はお前を守る」
源次郎が口癖のように言う言葉は、彼女の心に深く根付いた。
10歳の時、初めて猪を仕留めた夜、焚き火の前で源次郎が静かに語った。
「マタギ、獲物を取るのは命を奪うことじゃない。命を預かるんだ。忘れるな」
「うん。じいちゃ、わかった。」
マタギは頷いた。猟師としての誇りが彼女の胸に芽生えた瞬間だった。
だが、マタギが中学1年生になり秋も深まる頃、学校から帰ると源次郎が倒れていた。
「祖父ちゃん!?」
マタギは慌てて救急車を呼んだ。100歳近い高齢とはいえ、普段は逞しく山を歩き回る祖父の姿しか知らなかったマタギにとって、それは衝撃だった。
「そんな…。」
病院で震えるマタギ、そこに叔母のシズカと夫のタケルが訪ねてきた。
「マタギちゃん、叔父さん達と町で一緒に暮らさないか?マタギちゃん一人じゃ大変だろう。」と優しく提案したが、「じいちゃんのそばにいたい。山も守らなきゃ。」と首を振った。
マタギは自身の生家でもある源次郎の家で一人暮らしを始め、祖父と歩いた山が荒れないよう学校が終わると山に入り、夜、祖父のいる病室へ通い山の様子を報告する日々を送っていた。
ある日紅葉の盛る山で仲睦まじく暮らす兎の親子が寄り添う姿を見つける。出産が遅れたのだろうか、季節の割にまだ子兎は小さい。
「じいちゃ…大丈夫だよね…。」
孤独が胸を締め付けた。
この日も日課を終え病院にいくと、病室で源次郎から意外な言葉をかけられる。
「マタギ、シズカ叔母さんのとこへ行くんだ。そこで暮らせ。」
源次郎の回復を信じていたマタギは、源次郎が何故そんなことを言うのか理解出来ず…いや、理解出来ていたのだ。
だがマタギは祖父の死期が近い事を認められず、半ば意地になって中学校、山、病室を往復する暮らしを続けた。
それからしばらくして、葉落ちの頃。
いつもの様に山に入り手入れをしていると、あの子兎が成長し親離れする姿を見つけた。母兎が耳を倒し子兎に飛び掛かるような動作を見せる。
子兎は怯えたように走り去っていった。
マタギは涙が溢れ出て止まらなくなり、緩やかな風が吹く秋の林の中、まだ紅い、紅葉の木陰で泣いた。
「…じいちゃ…。いやだ…。」
母兎は子兎を嫌った訳ではない、自分の役割が終わり、次の世代を育てる準備に入っただけだ。それが分かるだけに、マタギは余計に悲しかった。
季節が、終わっていった。
そうして日課をこなす日々を送っていたある夜、病院で医師が告げた。
「おじいさん、今朝亡くなりました。」
呆然とするマタギ、源次郎がマタギに宛てた手紙には「達者でやれよ。」と短く綴られていた。
何日か経って葬式を済ませた後、叔母夫婦がマタギに諭すように言った。
「マタギちゃん、もうここにはいられないよ。神奈川で一緒に暮らそう。」
マタギは涙を流し抵抗した。
「まだ祖父ちゃんの家にいたい。山が、私と祖父ちゃんの全部なんだ。」と訴えたが、シズカは涙を流しながら言った。
「マタギちゃんを一人にはさせられない。おじいさんもそう望んでたよ。」
そうしてマタギは霧峰山にある源次郎の家を後にし、神奈川にある叔母夫婦の家へ引き取らた。種子島マタギ中学1年生冬の話だ。
書きながら数度泣きました!
アニマルプラネットとかの動物が親離れするシーンって泣けますよね…。
別れる時に親に甘えていた子供時代とかダイジェストで流されたら僕は泣き崩れます。
4章は変わらず3/22の夜8時に公開です!
マタギちゃんの物語 後編も出来るだけ早く上げます!よろしくお願いします!